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れんだいこのカンテラ時評327 れんだいこ 2007/10/02 23:36
【福田首相の所信表明演説考】
2007.10.1日の「第168回国会における福田内閣総理大臣所信表明演説」(ttp: //www.kantei.go.jp/jp/hukudaspeech/2007/10/01syosin.html)に如何なる特徴をみてとるべきだろうか。田中角栄の「第70回国会に於ける角栄の初の所信表明演説」(ttp: //www.marino.ne.jp/~rendaico/kakuei/enzetusyu_kokkai.htm)と比較してみたい。
角栄は、冒頭次のように述べている。
「戦後四半世紀を過ぎた今日、わが国には内外ともに多くの困難な課題が山積しております。しかし、これらの課題は、これまで多くの苦難を乗り越えてきたわれわれ日本人に解決できないはずはありません。私は、国民各位とともに、国民のすべてがあしたに希望をつなぐことができる社会を築くため、熟慮し、断行してまいる覚悟であります。
七○年代の政治には、強力なリーダーシップが求められております。新しい時代には新しい政治が必要であります。政治家は、国民にテーマを示して具体的な目標を明らかにし、期限を示して政策の実現に全力を傾けるべきであります。
政治は、国民すべてのものであります。民主政治は、一つ一つの政策がどんなにすぐれていても、国民各位の理解と支持がなければ、その政策効果をあげることはできません。私は、私の提案を国民のみなさんに問いかけると共に、広く皆さんの意見に耳を傾け、その中から政治の課題をくみ取り、内外の政策を果断に実行してまいります」。
けだし名言ではなかろうか。角栄は、日共によって金権政治家と烙印され、その有能性が不当に落とし込められているが、冒頭の演説のくだりは角栄の政治哲学(思想)を如何なく述べている。まさにハト派の総帥としての本領力量をも示していると云えよう。角栄の場合、この原稿を自身が書き上げた形跡がある。福田の場合はどうだろうか。福田に限らずであるが、このところの首相演説の殆どが幾分かは自身の考えを指示しているのだろうが官僚作文に堕しており、首相は単に読み上げているだけではなかろうか。
角栄の所信表明は、マクロ的な国際情勢論から入り、それを踏まえた外交として緊張緩和政策を推進、国際協調に尽力することを説いている。日米同盟を堅持しつつも他方で自律的に日中、日ソの関係改善に向かうことを指針させている。福田のそれが終章で国際情勢論及びそれを踏まえた外交を述べていることや、何事も盟主アメリカの顔色を窺いつつの外交路線と対照的である。
但し、「このたび、政府が第四次防衛力整備計画を決定しましたのもこのためであります」と述べているくだりは、その後の防衛費の増大化につながったことや歯止めをかけなかった点で失政であったであろう。
続いて、国内的な治世に触れ、次のように述べている。
「われわれは、戦後の荒廃の中からみずからの力によって今日の国力の発展と繁栄を築き上げてまいりました。しかし、こうした繁栄の陰には、公害、過密と過疎、物価高、住宅難など解決を要する数多くの問題が生じております。一方、所得水準の上昇により国民が求めるものも高度かつ多様化し、特に人間性充実の欲求が高まってきております。これらの要請にこたえ、経済成長の成果を国民の福祉に役立てていく成長活用の経済政策を確立していくことが肝要であります」。
上記観点から、角栄は、日本列島改造論に基づく施策を打ち出している。これに基づき、国土の均衡的発展を主眼とする都市と農村の結合、工業と農業の均衡、高速交通・情報ネットワークの整備を指針させている。今日から思えば、実に的確な政策ではなかったか。不幸なことに、中曽根の登場から今日までの政策は、角栄のこの指針と逆のことばかりしてきている。ここに現下の日本政治の貧困があるのではなかろうか。
続いて、この頃問題になりつつあった公害対策、物価の安定政策、社会保障政策、教育改革、国際収支対策、公共事業の必要を確認している。
最後に次のように述べて結んでいる。
「戦後四半世紀にわたりわが国は、平和憲法のもとに一貫して平和国家としてのあり方を堅持し、国際社会との協調融和の中で発展の道を求めてまいりました。私は、外においてはあらゆる国との平和維持に努力し、内にあっては国民福祉の向上に最善を尽くすことを政治の目標としてまいります。世界の国々からは一そう信頼され、国民の一人一人がこの国に生をうけたことを喜びとする国をつくり上げていくため、全力を傾けてまいります。あくまでも現実に立脚し、勇気をもって事に当たれば、理想の実現は可能であります。私は、政治責任を明らかにして決断と実行の政治を遂行する決意であります」。
