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http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20071009ddm005070027000c.html
来年4月から予定されていた高齢者医療費の窓口負担増が凍結される流れとなっている。70〜74歳の医療費自己負担を現行の1割から2割に引き上げる措置を先送りするほか、75歳以上の新たな保険料徴収も凍結する。
これらの見直しを実施すると、年に1700億円を超える国の財政負担が生じるという。だが、どこから財源をひねり出すかも決まっていない。政府・与党は補正予算で措置する。仮に赤字国債でまかなうことになれば、財政規律は崩れる。近いと予想される衆院の解散・総選挙を意識した場当たり的大盤振る舞いとしか言いようがない。
困窮するお年寄りの負担が少なくなることにはだれも異存がない。ただ、本気でこの問題に取り組もうとするなら政策転換の覚悟が必要だ。きちんと法律改正で見直すような腰を据えた対応が筋だ。そういう道筋を取らずに、来年度の施策を今年度の補正予算で手当てするというのは姑息(こそく)な手段である。来年度予算に計上すると、また制度改正が必要となってくるからなのか。
政府・与党は凍結を1年で終わらせたい意向だ。意地悪い見方をすると、高齢者に優しい政策も衆院選までということか。だから、手足を縛られないよう法律改正まで踏み込まない、とうがった見方も出てくる。選挙目当てのご都合主義と疑われても仕方ない。
医療制度改革は、高齢社会に入って膨らむ医療費を圧縮するためお年寄りにもコスト意識を持ってもらい、現役世代の負担も過重にならないようにしようと打ち出されたものだった。
高齢人口の増加に伴って、今後ますます膨張が避けられない高齢者医療費の財源は、現役世代が払う保険料や税金などでまかなわれている。政府自らが掲げた「世代間負担の公平」という看板を一時的にせよ下ろすのは社会保障政策に対する一貫性を欠く。
政府は財政再建の当面の目標として基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を目指している。そのため厚生労働省予算は07年度から毎年2200億円削減されている。来年度予算概算要求では削減対象が底をつき、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険への国庫補助金を、大企業などの組合健保や公務員の共済組合に肩代わりさせるという窮余の一策を打ち出している。
片方で、歳出をぎりぎりまで切り詰めながら、もう一方で新たに1700億円を持ち出すのでは朝令暮改もはなはだしい。家計にたとえれば、住宅ローンを返済するため切り詰めた暮らしを強いられている中で、新たに支出しなければならない費目が現れたのに似ている。
凍結したものは、いずれ解凍しなければならない。福田康夫首相は所信表明演説で「若者には希望を、お年寄りには安心を」と述べた。一時的なばらまきではお年寄りの真の安心にならないし、現役や将来世代へのツケ回しは若者の希望を奪うことになる。
毎日新聞 2007年10月9日 東京朝刊
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