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日本を狙うロシア・マネー
金融資本主義にみられる「いつものパターン」とは?
「小泉構造改革」を経て、日本人が無意識の間にはまりこんでしまった金融資本主義の世界。日本では多くの人たちが「90年代半ばより前と、何も変わっていないじゃないか」と口にしがちだ。確かに、「朝起きて、働いて、時には遊んで、そして眠る」という生活のサイクルに変わりはない。
しかし、問題はそんな何気ない日常の中に、ファンドや投資銀行といった「越境する投資主体」たちがマネーを集金する隙があるかどうかだ。彼らは人知れず日本にやってきては、吸血虫のように気付かれぬままマネーを吸い取り、そして去っていく。私たち日本人がせっせと働き、「将来のために」と貯金したなけなしの虎の子を預けた銀行や、あるいはそもそも職場となっている企業を買収する場合などがその典型だ。「血を吸われている!」と気付いた時には、すでに遅し。あとは傷口をかきむしり、地団駄を踏むことしかできない。
だが、金融資本主義の「潮目」を巧みに乗り切る「越境する投資主体」たちでも、その姿を必ずといって良いほど現す時がある。それはそのトップたちが、買収対象となっている企業を直接、見に来る瞬間だ。そこで「OK」となれば、買収プランがいよいよ音を立てて回り始める。
「そんなわざわざエラい人が来なくても良いのに…」
日本人ならば、普通、そう思うだろう。日本の会社で「シャチョウ」といえば、ふんぞりかえって、自分では何もしないといったイメージがある。しかし、米国流の金融資本主義では全く異なる。隠密行動の末、最後はトップがその目で「獲物」を品定めにやってくるのだ。逆にいえば、その一瞬の降臨に気づけば、彼らが何を狙っているのかが分かるのである。
日本を狙うリアル・ロシアを追う
この関連で、私がかねてより大変注目しているのがロシア勢の動きである。世界最大級の産油国として、有り余るオイルマネーを使って金融資本主義化を図るロシアだ。国営ファンドまで設立して、世界中を文字通り、「買いまくって」いるロシアの姿を、ここでは「リアル・ロシア」と呼んでおくことにしよう。
なぜ注目しているのかといえば、他ならぬ私たちの国・日本こそが、リアル・ロシアの標的になっているからだ。いわゆる「評論家」「専門家」と称する日本人たちの間では、ロシアというと、未だに「北方領土」「旧ソ連のイデオロギー」といった紋切型の問題提起をする人が多い。しかし、実際には金融資本主義化したリアル・ロシアこそが本当のロシアの今なのである。
たとえば、10月9日付読売新聞は「露の富豪・経済人、来月上旬に来日…日本の技術に関心か」と題する記事を掲載している。11月上旬に来日するナルイシキン・ロシア副首相に、大勢の重要なロシア財界人が同行するのだという。エネルギーや、金融などのトップたちがそろい踏みするというのだから「一大事」だ。
「よくある外交行事にすぎないのではないか?別に驚くべきほどのことではないのでは?」
そう思われるかもしれない。確かに、かつてあったソ連であったならばそうかもしれない。しかし、今や、ロンドン・マーケットを流れるマネーの4割も提供しているというロシアの財界人たちが雁首をそろえて日本にやってくるのである。さきほど紹介した「金融資本主義における鉄則」からいえば、なぜ彼らが日本にやってくるのか、その理由は明らかだといわざるを得ないだろう。
ターゲットは2008年春?
福岡(11月10日)・広島(11月11日)で開催する情勢分析セミナーでは、このあたりの最新事情分析について、私なりの考えをじっくりと述べ、聴衆の方々と一緒に考えてみたいと思う。
要するに、ロシアは日本を「買収のターゲット」としているはずなのである。今年4月半ばにロシア議会で設立承認を受けた「国営ファンド」は、うなるほどのカネをもって世界中を買いあさりに回っている。その矛先はすでにドイツ、フランスにまで及んでいるが、東の隣国であり、ロシアが太平洋に出るにあたって戦略上の拠点となり得る「日本」のマーケットもそのターゲットに入っていないはずはないのだ。
一般に、彼らは日本の技術力を狙っているかのように思われている。しかし、これまで得ている情報を勘案すれば、どうやらそれに限られてはいないようだ。とりわけ「穴場」となっている感があるのは、日本の不動産マーケットだ。東京に限らず、関西圏においても、ロシア勢がここにきて急速に物色している気配がある。
また、そうした動きが顕在化するのは、来年春ころになる見込みだという情報もある。ロシア勢は今年の前半、西欧各国で買収を強引に進めた結果、猛烈な「反ロシア感情」を浴びてしまったという苦い経験を持つ。米系広告代理店を使って親ロシア・キャンペーンを張り、その鎮静化につとめたほどだ。
今、日本では北朝鮮問題を中心に、「米国にはめられた」「ハシゴをはずされた」との言論が広まりつつある。そうした反米感情の高まりは、ロシアにとっては「渡りに船」であろう。これにロシアの文化に親しみを持たせるような行事が続けば、必ずや日本人はまたぞろ「ロシア・シンパ」になることだろう。ちなみに、来春にはそうした文化行事が目白押しだという情報がある。
だが、その向こう側には牙をむいたリアル・ロシアが待ち構えている。密やかな彼らの動きから、そのマネーが向かう先を読み取り、果敢に先取り投資をしていくこと。それが、日本を守りたい個人投資家がなすべきことなのかもしれない。
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