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2007年11月14日
佐藤優という休職外務省員を私はどう評価するか
佐藤優という起訴休職外務事務官がマスコミの寵児になって露出度を高めている。元外務省員である私にメディアから「彼をどう評価するか」という問い合わせが寄せられることがある。私は彼とは在職中も、現在も、言葉を交わしたことも、一面識もない。だからメディアからの問い合わせにはコメントしない事にしている。
しかし、私のブログの読者中からも時々聞かれる。それを無視するのは忍びがたいところがある。ブログの読者にサービスをするつもりで、かねてから抱いていた私の佐藤氏に対する意見を、はじめて述べることとする。
それは、彼の著作につぶさに目を通し分析した上での、作家、評論家としての佐藤氏に対する評論では決してない。断片的に見聞きしてきた彼の言動に対する、わたしの直感的感想である。一口で言えば次の通りである。
「佐藤氏の言論の中で私が最も興味深く読むのは外務省や外務省幹部に対する批判と暴露の部分である。それは正鵠を得ており、実名を挙げてあそこまで徹底して外務省を批判し、外務省の実態を暴露する佐藤氏の勇気は驚きである。さすがの私も真似が出来ない。
加えて彼が自らの逮捕・拘置の経験から「国策捜査」の実態をその著書「国家の罠」(新潮社)で告発し、国家権力と闘う姿勢を見せている事に注目する。
しかし彼の言説は、その激しさ、直截さの割には私の心を共振させない。なぜだろうか。
思うに彼はその根底において国家主義者であり、強権主義者である。インテリジェンスの重要性を殊更に強調し、戦略、策略によって国益を実現する外交を主張する。
国家より個人を優先し、憲法9条を世界に掲げて平和外交を唱える私と佐藤氏は、おそらくその思想において対極的なところに位置する。情報公開を最優先し、一人でも多くの国民の監視によって国家権力の誤りを掣肘していかなければならない、と考える私が、佐藤氏の論説の多くに違和感を覚えるのは当然であるのかもしれない」
このような私の直感的とも言うべき印象論に対して、より精緻な佐藤分析論を私は最近見つける事が出来た。それはインパクション(インパクト出版会)という雑誌の07年160号に掲載されたキム・ガンサンという在日三世の論文である。私が今までに見かけた佐藤優論の中で群を抜いて的確であり周到な評論である。
キム・ガンサンはその論文の中で、佐藤氏が左右両派から重用されている「論壇の寵児」の異常さに着眼し、右派メディアと左派メディアにおいて言論を使い分ける佐藤氏の狡猾さを喝破する。特に、「週間金曜日」、「世界」をはじめとしたいわゆる左派雑誌が彼を好んで取り上げ、斉藤貴男、魚住昭らのような、一般に「左」とされるジャーナリストが佐藤氏を評価している現象を嘆いている。まったく同感である。
私は、特に、キム・ガンサンの論文の中に引用されている佐藤氏の次の言葉を知って、いままでの私の佐藤氏に対する違和感の原因に合点がいった。
佐藤氏は、昨年7月のイスラエルによるレバノン侵略戦争を、北朝鮮の拉致問題と絡めて次のように全面的に支持していたのだ。
「・・・イスラエル領内で勤務しているイスラエル人が拉致されたことは、人権侵害であるとともにイスラエルの国権侵害でもある。人権と国権が侵害された事案については、軍事行使も辞せずに対処するというイスラエル政府の方針を筆者は基本的に正しいと考える・・・」
とんでもない発言である。イスラエルのパレスチナ弾圧には一言も触れない彼は、この言葉によって完全にイスラエルの代弁者であることが証明された。彼のインテリジェンスの源はイスラエルの情報機関からの情報であるのだ。
なぜ佐藤氏が「マスコミの寵児」となりえたのか。それは勿論彼の作家、評論家としての非凡さの故である。そしてそれに目をつけたマスコミが彼を利用して売り上げを伸ばそうとしたのだ。マスコミの打算である。しかし同時に、「マスコミの寵児」となることは、佐藤氏の打算でもある。経済的基盤を強化すると言う事も勿論あるであろうが、「マスコミの寵児」となって露出度を高めることは国家権力の圧力から身を守るという事でもある。生き残りに必死な佐藤氏の利害がマスコミの利害と一致した結果である。
しかし「マスコミの寵児」となる事は自分自身を失う危険をおかすことでもある。私は自らの体験を通じてそれを知っている。
今月号(12月号)の文芸春秋に「沖縄集団自決」に関する佐藤氏とその母の対話が掲載されている。それを読んだ私は、「マスコミの寵児」であり続けるために実母までも利用しなければならない佐藤氏を気の毒に思うのである。同時にまた私はその文春の記事を読んであらためてキム・ガンサン氏の佐藤優論の正しさを思い知った。
佐藤氏は母親の経験談を引用しながら「軍の自決強制」があったことを間接的に認めて左派に取り入り、その一方で、歴史には「複数の真実がある」などとごまかして右派からの反発を避ける。マスコミの寵児であり続けなければならない佐藤氏の苦しさと卑怯さを見逃すわけには行かないのである。
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