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〈寄稿〉 安倍晋三の崩壊 その原因は拉致問題であった (朝鮮新報)
http://www.asyura2.com/07/senkyo42/msg/426.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 9 月 25 日 00:23:44: 2nLReFHhGZ7P6
 

http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2007/05/0705j0922-00002.htm

 参議院選挙での惨敗にも拘らず安倍総理は続投を宣言し、新内閣の発足に踏み切った(8月27日)。

 選挙の結果が何であれそれは年金の問題だとか、何とかイオン水の男、それにあのバンソウコウ男らの失態のような、自分が直接責任を負うべき事柄のせいではなく、自分の主張の中核である「戦後レジームからの脱却」については十分国民の理解を得ているという自信があったからだと思う。

 そこで軒昂たる意気を堅持したままAPECが開かれているシドニーに向かって出発した(9月8日)。この段階で安倍総理の意気に変わりがあったとは思わない。変わりが見えたのはブッシュ大統領との会談を終えた翌日(9月9日)、記者会見に臨んだときである。米国の同盟国としての務めとしてインド洋での給油活動は「職を賭してでも続ける」と言う一方において、しかし「職責にしがみつくつもりはない」と何か意気消沈したように弱音をつけ加えたのだ。

 そして日本に戻った翌日(9月10日)、国会での所信表明まではこなしたものの、その晩「盟友」の麻生幹事長に密かに辞意をもらし、事実その2日後(9月12日)には職を投げ出したのである。安倍総理の心理の急変を時系列的に遡って行くと心の変化の直接の理由はシドニーにおけるブッシュ大統領との会談であったという結論に至らざるをえないだろう。何が起こったのか?

 安倍総理がシドニーに到着する前日の7日、ブッシュ大統領は韓国の盧武鉉大統領と会談し、その際自分の任期中に北朝鮮問題を終結させたい意向を語った。その後の記者会見の席でも、「終結に至る具体的な道筋を示してくれ」という盧武鉉大統領の要求に応じ、ブッシュ大統領は「1953年の休戦協定を廃止し、これを恒久的な平和条約に替える」という具体的なロードマップを公開的に発表したのである。

 その翌日、つまり8日、シドニーに着いた安倍総理は前の日のブッシュ発言に不愉快な思いをしながら、ブッシュ大統領との会議の席に着くや否や、いちばん気になる「拉致問題」から話を切り出したのではあるまいか。

 「米国は北朝鮮との国交正常化に向けて舵を切ったようであるが『拉致問題』はどうしてくれるんですか。よもやこれを置き去りにしてまでテロ支援国のレッテルを北朝鮮から剥がした上、どんどん話を進めていくのではないでしょうね」

 安倍のこの切り出しにブッシュの心中が穏やかであったはずはないだろう。自分の任期中に北朝鮮との関係を正常化させるのは米国としては既定の政策である。安倍のいう「拉致問題」がどうであれ自分の既定の方針をひっくり返すわけにはいかない。そのプロセスのひとつとして北朝鮮からテロ支援国のレッテルを剥がすという措置を避けて通るのは不可能であろう。

 第一、米国として焦眉の急務である核の問題と安倍の言う「拉致」のこととは性格の異なる別個の問題ではないのか。それに「拉致問題」の「解決」は具体的に何を意味するのかさっぱりわからん。相手側が死んだと言っている横田めぐみを生きたまま帰せということか。横田めぐみが生きて帰ってくるまで米国は北との交渉を進めてはならないということなのか。

 安倍が「拉致、拉致」とわめきながらも「慰安婦」問題について安倍自身の謝罪を求めている米下院の可決案(6月26日)についてはだんまりを決め込んでいるのも、態度が幼稚すぎて解せない。政策の中心軸として据えている「戦後レジームからの脱却」とはまた何なのだ。これは体(てい)のいい反米政策ではないのか。

 ここでブッシュ大統領は安倍総理を突き放した発言をしたのだと思う。

 「安倍総理殿、米国は自らの国益のために核問題の解決を目指してわが道を行くことでしょう。日本がもし自らの国益のために拉致問題を最優先課題として考えるなら、6者会談の足を引っ張るようなことをせずに北との二者会談で個別的に問題解決に努めてほしい」

 動転した安倍が政権を投げ出す気になったのは、ブッシュからこの言葉を言い渡された瞬間であったと筆者は推測する。

 安倍が早晩、拉致問題でブッシュに見放されるであろうことは、かなり前から予測されていたことである。拉致問題に関して安倍がブッシュに要求し続けたことは、一貫して北朝鮮の「レジーム・チェインジ」であった。「レジーム・チェインジ」とは、米国がイラクでやったように先制攻撃をかけ、武力で北朝鮮を屈服させてくれということである。しかし、イラクで足を取られ米国が身動きをできなくなってから、ブッシュのオプション(選択肢)から、これが取り除かれたのは、かなり前のことであった。にも拘わらず「レジーム・チェインジ」についての安倍の要求は変わらなかった。

 安倍晋三は崩壊すべくして崩壊したのであった。そこには言われているような謎はなかったのである。「インド洋上の給油は職を賭してでも続ける」というシドニーでの安倍総理の発言は「どうか見捨てないでくれ」というブッシュ大統領に対する悲痛な哀願の言葉であっただろう。(鄭敬謨、評論家)

[朝鮮新報 2007.9.22]


<参考資料>鄭敬謨
http://jeongsamo.net/

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