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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007111602064707.html
【社説】
久間、額賀氏の喚問を 守屋証言で政治家名
2007年11月16日
参院での前防衛事務次官の証人喚問で、有力政治家の実名が挙がった。巨大な防衛利権をめぐる政・官・業の癒着の実態解明に、次は「政」の喚問が欠かせない。
「昨年三月までの八年間では三百回以上、千五百万円以上になる」
参院に参考人招致された、防衛専門商社「山田洋行」社長の証言の持つ意味は極めて大きいといえる。
守屋武昌前防衛事務次官が、同社元専務の宮崎元伸容疑者から受けたゴルフ接待のすさまじさが、より明確になったからである。その金額は目をむくほど多額だ。
目覆う過剰な接待ぶり
しかも、費用は同社が支払い、「経理データを調べたが、守屋氏からの入金処理は一切出されていない」とも、社長は語った。
守屋氏は先月末の衆院の喚問で「プレー代として一万円を支払った」と証言した。その金が同社に入っていないことになる。守屋証言が真実だとしても、ゴルフ代に食事代、贈答品なども含めれば、とても一万円に見合う金額とはいえまい。
約四年もの異例の長きにわたり事務次官のポストに座り、「防衛省の天皇」とも呼ばれた人物だけに、目を覆いたくなる惨状である。
こんな過剰接待の実態について、参院での質問で「収賄罪」の言葉も飛び出したし、守屋氏自身も「刑事罰に該当するなら、やむを得ない」と漏らした。横領事件を捜査中の東京地検が、接待癒着の実態に焦点を当てるのは必至だろう。
最も注目されるのが、「迷惑がかかる」などと口を閉ざしていた守屋氏が、二人の政治家の実名を公表したことである。
額賀福志郎財務相と久間章生元防衛相である。二人とも旧防衛庁長官を二度つとめ、久間氏は初代防衛相でもある。政界で「防衛族」と呼ばれる大物政治家だけに、元専務との宴席に同席したという証言は、見逃すことができない。
言い分が百八十度違う
守屋氏は「記憶が確定的でない」と語ってもいたが、証言内容は実に生々しいものだった。
額賀氏の場合は、米国の国防総省関係者が来日時に「東京・神田の料亭に呼ばれて行ったら、宮崎さんがいて、額賀先生も来た。額賀氏はすぐに帰っていった」(守屋氏)。記憶では一昨年のことだったという。
久間氏の場合は、二、三年前である。「六本木(東京)の料亭だった。宮崎さんも一緒だった。(会合は)四人だった。費用は私は支払っていない」(同)
防衛省は在日米軍の海兵隊グアム移転や、沖縄の米軍普天間飛行場の名護沖移設など、極めて重大な課題を抱えている。守屋氏はもちろん、額賀氏も久間氏も旧防衛庁・防衛省のトップとして、その問題には深くかかわっている。当然、防衛商社の商機でもあり、山田洋行からグアムに役員が派遣されてもいた。
額賀氏は接待の事実を否定した上で、「出席したとしてもすぐ退席したので、誰が出席したか覚えていない」と釈明し、福田康夫首相も「問題ない」との認識を示した。
元防衛庁長官・防衛相の二人と、前事務次官との言い分が全く食い違っている。ならば、その真相をたださなければならない。“落差”を埋めるために、両氏には国会喚問で真実を明かしてもらいたい。
かねて疑惑が取りざたされる、防衛省発注事業をめぐる便宜供与については、守屋氏は「一切ない」とあらためて全面否定した。それでも接待攻勢と無関係だったのか、疑念はぬぐいきれない。
航空自衛隊の次期輸送機(CX)用エンジンに米ゼネラル・エレクトリック(GE)社製を選定した際の疑惑も積み残された。山田洋行がGEの代理店だったことは資料にも明記されていた。
「代理店だったことは知らない」と重ねて否定し、同社による約一億八千万円の水増し請求問題で同省が不処分にした件も、守屋氏は「記憶がない」の言葉で貫き通した。
「二十三年前からの友人」がかかわる巨額契約を本当に知らなかったのだろうか。もし職務権限とのかかわりを必死に回避しようとしているのなら、「謝罪」の言葉も空々しく聞こえてくる。
防衛省が抱える根深い“構造欠陥”にも、もっと着目すべきだ。つまり、同省は年間二千億円にも上る輸入品を調達しているが、多くは「商社頼み」になっているからだ。
装備品の調達部門には、情報収集や商習慣などに精通した人材が必要だが、実態は脆弱(ぜいじゃく)であり、商社の実力に頼らざるをえない。元専務は大手商社からGEの代理権を奪い取った豪腕で知られる存在だった。
真相解明は国会の責務
山田洋行の成長は、過剰接待の時期とぴったり重なる。守屋氏との「蜜月」が無関係とみる方が不自然だ。調達システムを抜本的に見直すべきである。異様な関係を示す事例には事欠かない。守屋氏の「退職金返納」宣言は当然だ。
防衛利権には腐臭が漂う。その根絶へ真相究明こそ、国会の務めだ。
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