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第5回(2007年9月21日)
今年も早や、彼岸花の咲く季節となった。この厳しい暑さのなか、それでも植物は、自分が咲くべき「時」をよくわきまえている。たしかに、今夏の酷暑の下、狂い咲きした桜やミヤマキリシマがあったようだが、それでも、われわれ人間ほどには狂っていないように思われる。
今日9月21日は、安倍首相の53回目の誕生日である。「失意の病床で迎える“寂しきバースデー”」と本日の地元紙が報じていた。安倍氏は、まだ食欲が戻らず、点滴をしているようだ。だが、このような事態になるとは、本人も周囲も、1年前には、予想だにしなかったことだろう。まさに、去年の今頃は安倍氏にとって順風万帆だった。まさに「安倍時代」を思わせる勢いだった。
その意味で、今年はたしかに「乱」の年である。すでに旧聞に属するが、安倍首相が突然、辞意を表明したのは、9月12日(水)午後2時のことだった。
すべての国民が思った。“何で、今?”と。あるいは、“何を、いまさら!”と。
それは、あまりにも突飛、かつ唐突な印象を与えた。まさに、ひたすら“美しさ”を求めた人の、あまりにも“美しくない”敵前逃亡、あるいは職場放棄だった。
「人生いろいろ、会社もいろいろ」とはあの軽薄な小泉前総理の言葉だが、たしかに「人生いろいろ、首相もいろいろ」である。だが、安倍氏ほど幼稚、頑迷、浅薄、虚弱、無責任な首相も珍しい。
私は正直、何でこんな方が総理をやっていたんだろう、と呆れざるを得なかった。だが、この思いは、多くの国民もまったく同じなのではないだろうか。無論、身体的な虚弱さに対して、多少の同情は禁じ得ない。だが、単に名門(?)の出というだけで、総理の職に値しない人がこの1年、日本の首相として在職していた感じだ。
辞意表明の当日、朝日、毎日、讀賣、西日本、熊本日日の各紙に目を通したが、一様に安倍氏の今回の行動に対する批判的言辞が目を引いた。各界の著名人のコメントのなか、私は、成田憲彦氏(駿河台大学長)の言葉が、一番印象深かった。同氏は、西日本新聞に「政治経験浅かった首相」という題で次のように書いた。
《思いがけない事態だった。しかし何となく危うさの予兆はあった。それは内閣発足の最初からあったと言ってよい。 安倍晋三首相退陣の真の理由や背景は、これから明らかになっていくであろうが(これは現在、「機能性胃腸障害」という肉体的疾患と「神経衰弱」という精神的疾患が複合されたものによると考えられている――筆者注)、ニュースを聞いて最初に感じたことは、安倍政権は従来の自民党政権とは異なる新しい政権たろうとして、結局そうなることができずに終わった政権として日本の政治史に記憶されるだろうということである。
安倍政権の最大の特徴は、伝統的な自民党政権からの逸脱にある。伝統的な自民党政権は、首相は当選10回以上、主要閣僚と党三役を経験し、派閥のリーダーであって、派閥の合従連衡によって成立し、政権としての政策課題の遂行も陰では派閥に依存していた。
これに対して安倍氏は当選5回で、官房長官と幹事長は経験したが、従来の主要閣僚の定義に合致する財務省や外相などの省庁大臣(主任の大臣)は経験していない。何よりも安倍氏は派閥リーダーでないし、派閥を政権の基盤としていたわけではない。
このような派閥を脱した政権の姿は、1990年代の政治改革で派閥政治が否定されたことにより、さらには、「自民党をぶっつぶす」「派閥を壊す」と叫んだ小泉純一郎前首相の登場によって、新しい政権の姿として期待された。
そして安倍氏の若くセレブで「選挙に勝てる人」という姿が、これからの時代では日本のリーダーの条件と考えられた。
しかしこれでは結局強固な政権をつくることができなかったということが、今回の最大の教訓である。 なぜ安倍政権は、強固な政権になれなかったのか。かつて自民党の派閥のリーダーたちは、天下を目指す戦国大名たちのように覇を競い合っていた。いわゆる「自民党戦国史」モデルだが、それは実は強靭(きょうじん)な精神力・意志力を持つリーダーの選抜と教育の仕組みでもあった。
派閥の衰退によって、強靭な精神力を持つリーダーの選抜と教育の仕組みは失われ、一方で米国の大統領選挙のように、一年以上にわたって予備選挙や本選挙を勝ち抜くことでリーダーにふさわしい人間かどうかをテストするという仕組みも出来上がっていない。
「選挙に勝てる人」という安倍氏の評価も、実は新聞が世論調査で「次の首相にふさわしい人」を尋ねたら一番多かったというだけで、本当に資質がテストされていたわけではない。結局一国の首相としては、未熟でか弱いリーダーが誕生してしまったということだ。
自民党戦国史モデルに替わる新しいリーダーの選抜と教育のシステムの確立は、これからの政治の重要な課題の一つである。それとともに、官邸の機能強化論に比べて政権組織論も議論する必要があろう。
かつては派閥が政権を支えたが、それが期待できなくなったときに誰が政権を支えるのか。安倍首相は「お友達」にそれを求めた。しかし選挙での支援や政治資金の獲得、陳情の処理、そして入閣のみならず副大臣や政務官、その他国会や党の役職ポストの獲得と、政治家生活のすべてにわたって面倒を見てくれた派閥と、単なるお友達では、政治家の忠誠度は比較にならない。
歴史の歯車は逆転すべきでないが、かつて派閥が果たしていた機能をどう代替するかが、日本政治の切実な課題になるだろう》と(9月13日付西日本新聞)。
成田氏は、実際に、細川護熙首相の秘書官を経験した方であるだけに、その政治分析は鋭く、かつ説得力がある。同氏はまた、他紙(朝日や讀賣)にもコメントを述べているが、それらはまったく同じものではなく、それぞれ力点を変えて、誠実に論を展開している。私は、このような点にも、成田氏の誠意と真実味を感じる。
全文はこちらで
福田新政権に未来はあるか? (渡邉良明●現代日本政治論)
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/WA2-5.HTML
渡邉良明●現代日本政治論
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/TEST18.HTML
MORITA RESEARCH INSTITUTE CO.,LTD
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/
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