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2007年11月16日
めぐみさん拉致30年に思う
11月16日の読売新聞の、「めぐみ30年」という連載記事の次のくだりをまず読んで頂きたい。いきなり消息を絶った13歳の少女を20年近く捜し求めた横田夫妻が、初めて娘の消息を知らされた瞬間である。
「・・・その子は賢い子で、朝鮮語を習得すれば帰してあげると言われ、一生懸命勉強した。それがかなわぬと分かると、遠くから両親を見るだけでいいからと懇願したそうです・・・」
「めぐみに間違いない」。滋さんも妻の早紀江さんも、娘の様子がまぶたの裏に浮かんだ。涙が止まらなかった・・・
悲しすぎる。生きとし生ける人間の心象風景としてこれ以上の残酷さがあるだろうか。拉致被害者はもちろん横田めぐみさんだけではない。しかし、バトミントンの練習を終えた13歳の少女が、いつものように帰宅する直前に、何の理由もなく、見知らぬ者に拉致され、愛する家族から引き裂かれ、生き別れのままに30年の歳月が経ったのだ。「めぐみさん」の拉致30年を迎えた今、私は、すべての拉致被害者の苦しみに思いを馳せながら、あらためて日本政府、外務省の責任を追及したい。
なぜ拉致問題はいつまで経っても解決しないのか。それは勿論金正日総書記率いる北朝鮮の理不尽で硬直な態度があるからだ。しかし同時にまた日本政府や政治家、外務省の責任も問われなければならない。
まず、何と言っても6年前の突然の訪朝時に、小泉元首相が金正日総書記と拉致問題で手打ちをした事がある。すべての原因はここに由来すると言っても過言ではない。あの時我々は「金正日総書記が拉致を認め、謝罪した」と聞かされた。しかし正確に思い起こしてほしい。一部の不届き者が拉致をした、その事について金正日総書記は謝罪したという事なのだ。決して金正日総書記は北朝鮮の国家的拉致を認めていないのだ。それにも関わらず小泉元首相は訪朝の失敗をおそれてそれを許し、事前に用意したピョンヤン宣言を一字一句修正することなく署名した。拉致問題の真の解決の為にも、もう一度仕切りなおして交渉を始めなければならない。
次に、拉致問題の追及が、左翼イデオロギーの歪んだ論理によってねじれ現象を起こして来た事があげられる。北朝鮮とのイデオロギー的な結びつきを優先していた左翼政党は、かつて「拉致はなかった」と公言した。その誤りが明らかになった今も、左翼政党やその政治家たちは自らの過ちを認めようとはしない。それどころか国交正常化を最優先し、拉致にこだわって強硬姿勢をとるから北朝鮮との話し合いが進まないのだ、といわんばかりの倒錯した論理を展開する。奇妙な事に彼らはあの小泉首相を評価し、ピョンヤン宣言を評価する。このような左翼政党の姿勢こそ、改憲やイラク反戦と異なって拉致問題が政治的対立問題にならない最大の理由なのである。そしてその事が政府、外務省への追及を妨げて来たのだ。
この点に関連し、人権派弁護士の川人博と護憲派国際政治学者であるカンサンジュとの間で最近の週刊朝日誌上で興味深い大論争があった。その詳細は川人博著の「金正日と日本の知識人」(講談社新書)に詳しく再現されているから是非一読してもらいたい。ここで注目すべきは川人博は決して右翼ではないという事だ。それどころか在日朝鮮人問題や過労死問題に取り組んで来た人権派弁護士である。左派ともいえるその彼が、社民党御用達のごときカンサンジュの北朝鮮融和姿勢を正面から批判しているのだ。私は両人の言動を等しく共感を持って見て来た一人であるが、少なくともこの論争に関しては圧倒的に川人博が正しいと考える。護憲・平和という問題では左翼政党と同じ立場に立つ私であるが、こと拉致問題、北朝鮮政策については、決して左翼政党の考えに私は組しない。
三番目の不幸な問題は、拉致被害者の家族が対北朝鮮強硬一辺倒の拉致議連の政治家と一緒になって行動している事だ。もっともこれは前述第二の現象の裏返しでもある。つまり護憲や人権を叫ぶ左翼政党が拉致家族を助けようとしない。歴史認識や靖国神社参拝問題に強硬な愛国的、国家主義的な政治家たちだけが拉致問題に熱心なのだ。ここに拉致被害者家族の不幸がある。左翼イデオロギー政党が北朝鮮に宥和的であるのと正反対の理由で、拉致議連の保守・強硬派議員の強硬な言動は問題解決にとってマイナスなのである。
そして最後の問題として、日本政府や外務省の対米依存がある。米国の対北朝鮮外交に過度に依存し、その故に米国の対北朝鮮外交の豹変に振り回されて来たという問題がある。その米国はいまや北朝鮮をテロ指定国から解除し、国交正常化さえも視野に入れる動きを見せるに至った。その米国に対し日本政府や外務省は北朝鮮に対する強硬姿勢を崩さないでくれと懇願する。本末転倒の外交である。
拉致問題はどう取り組めばよいのか。それは上記の逆を行なえばいいのだ。すなわち、拉致問題は日本と北朝鮮との二国間の問題と捉え首脳同士の直談判でこれを行なわなければならない。そしてその交渉の対象は拉致問題だけに集中すべきなのだ。決して北朝鮮の核放棄を絡ませてはいけない。核放棄問題は米国に任せておけばいい。米国以上の対北朝鮮核交渉力を日本が持てるはずはない。その必要もない。そして拉致問題の解決を迫る時は日本の過去の過ちに対する謝罪と国交正常化(経済支援)問題を同時に提起するのである。すなわち謝罪や経済支援と引き換えに拉致問題の誠意ある全面的解決をパッケージで合意する、そういう交渉を首脳間で行なうのである。拉致問題の解決はこれしかない。北朝鮮が交渉に応じて来るのはこれしかない。そしてこのパッケージ解決の交渉に北朝鮮が応じて来ないはずはない。北朝鮮は日本の援助をのどから手が出るほど欲しいのだ。米国からの安全保障の確約と日本からの経済援助、この二つが北朝鮮の目的である。
このような当たり前の交渉をどうして日本政府や外務省は始めようとしないのか。これを始めるリーダーシップを持った政治家がどうして現れないのか。今からでも遅くない。拉致被害者の家族は、この一点に絞って福田首相に英断を決断を迫るべきである。
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