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今回の参院選挙を自民党に対するお灸と捉える議論もある。しかし、今の自民党はお灸をすえられて目覚めるだけの正気も失っているように思える。自民党の中の復元能力はなくなったということである。したがって、政権担当能力を持つのは自民党しかないというのは、もはや遠い昔の神話となった。その意味で、民主党は政権政党として認知されたといってよい。
また、日本の政党政治全体にとっては、世界標準の二大(二極的)政党システムが姿を現した点で、大きな意義があると筆者は考える。世界標準モデルとは次のようなイメージである。経済効率や強者の自由を尊重する保守政党が右側に、分配の公平や弱者も含めた平等を尊重する社会民主主義系、あるいはリベラルな政党が左側に立ち位置を定め、政権をめぐって競争する。場合によっては中間的政党と連立を組む。イギリス保守党、ドイツキリスト教民主党、アメリカの共和党が前者のグループであり、後者のグループにはイギリス労働党、ドイツ社会民主党、アメリカの民主党などが属する。現在のヨーロッパでは、二つのグループの勢力はおよそ拮抗している。アメリカでは、ブッシュ政権の進める小さな政府路線のひずみがたとえば医療問題に現われ(マイケル・ムーア監督の最新作「シッコ」をご参照あれ)、来年の大統領選挙では国民生活を重視する民主党が優勢である。
日本では、この十五年ほど二大政党制を目指すといいながら、世界標準モデルは根付かなかった。その最大の理由は、自民党がジキルとハイドよろしく、強者の自由を尊重しつつ、ある程度弱者にも再分配するという芸当を続けてきたからに他ならない。それが可能になったのは、経済成長の蓄積、地方や弱者の保護を任務とする官僚の働きなどの要因であった。他方、日本的な再分配が、政治行政の腐敗、税金の無駄遣いなどの弊害をもたらしたことも周知の事実である。
小泉純一郎前首相は、確かに自民党を大きく変えた。自民党は市場主義や競争原理に純化し、地方や弱者を思いやる寛大な保守政治家は党外に追放されたり、不本意な引退を余儀なくされたりした。構造改革の結果、労働の規制緩和にともなう非正規雇用の増加、地方に対する公共事業費や地方交付税の削減による地域社会の疲弊が、最も可視的になった。
このような状況にあって小沢一郎代表が「生活優先」を唱えて、構造改革への対決姿勢を明確にしたことこそ、選挙での大勝につながった。その意味で、自民対民主の対立構図が、ようやく世界標準になったのである。これから次の総選挙まで、生活優先路線をいっそう推し進めて政権交代に到達するしかない。その際、注意すべきことがいくつかある。
一つは、呼び名にこだわるべきではないという点である。社会民主主義という言葉への誤解を解く必要がある。日本では、公平な分配や地域社会への配慮は従来保守政治家が担うという伝統があった。労働組合との関係では社会民主主義であり、農村部や中小企業に対しては思いやりのある保守政治であり、それらを総称するのが生活優先である。
第二は、昔の再分配にそのまま戻ることはありえないという決意である。全国紙の経済論説では、新自由主義を批判すれば、「では昔の経世会流の利益配分に戻れというのか」という不毛な議論が繰り返されている。八月二六日の『朝日新聞』では、自民党と民主党の今回選ばれた参議院議員へのアンケートが紹介されていた。そこでは、日本型システムの維持と改革という単純な二者択一で、政治家が分類されていた。これまた不毛な話である。公平な配分をしつつ、最小限のコストで透明な仕組みを作るという意味で日本型システムから訣別する改革こそ、民主党の課題である。
第三は、財源問題に関する率直な議論である。無駄を省くことは決して魔法の杖ではない。他の先進国と比べれば、日本の租税社会保険料負担率はかなり低い。社会保障や地域支援の制度について持続可能性を確保しようと思えば、財源について具体的に考えることは、政権構想を作る上で不可避である。
民主党政権が作り出す次の日本をイメージする上で、持続性をキーワードに諸政策を束ねていくべきである。自然環境、地域コミュニティ、雇用、家族、どれをとっても目先の利益を追求して人や資源を消尽するのではなく、人や資源を大切に育て、使いながら二一世紀にも持続できる日本社会を作り出すことが、民主党の政策の究極理念となるはずである。筆者はこの理念を示すスローガンとして「明日に続く日本」という言葉を提案したい。未来への不安を持っている多くの日本人に、皆で少しずつ力を出し合いながら持続可能な社会を作り出すというメッセージは、共感を持って受け入れられるはずである。民主党がこの好機を逸することのないよう、一丸となって政権獲得に邁進してほしい。(プレス民主9月7日号)
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