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http://www.magazine9.jp/desk/071114/071114.php
事情は、こうでした。
すでにマスコミでも大きく取上げられた“ニチアスの耐火建材の不正偽装問題”です。
つまり、本来ならば基準を下回る耐火性しかない建材に、水を含ませるなどの下工作を行い、いかにも最大値の耐火性があるように偽装し、その建材を建設会社に卸していた、ということです。
まったく、酷いことをする。
数日後、建設会社から、その家に「お詫び」という文書が届きました。こんな内容です。
<略…本件は、軒裏天井部分に用いる軒裏天井ボードの製造メーカーであるニチアス株式会社が、不正な試験体を用いた性能実験で合格させた上で大臣認定を取得し、その事実を隠して弊社に軒裏天井ボードを供給していたことによるものです。
…略…、弊社といたしましては、このたびの事態を重く受け止め、お客様の建物について、然るべき改修工事を、弊社の全責任をもって、実施させていただきたいと考えております。改修工事に際しましては、さらにお客様にご迷惑をおかけすることとなり、重ねて恐縮に存じますが、何卒、ご協力を賜りたくお願い申し上げます。…略…>
文面はこのほかにも、対象件数が多く、そのため改修工事が完了するには相当の日数がかかること、火災保険の取扱については、この施工会社が損保会社と責任をもって交渉に当たること、などなど、切ない内情を列挙しているのですが、文章の端々に“ニチアス株式会社”に対する恨み節が垣間見えるのは、まあ、仕方のないことかもしれません。
それにしても、この“偽装”は、許しがたい。
そりゃあ、水を含ませれば燃えにくい、ですよね。そんな見えすいた手口で、これまで数十年間にわたって偽装を続けてきたというのですから、悪質です。
燃えてしまえば“耐火性”なんて分からない。燃えちまったものはしょうがない。あとは、頬っかむり。
延焼を防ぐため、というのが“耐火性基準”なのです。隣の家の火が燃え移らないための基準。それが守られていなかったばかりに、隣家の火事のもらい火で焼死した人は、どれくらいいるのでしょうか。そんなデータは聞いたこともありません。それは単に、焼死として処理されるだけ。そこから、耐火性基準違反のデータなどは読み取れないでしょう。
つまりこの偽装は、あの耐震性基準の偽装と同じく、人間の生命に関わる問題だったのです。
極めて悪質だと言わざるを得ません。
老夫婦は、とりあえず、火の元には十分に気をつけて、改修の順番を待つことにしました。ほかに方法もありませんからね。
以上が、ある夫婦が巻き込まれてしまった“偽装問題”の具体的な顛末です。
それにしても、最近の偽装問題、異常に多いとは思いませんか?
考えてみれば、防衛省の癒着問題だって、偽装の一種には違いありません。
さらには、続々と暴かれる食品偽装。いやはや出るわ出るわ。
ミートホープ、比内鶏、赤福……。遂にはあの吉兆という、私たちにはとても足を踏み入れることさえできないような超高級料亭までが、さまざまな偽装の大盤振る舞いです。
高級ブランド品のバッグや衣装などの贋物も、この偽装と同じでしょう。
しかしなぜ突然、こんなにも続々と、偽装や不正が発覚し始めたのでしょうか。昔は偽装なんか、なかったのでしょうか。いやいや、そんなことはない。偽装はずいぶん前から行われていました。
では、なぜ今になって発覚し始めたのか?
それは、「内部告発」です。不正告発の電話やメールや手紙などが、凄まじい勢いで増えているのです。
農水省には、昨年は1ヵ月に数本から多くて数十本程度だった告発が、今年に入って急増。最近では月に300本を超える状況が続いています。
むろん、これは農水省に限った現象ではありません。農水省は、食物を統括する官庁だから目立つだけに過ぎません。
厚労省にも、同様の告発は殺到しています。特に、労働環境や労働条件についての告発は、まさに鰻のぼり。
マスコミにも、いわゆる“タレコミ”が急増中です。
では、その背景にあるものとは、いったい何か?
かつて、日本の企業のほとんどは「終身雇用制」を採用していました。いわゆる「日本型経営」と言われるものです。
ある会社へ就職し、そこで定年まで勤めあげ、会社員人生を終える。そういう勤め方が、これまでの日本のサラリーマンの普通のあり方でした。
同じ会社に骨を埋めるのであれば、当然、その会社への忠誠心というものが芽生えます。いわゆる“愛社精神”というヤツです。それを持っていれば、少しぐらいの会社の不正を目にしたところで、公に訴えようなどとは思わないでしょう。
もし、自分の告発で会社が傾いたりしたら、自分の生活さえ危うくなる。そんな告発など、よほどのことがない限り考えないのが普通の会社員です。それが、戦後の日本を支えてきたと言ってもいいでしょう。
しかし、最近の企業はこの方式を「旧い経営思想」として捨て去りました。その上で「経済のグローバル化に対応し、対外競争力をつけなければ、生き残れない」という理屈で、凄まじいリストラに走ったのです。
リストラとはリストラクチュアリング(事業再編成)のことであり、決して首切りなどではなかったにも拘らず、経営者たちはこの言葉をわざと曲解して、正社員を減らし、その分、期間臨時雇用者や派遣社員、フリーター、アルバイトなどを大幅に増やして、人件費を抑え込んだのです。 結果、どうなったでしょうか。
●見つけた不正をメールや手紙などで監督官庁に告発する。
●企業と癒着している官庁は、それを握りつぶす。
●それではと、マスコミに同じ内容を通報する。
●さらに、ブログなどで世間に公表する。
●ネットの世界などで噂が広まる。
●隠し切れなくなった官庁はついにマスコミ発表に踏み切る。
●不正を働いた会社はトップがお詫び会見で平身低頭する。
●不正は次々と発覚、お詫び会見が繰り返される。
●とうとう警察までもが動き出す。
これが、このところの一連の流れです。つまり、使い捨てで安上がりと思っていた労働者たちに、企業はいま、復讐されているのです。首筋がうそ寒い経営者たちが、たくさんいるはずです。
この状況はまだまだ続きます。各メディアがつかんでいる企業不正情報が、これからかなり出てくるからです。そうとうな大企業が、その根幹を揺るがされかねない不正の告発さえあるといいます。
コムスンやNOVAなど、非正規労働者の上前をはねて急成長してきた会社は、すでに経営者が退きました。財界でそれなりの地位を固めた会社でも、同じ事が起きる可能性はあります。
法人実効税率引き下げの見送り
公正取引委員会の審判を廃止する具体的な検討の遅れ
自己管理型労働制度(ホワイトカラー・エグゼンプション)の導入先送り
つまり、こういうことです。
(1)企業が払う税金をもっと安くしろ。(2)独占禁止法の締め付けを弱めて大企業の活動をもっと自由にさせろ。(3)残業代ゼロ法案を作って従業員の給料を下げさせろ。
凄いですよね。
こういう要望をうまく実現してくれなかった、と経団連が自民党に文句をつけているわけです。3項目のどれをとっても、弱い者への更なる負担増です。「弱者の反撃」など、まったく視野に入っていません。
となれば、ますます「内部告発」は増えるでしょう。足元から燃え上がりつつある火を、むしろ煽るような財界の考え方。自分たちさえ儲かればそれでいい、ということなのでしょうか。
いずれ、大きなツケを払わされますよ。
(小和田 志郎)
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