この角栄の「決断と実行の政治遂行」所信表明演説に比して福田のそれはどの程度の水準であろうか。一見して、ちまちました総論であることが判明する。政治指針は網羅しているが、政治哲学、具体的施策に欠けた評論でしかないことが判明する。「はじめに」と「国会運営について」と「政治と行政に対する信頼の回復」のくだりは、言わずもがなの駄弁でしかない。
続く「信頼できる社会保障制度の整備」も、結局問題点を指摘しただけで施策及びその理念を打ち出している訳ではない。続く「国民の安全・安心を重視する政治への転換」、「子育てを支える社会の実現」も、問題点を確認しているだけに過ぎない。続く「改革の継続と安定した成長」、「いわゆる格差問題への対応」、「これからの環境を考えた社会への転換」も、アドバルーンを揚げているだけに過ぎない。
角栄の所信表明では冒頭であった国際情勢論及び外交論が福田のそれでは終章に登場し、「平和を生み出す外交」で次のように述べている。
「日米同盟の堅持と国際協調は、我が国外交の基本です。世界の平和は、国際社会が連帯して取り組まなければ実現できないものです。私は、激動する国際情勢の中で、今後の世界の行く末を見据え、我が国が国際社会の中でその国力にふさわしい責任を自覚し、国際的に信頼される国家となることを目指し、世界平和に貢献する外交を展開します。直面する喫緊の課題は、海上自衛隊のインド洋における支援活動の継続と、北朝鮮問題の早急な解決です。
テロ特措法に基づく支援活動は、テロリストの拡散を防ぐための国際社会の一致した行動であり、海上輸送に資源の多くを依存する我が国の国益に資するもので、日本が国際社会において果たすべき責任でもあります。国連をはじめ国際社会から高く評価され、具体的な継続の要望も各国から頂いています。引き続きこうした活動を継続することの必要性を、国民や国会によく説明し、ご理解を頂くよう、全力を尽くします」。
いわゆる「アメリカにノーと言えない日本造り」に向かうことを宣言していることになる。いわゆるシオニスタン政治である。この姿勢は次のように繰り返されている。
「日米同盟は我が国外交の要であり、信頼関係の一層の強化に努めていきます。在日米軍の再編についても、抑止力の維持と負担軽減という考え方を踏まえ、沖縄など地元の切実な声によく耳を傾けて、地域の振興に全力をあげて取り組みながら、着実に進めてまいります」。
福田はその後で、アジア外交を重視し、北朝鮮問題で云々、中国、韓国、アセアン諸国、ロシアとの関係を云々と述べているが、日米同盟のタガ嵌め下に於けるそれであり、自律した外交は望むべくもなかろう。
「むすび ― 自立と共生の社会に向けて」で、次のように述べている。
「改革の続行に当たって、私は、『自立と共生』を基本に、政策を実行してまいりたいと思います。老いも若きも、大企業も中小企業も、そして都市も地方も、自助努力を基本としながらも、お互いに尊重し合い、支え、助け合うことが必要であるとの考えの下、温もりのある政治を行ってまいります。その先に、若者が明日に希望を持ち、お年寄りが安心できる、『希望と安心』の国があるものと私は信じます。激しい時代の潮流を、国民の皆様方とともに乗り越え、『明日への道を一歩一歩着実に歩んでいる』ということを実感していただけるよう、持てる力のすべてを傾けて、取り組んでまいる所存であります」。
福田の「自立と共生論」はこれはこれで結構である。小泉政治、安倍政治とは違う味を出しており評価されるべきだろう。問題は、福田首相のこの言葉がどう実を結ぶのかにある。いいことは誰でもいえる。その為に何を為すべきかが問われている。見てきたように福田はシオニスタン政治を誓約しているが、その制限下で「自立と共生の社会に向けて」何事か為し得るだろうか。
れんだいこのスタンスは、ハゲタカ身売り路線を構造改革と称してレイプ政治に明け暮れた小泉再登板を掣肘して登壇してきた福田政治の意義を認め、今後も小泉再登板を抑制する限りに於いて評価せんとしている。他の多くの評者が安倍政治も福田政治も無分別に批判して小泉再登板の呼び水を謀っている情況に於いて、批判しつつも注意深く見守ろうとしている。この判断が正しいかどうかはっきりするまで今しばらく時間がかかりそうだ。
2007.10.2日 れんだいこ拝
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れんだいこ 人生学院
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