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新テロ特措法案が閣議決定され、国会に提出された。この臨時国会は、この法案を巡っての攻防となる。この攻防は、政権交代を懸けた来るべき総選挙の帰趨と内実を決めることになる。しかし、この問題は、年金問題や大臣失言問題ほど簡単ではない。
テロと戦うこと、それ自体は多くの国民は支持しているであろう。また国際貢献も多くの国民が支持していることである。インド洋における給油や給水は多くの国から感謝されている。またインド洋は、日本に石油を運ぶタンカーが航行する海である。テロ阻止海上活動は、間接的にこれにも貢献している。アメリカが強く期待しており、日米同盟にとっても重要である。政府・与党は、国民の支持を得ることはできると考えている。世論の動向は、野党が思っているほど単純ではない。
国際政治や国際条約をめぐる争点について、国民の世論が圧倒的にひとつにまとまることは特別の場合だけである。ふだんはこうした問題については、国民の意見は分かれる。私が最近ときどきもち出す安保闘争も、実は安保条約そのものではそれほど国論はまとまっていた訳ではなかったと聞いたことがある。国民の反対運動が沸騰したのは、警察官(国会の警備員だったかな?)の力をもちいて衆議院で安保条約案を強行採決した時点であったという証言もある。“安保反対!”から“民主主義を守れ!”に主題が変わっていったという。
安保条約は、衆議院で可決しておけば30日で自然成立するものであった(憲法61条)。新テロ特措法案は、こうはいかない。参議院がこの法律案を否決することはほぼ確実だ。自民党と公明党の与党は、衆議院で3分の2をはるかに超える議席をもっているので、再可決することによりこの法律を成立させることができる(憲法59条)。しかし、この法律案に国民の支持がなければ、政治的には危険な賭けとなる。安易にはこの挙にでることはできない。
従って、新テロ特措法案の不当性を国会の論戦を通じて、野党は徹底的に明らかにしなければならない。俗耳には政府・与党の言い分はそれなりに入っていく。そんなに甘く考えない方がいいと私は思っている。アフガニスタン対策に使うべき石油がイラク戦争のためにも使われていたことを徹底的に突いていく方針のようだが、それだけでは世論の動向が一挙に変わるとは思えない。やはり根本のところでインド洋における給油・給水活動が不当・違憲なことを明らかにしていかなければならない。
難しい問題に直面したとき、原理原則に立ち返らなければならない。温故知新も大切なことである。“新”テロ特措法案の問題を明らかにするためには、“現――まもなく旧となる”テロ特措法(以下、単にテロ特措法という)の問題点を明らかにすることから始めなければならない。テロ特措法は、アメリカのアフガン戦争を支援するための法律だった。しかし、当時はアメリカのアフガニスタンへの武力攻撃を冷静に議論する風潮はわが国にもなかったし、世界的にもなかった。やはりすべての問題はここからはじまり、現在の諸問題もアフガン戦争に起因している。 <つづく>
それでは、また明日。
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