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http://www.uekusa-tri.co.jp/column/2007/1119.html
米国のサブプライムローン問題に端を発する金融市場の動揺が続いている。米国の不動産価格の下落が今後大幅に拡大し、金融機関の損失が拡大してゆくなら、その影響は広がり、米国金融市場、米国経済は深刻な影響を受けてゆくことになるだろう。
だが、米国金融機関のサブプライムローン問題に関連した損失の情報開示が迅速であることには留意が必要だ。金融機関が保有する有価証券についての厳格な時価評価を求める会計規則の変更が影響しているが、メリルリンチやシティーグループが巨大損失を情報開示し、CEO交代などの責任処理を積極化させていることをプラス要因と受け止める見方もある。
米国消費市場はクリスマス商戦に突入するが、サブプライムローン問題に動揺する金融市場の動向が個人消費、企業経営者のビジネスマインドにどの程度影響するかを見極めてゆく必要がある。
NY株価は、9月18日にFRBがFFレートの0.5%引下げを断行したのちに反発した。NYダウは史上最高値を更新し、10月9日に14164ドルに達した。ところが、9月住宅着工件数が急減し、米国大手金融機関の巨額損失が表面化して、金融市場の動揺が再び広がった。NYダウは乱高下を繰返しながら下落し、11月12日に12,987ドルまで下落した。
FRBは迅速に行動してきた。8月17日の公定歩合引下げ、9月18日のFFレート引下げ、10月31日のFFレート引下げと、矢継ぎ早に利下げを実施した。バーナンキFRB議長は11月8日、議会証言し、米国経済が住宅市場の調整により、本年10-12月期から来年春まで大幅に減速する見通しを述べた。しかし、2008年央以降の米国経済については、楽観的な見通しも示された。
懸念材料は市場に残存するインフレ懸念である。原油価格高騰がインフレ懸念を残存させる要因として作用している。景気の下振れリスクとインフレリスクが併存するとして、インフレリスクを度外視した金利引下げの継続が困難であることが示唆された。
日本では、11月13日に7−9月期GDP速報値が発表された。実質GDP成長率は前期比+0.6%(年率+2.6%)と、2四半期ぶりのプラス成長を記録した。 企業の設備投資と輸出が成長率を押し上げた。だが、個人消費は低調だった。家計所得は伸び悩み、個人消費の低調が続いている。また、建築基準法改正の影響で、住宅投資が急減した。住宅着工件数は本年7月以降、急減している。11月6日発表の9月景気動向指数では、先行指数が10年ぶりにゼロを記録し、2ヵ月連続で50%を下回った。
こうした状況下、日本銀行は11月13日の金融政策決定会合で政策金利を0.5%前後に据え置いた。福井総裁は利上げを目指す方針は不変だが、米国でのサブプライムローン問題の余波を注意深く見守る姿勢を示した。日銀の3度目の利上げは2008年春以降になるとの観測が強まっている。
本コラムで再三指摘しているが、中国経済についての注視が必要である。インフレ率が上昇し、経常収支黒字が拡大し、海外からの人民元切上げ要求が強まっている。上海株式市場の株価が急上昇し、調整局面を迎えるリスクが高まっている。金利引上げ、人民元切上げの対応に十分留意する必要が生じている。
今週、米国では20日(火)に10月住宅着工件数、着工許可件数が発表される。また、10月30、31日のFOMC議事録が公表される。FRBの政策姿勢に対して一段と関心が強まると考えられる。国内では主要経済統計の発表が予定されていないが、米国金融市場の動向に敏感な展開が予想される。
国内政局では、民主党の小沢代表辞意表明後の世論動向についての各社調査が明らかになった。民主党の支持率が大幅に低下しなかった一方で、福田内閣の支持率が大幅に低下した。大連立に関して、小沢一郎代表は詳細な説明を実行したが、福田首相はまったく説明しなかった。
日米首脳会談では、「拉致問題の解決なしのテロ支援国指定解除反対」の日本の立場を明確にブッシュ大統領に明言しなかったことが判明している。給油新法案に対する政府のスタンスも明確には示されておらず、福田首相のリーダーシップに国民の厳しい視線が向けられ始めている。
国会では、給油新法案の審議に先立ち、防衛省汚職疑惑に関連した久間元防衛庁長官、額賀財務相の説明が求められている。7月29日の参議院選挙で有権者は政治の現状に明確なNOの意思表示をした。国会における法案成立の難航はその結果生まれた「衆参ねじれ国会」のもたらす副作用である。野党が悪くて法律が成立しないのではない。
らちがあかなくなれば、総選挙で民意を問うしかない。総選挙の結果、ねじれ現象が持続するなら、その段階で、何らかの打開策を検討するべきである。民主党は野党共闘を崩すことなく、次期総選挙に向けて、戦略を構築すべきである。総選挙で野党が勝利を収めれば、ねじれ現象は解消する。日本の「真の構造改革」は初めて実現のチャンスを迎えることになる。民主党は野党の盟主として、次期総選挙に向けて王道を歩むリーダーシップを発揮しなければならない。
2007年11月19日
スリーネーションズリサーチ株式会社
植草一秀
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