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イラン大統領の米講演 敵意超えた二つの勇気(毎日新聞:東論西談)
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投稿者 天木ファン 日時 2007 年 10 月 02 日 13:57:55: 2nLReFHhGZ7P6
 

http://mainichi.jp/select/world/news/20071001ddm007030137000c.html

 国連が潘基文(バンギムン)事務総長の肝いりで開いた気候変動会合だったが、地元メディアの関心は、完全に同じ日(24日)にコロンビア大学で行われたアフマディネジャド・イラン大統領の講演に向いた。大学は入場を厳しく制限したが、キャンパスは5000人の学生たちであふれた。講演を聴いて地下鉄に乗ると、見知らぬ人から、「大統領は何をしゃべったの?」と声を掛けられた。

 就任(05年)以来、毎年この時期にニューヨークを訪れている大統領だが、今年は米同時多発テロ(01年9月11日)の現場訪問を希望したことで話題性が一気に高まった。大衆紙は連日、1面に大統領の顔写真を掲載し、「聖地を訪問するなら地獄へ落ちろ」などと書きたてた。

 なぜ、イラン大統領がこれほど嫌悪されるのか理解に苦しんだ。独裁指導者がずらっと居並ぶ中東にあって、アフマディネジャド大統領は選挙で選ばれた指導者だ。しかも、イラン人は9・11テロに関与していない。むしろ、アフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンやイラクのフセイン政権と最も敵対していたのがイランだった。

 ホロコースト否定など、時に不見識な発言で物議を醸す大統領だが、この日の講演は全般的にソフトな口調で、第二次世界大戦後に欧米が築き上げた世界秩序への率直な疑問が中心だった。

 「どうして核を持っている国が、持たない国に対し核を持つなと迫れるのか」(核問題)▽「欧州の問題のツケをなぜ、パレスチナ人が支払わねばならないのか」(イスラエルの存在)−−など。「イランにはホモセクシュアルはいない」と発言し失笑を買う場面もあったが、ほとんどは真剣に考えるに値する内容で、聴衆からはしばしば拍手が起こった。

 この講演前、コロンビア大学には「独裁者に発言を許すのか」と中止要請の声が相次いだ。しかし、大学側は「考えを異にする者にも発言の機会を保障することこそ我々の信条」とはねつけた。そのうえ、おもねることなくボリンジャー学長は当人を前に、「狭量な独裁者」と批判した。

 一方、大統領はたった一人でステージに立ち、学生からの質問を正面から受けた。一国の指導者が、敵視されている国に乗り込み質問を受けることが、どれほど勇気のいることか。日本の首相が北朝鮮で講演したり、ブッシュ米大統領がイランやキューバの学生の質疑を受けることを想像すればわかるだろう。

 演説後、学生に聞くと、「イランの指導者が何を考えているか直接、聞けて良かった」「言われているほど、むちゃな大統領じゃなかった」といった感想が多かった。学生たちにとっては、メディアに踊らされることなく、自分の頭で考える機会となった。コロンビア大学とアフマディネジャド大統領が示した二つの勇気が、敵意をかき立てようと扇動するメディアを凌駕(りょうが)したのは確かだった。<ニューヨーク・小倉孝保>

毎日新聞 2007年10月1日 東京朝刊


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