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http://www.magazine9.jp/rev/071017/071017.php
マガジン9条の発起人でもある舌鋒鋭い評論家、佐高信氏と、常に商品価値の高い情報を提供し問題の核心に迫るジャーナリスト、魚住昭氏が、具体的なテーマごとに、だましのテクニックを見破っていく。
そこに共通するのは“国のため”、“社会のため”というカムフラージュだ。よく目を凝らせば、個人の名誉や権力への欲、あるいは既得権益を享受する姿が見えてくる。
住宅金融債権管理機構(住管。現在の整理回収機構)の社長になった中坊公平氏の場合、住専問題の処理という“大義名分”を掲げつつ、実際には住管の実績作りのため、零細業者が自殺しようが構わず、厳しい取立てを行っていた。
読売新聞社主の渡邉恒雄氏は、社会の木鐸たる新聞人という衣の下に、選民思想を隠してもっていた(彼は、かつて“俺たちが世論をつくってやるから”と豪語したことがある)。
政界に跋扈する2世・3世議員たちは、祖父や父の代からの選挙基盤にあぐらをかき、地元で細かい利権の世話や業者の陳情に汗を流すこともなく、イラクで人質になった人々に向かっては「自己責任」を言い放った。
渡邉恒雄氏について、魚住氏はこう言う。
「要するにナベツネさん(渡邉恒雄氏)は頭のてっぺんから足の爪先まで都会のエリート青年であって、田舎とか農民とか泥臭いものが大嫌いなんですね。そういう彼の体質が新自由主義にぴったりマッチする。新自由主義ってエリート主義、つまり平等がイヤだっていう思想じゃないですか。……彼が憲法改正を唱えているのも、結局のところ日本国憲法の平等思想に我慢がならないからだと思うんです」
2世・3世議員のナショナリズムについて、佐高氏はこう指摘する。
「……タカ派っていうのは利権派なんですよね。親から受け継いだものを後生大事にする。これが「アカ恐怖」につながるんです。共産主義になったら、自分の財産は全部持っていかれると。これが中国恐怖ともつながるでしょ。それで“番犬”としての軍隊を必要とするわけです」
二人の対話はその後、石原莞爾、辻政信、瀬島龍三ら、戦中の参謀たちの無責任の系譜へと続いていくが、彼らの主眼は俎上に上げた人物の批判に置かれるだけでなく、戦争を遂行した軍人たちに「だまされた」私たち自身の責任にも及び、批判力を失うことは罪ではないかと問いかける。
本書のきっかけは、高文研の編集者、真鍋かおるさんが注目した映画監督、伊丹万作のエッセイ「戦争責任者の問題」(冒頭に掲載)だった。編集者の問題意識と確かな目によって、刺激的な対談が生まれたといえる。
(芳地隆之)
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