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http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=394
来日・在日外国人の(再)入国時に指紋や顔写真など個人識別情報を採取する日本版US-VISITの実施が目前に迫っている。
この制度は、テロ対策を主たる目的として、06年の通常国会で導入が決定されたものであるが、そのさい国会審議は十分になされたとは言えない。たとえば、
・指紋情報という生体情報に関する取得・保管・利用・廃棄について、明確な法律による規制がないままでよいのか
・指紋・写真以外に提供させる個人識別情報の種類を、すべて省令に委任してしまってよいのか
・生体認証技術は、本当に信頼性を有しているのか
・「テロリスト」の定義や認定方法は、明確と言えるのか
・外国政府との情報交換に制約が及ぶのか
など多くの疑問が残されたまま法案は可決・成立したのである。また、国会審議における政府関係者の答弁や認識に食い違いが見られ、十分な事前の準備がなされていない実態も明らかとなった。さらに、法案成立以後、1年以上の期間があったにもかかわらず、以上の疑問点について明らかにされることもなかった。
私たちは、これまでも「日本版US-VISIT」に対して、反対の意思を表明するとともに、様々な社会的アピールも行ってきた。それには、以下の理由がある。
入国時における外国人の生体情報の提供を義務づけることは、「テロリストは外国人である」という先入観に基づくもので、外国人に対する差別である。これによって、特別永住者を除くほぼすべての外国人から指紋・写真その他の生体情報を取るという広汎かつ過度な手段が取られることになる。しかし日本では、指紋採取は、歴史的に外国人管理の象徴と言えるものであり、外国人を犯罪者と同視するかのごとき屈辱感を与えてきたことを忘れてはならない。
また、取得した生体情報を、「テロ対策」ばかりでなく一般の犯罪捜査にも利用することが国会審議の中で明らかとなってきた。これは、生体情報というセンシティブ情報に関する明らかな目的外使用であり、行政機関の間であっても許されない。
さらに、取得した個人識別情報が、長ければ80年にも及んで保有されることが想定されており、億単位の情報量となる。生体情報という究極の個人情報が、かかる長期間にわたって多量に保有されることの危険性は言うまでもない。
そのうえ、「テロリスト」の定義も曖昧で、「公衆等脅迫目的の犯罪行為」を実行した者だけでなく、その「予備行為」または「実行を容易にする行為」を「行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」まで含まれる。これではまったく不明確であり、入管当局による恣意的な運用が拡大するおそれもある。
同時に、US-VISITが「テロ対策」として有効であるのかどうかも確認されていない。実際、日本に先立ってUS-VISITを実施している米国では、Government Accountability Office(行政監査院)が、その制度の脆弱性を指摘するにいたっている。
つまり「テロ対策」という名目のもと実施されようとしているUS-VISITは、その目的に適う手段であるかは明らかではない一方で、その実施による人権侵害は明白なのである。しかし、たとえ「テロ対策」を名目にしていようとも、人権の尊重という国家の義務から自由ではない。この点は、「テロ対策」に関わる国連の議論や国際会議においても繰り返し強調されてきたところである。また、このような外国人の管理が、「テロ対策」の名の下に、特定の人種・宗教・民族集団に恣意的に不利益をもたらす危険性、すなわち人種的プロファイリングという人種差別の一形態となるおそれは否定しがたい。
以上のように日本版US-VISITは大きな問題をはらんでおり、現時点で導入するに足る理由があるとは認められない。このため、本シンポジウムに集った私たちは、日本版US-VISITに反対し、その実施中止を求めて、あらゆる力を結集することをここに表明する。
2007年10月27日
「どこまで強まる?外国人管理――「テロ対策」と日本版US-VISIT」シンポジウムにて
<主催団体>
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
移住労働者と連帯する全国ネットワーク
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