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96年秋に衆議院議員となって、初登院した最初の投票が「首班指名」だった。当時は、自社さ連立政権だったから社民党は「橋本龍太郎」と書くようにというのが、代議士会での指示だった。ここで、辻元清美・中川智子と私の新人3人組は、自民党総裁の名を記入するのをよしとせずに、「土井たか子」と投票した。その後、自民党との連立政権離脱に向けて、党内での議論を激しく展開することになる。あれから11年、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎、安倍晋三、そして今日の福田康夫と6代の自民党総理が誕生する現場にいたことになるが、参議院選挙で与野党逆転した後と思えないほどにダラーッとしたメリハリのない選出劇だった。この政権がいったい何をめざしているのか、一見すると定かでないが実は明確である。それは政策的な目標ではなく、ただひとつ「自民党による政権維持」そのものが福田政権の求心力なのである。
やや青白い表情で安倍前総理も本会議場に現れた。緊張の糸が抜けてしまったのか、健康状態が災いしているのか、ちょうど1年前に「美しい国」を掲げて登板した頃に比べると、別人のようにも見えた。日本丸を彼は、思い切り右へ、右へと舵を切った。教育基本法・防衛省昇格・米軍再編支援法・国民投票法・年金法案と野党の抵抗を踏みにじるようにして、強行採決を繰り返してきたこの安倍政権は、デビュー当時の「再チャレンジ」「格差是正」などに半年もするとほとんど言及しなくなった。そして、共謀罪や集団的自衛権の政府解釈の見直し(自衛隊の戦闘参加への道をひらく)、道徳の教科化や高校卒業後の18歳の「強制奉仕活動」をにらんだ大学9月入学制など「教育と軍事が手を結ぶ」路線で、「憲法改正・9条廃棄」まで突き進みたかったのだ。
参議院選挙の与党の大敗原因は、もっぱら「年金記録問題」や「政治とカネ」をめぐる不祥事に対して鈍感さへの批判だと言われているが、安倍政権のめざす「超復古主義」「戦後レジームからの脱却」路線に対して、肌寒くなるような畏れを抱く人が少なくなかったからだと私は考えている。しばらくの間、右にふれすぎた振り子はやや中央に戻ってくるかもしれないが、「小泉・安倍」時代の6年半にメディアも人々も大きく変化した。強い者が果実を独占し、既得権打破の装いと劇場的悲喜劇の演出でメディアを手玉に取って、世論という名の弾丸列車を時として暴走させる(01年5月小泉内閣発足時支持率90%・05年9月「郵政選挙」)状況を生んでしまった。その根は、枯れているどころか次の「劇場=ドラマ」を求めて地下水脈をうごめいている。
福田政権は、その地下水脈の移動とは無縁の「枯れ始めた葦」なのかもしれない。
人々が苛立ち、あまりにも旧態依然の政権に飽き足らなくなった時に、野党第一党民主党に有利になるようなタイミングで「解散・総選挙」をしないことが、権力を手放したくない政権政党の考えることだろう。今日は、鳩山邦夫法務大臣の「死刑」をめぐる発言があった。
[新聞報道より引用]
鳩山邦夫法相は25日の閣議後の記者会見で、死刑執行の現制度について「法相が絡まなくても、自動的に客観的に(死刑執行が)進むような方法を考えたらどうか。法相に責任をおっかぶせる形ではなくて」と述べ、法相の署名がなくても執行できるように制度を変更すべきだとの考えを示した。
鳩山法相は「死刑を受けるべき人間は執行されないといけないが、(法相は)誰だって判子をついて死刑を執行したいと思わない」と発言。執行の順番について「ベルトコンベヤーって言ってはいけないが、乱数表か分からないが、客観性のある何かで事柄が自動的に進んでいけば、次は誰かという議論にならない」と述べた。(『日本経済新聞』)
とっさの思いつきではなくて、法務省の死刑執行についての姿勢が根底にあるようだ。今日の午後、鳩山大臣が再任されるかどうかを見極めて、「死刑執行ベルトコンベアー」論について明日以降、とりあげることにする。戦後の再審請求が認められて冤罪が明らかになった事件は、どの事件でも刑事訴訟法の半年以内どころか、何度も何度も長い年月をかけて再審請求を繰り返してきたケースだった。死刑判決にも「誤判」がある。だからこそ、最後の最後に法務大臣の関門が設けられていたのではないか。
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