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----Dr.rijinのギモン から転載-------------------------------
http://blog.livedoor.jp/rijin_md/archives/51006517.html
2007年11月06日
イリオスの王女の呪い:病院勤務医激減の予言
イリオス(トロイ)の王女カッサンドラは太陽神アポロンの愛に応じて予言の力を授けられ、皮肉にもまもなくその愛を失うことを予知してアポロンの元を去ることにより、今度は誰からもその予言が信じられることはないという呪いを受けた。
誰しも不吉な予言は信じたくないものだ。ましてカッサンドラと違って、常人の予言は滅多なことでは当たらない。本人自身が半信半疑なのが普通である。
ところで、日本の病院勤務医はまもなく減少に転じるだろう。
これは、20年前に決まっていたことだ。
【グラフ15 日本の病院勤務医数の将来推計】
http://image.blog.livedoor.jp/rijin_md/imgs/b/f/bf535a5b.jpg
予言どころか、将来推計というのはなかなかに難しい。信頼できる数字を集め、根拠をよく考えて算出しても、なかなかに当たらない。許容範囲に収まることすら稀となる。厚労省の医療費推計など最たるモノで、着々と大きく外れて行っている。
しかしながら、日本の医師養成はその医学部入学定員が国家によって厳しく管理され、指導されることによって、極めて計画的に行われている。これが予測不能であるとは言えないだろう。
推計結果は上に掲げた。この数年、病院医師数はプラトーに達しており、まもなく(あるいはひょっとすると来月公表の平成18年12月31日付の三師調査で既に)減少に転じることになる。10年後には、ほぼ三分の二まで減少する。
仮定としておいたのは、以下の通りである。
1. 年齢別国家試験合格者数が今後ほぼ不変。
2. 年齢別病院従事者の割合が今後ほぼ不変。
3. 生命表、つまり生存割合が一般国民と同じ。
このうち3.については異論のある向きもあると思う。医師は短命であるとされるから、推計としては外れても医師数が多くなる方に外れるはずである。
また、2.については、医師が病院を離れるのは、ハードな仕事に身体が付いてこなくなることにしろ、開業のための借金の年限にしろ、一定の年齢が限界となると考え、その前提としている。
もちろん、病棟患者をほとんど持たず、当直すらほとんどしない診療科があれば、事実上は日中の外来専従となるので、診療所の競争が激化すれば、病院に居残る割合は多くなるだろう。これは推計では医師数が過小に見積もられる方向に外れる原因となる。…ただし、病院勤務医の戦闘力としては、いずれにせよ勘定されにくい数である。
最後に、1.についてだが、厚労省にも文科省にも、この政策を変更する気はさらさらなさそうに見える。
データは、医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省・平成14年および16年)、将来人口推計(社会保障人口問題研究所・出生中位死亡中位推計・平成18年)を用いた。
原因は明らかである。
医師・歯科医師・薬剤師調査 平成16年 閲覧 第 2表 医師数,性・業務の種別・年齢別
(クリックするとCSVの圧縮ファイルのダウンロードがはじまります。)
http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/data/180/2004/toukeihyou/0005030/t0110306/E20001.zip
これをグラフ化するとこうなる。
【グラフ16 平成16年 年齢別業務別医師数】
http://image.blog.livedoor.jp/rijin_md/imgs/7/5/7553f2ad.jpg
20年前、2回に亘る厚生省の検討会で、医師余剰の予測が立てられ、医学部の入学定員が10%削減された。その当時、ようやく医学部に滑り込みで入学した一団が40歳代半ばに入り、身体が利かなくなって病院を離れる割合が多くなっているのだ。それ以降、削減された定員では病院勤務医の数は維持できない。いま、このタイミングで病院勤務医が減少に転じることは、20年前に既に決まっていた。
推計でも使った、年齢別の業務別割合をグラフにするとこうなる。
【グラフ17 年齢別医師数の業務別割合】
http://image.blog.livedoor.jp/rijin_md/imgs/8/2/825cdcb5.jpg
対策はいくつか考えられる。
まず、病院勤務医の業務の見直しである。医者でなくてもできることは、医者ではない人々にやっていただくしかない。
また、方法を問わず、医師を増やすこと自体も検討する必要がある。…在宅医療などはじめてしまったものだから、診療所開業医の不足も深刻である。また、病院勤務医が減少に転じたのと同じ理由で、このままで20年ほど経つと、昭和30年代生まれの医師団塊の世代が人生を引退して、医師総数も減少に転じる。
いずれにせよ、人を増やすということは、医療費も増えるということだから、実現可能性は選良の動きにかかっている。時間は残されていない。既に手遅れの感が強いが、じたばたと足掻いた方がいいのではなかろうか。
タグ: 医師数 将来推計
rijin_md at 22:17
コメント一欄
1. Posted by Inoue 2007年11月07日 06:12
4 >医者でなくてもできることは、医者ではない人々にやっていただくしかない。
rijinさんへ。
現実はその逆です。看護師の産科内診は禁じられ、透視写真1枚撮るにも医師がボタンを押しにかけつけます。
>方法を問わず、医師を増やすこと
ですから、私の自論のように、医師国家試験合格者を入学させる2年制の医学校を作ればよいのですよ。
2. Posted by rijin 2007年11月07日 13:59
Inoue さん、こんにちは。
試算してみると、現在の高卒入学6年制の医学部を、順次4年制大学卒入学4年制の医学校へ転換することによって、およそ10年間で約3万人が回復できるようです。
この4年制医学校の定員の幾許かを2年制(…学位制度上の摺り合わせが難しくなりますが…)にすると、さらに回復の度合いが高まるように思います。
制度設計上のシミュレーションなので、比較的簡単な作業で算出可能と思います。数日中にアップしたいと思います。
3. Posted by Inoue 2007年11月07日 18:30
スーパーローテートの廃止も加味する必要があろうかと思います。
最大の問題は養成増加ではなくて、増加した医師を雇う金を、誰が出すかですけれども。
次の衆院選挙と医療崩壊とどちらが早いかは微妙なところですが、民主党が医療費増加を公約にするのは無理ですかね。
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