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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2007092302050953.html
【社説】
週のはじめに考える 政治の劣化が心配だ
2007年9月23日
自民党の新総裁が今日決まります。事実上の後継首相選びにワイドショーは盛り上がりましたが、この政治劇は国民不在でした。政治の劣化が進んではいませんか。
安倍晋三首相の唐突な辞任表明を受けた自民党総裁選の行方をにらみながら読んだ二冊の本が、深く重く心に残りました。
いずれも、現場の視点から、日本という「国」のあり方や、日本人の生き方について「これでいいのか」と問いかけています。
その一つは、働いても生活保護水準以下の暮らしを強いられる人びとの実態を描いた「ワーキングプア」(ポプラ社)です。
ワーキングプアの実態
二回にわたって放映され、大きな反響を呼んだNHKスペシャルの内容を取材班が単行本にしました。
保険料支払いの年数不足で年金がもらえず、アルミ缶拾いを生活の糧にする京都市の元大工の高齢夫婦のケースが紹介されています。
朝七時に自転車で家を出て、二人が数時間、休みなく拾い続けて、集まったアルミ缶は六百余り。空き缶はリサイクル業者に売りますが、一缶あたり二円前後。金額に換算しても二千円に満たない量です。月に五万円ほどが収入のすべてです。
お年寄りが空き缶を拾って最低限の生活費を得る光景が足元に広がっているのです。日本の戦後復興を支えた人の晩年としてはあまりにわびしい姿ではありませんか。
ほかにも実例が示されています。住居を失い路上生活を続ける都会の若者たち、疲弊する地域社会で懸命に生きる商店主や農家、子どものため睡眠時間を削って二つの仕事をこなす女性たち。
多くが家族の病気やリストラ、社会保障費の削減などによってワーキングプアに陥っています。格差社会や「働く貧困層」の広がりは、自己責任論ではなく構造的な問題として考えられるべきでしょう。
社会全体の衰退を懸念
一例が、非正規社員化による企業の人件費削減、派遣労働法改正など労働の規制緩和の影響です。
若者たちの苦境について、経済評論家の内橋克人さんは同書で警告します。「このままではこれからの社会を築くべき健全で優れた労働力を持ち得ない社会になってしまう。社会全体が衰退してしまうという懸念をものすごく感じています」
もう一冊、精神科医香山リカ氏著「なぜ日本人は劣化したか」(講談社)は、こうした状況をさらに鋭く指弾します。将来の衰退ではなく、劣化は次のようにもはや現実だといいます。
「日本語力も劣化、考える力も他者の心を想像する力も劣化、モラルも劣化、コンテンツ(情報の内容)も劣化、体力も辛抱強さも劣化、社会の寛容も劣化」
ではなぜ、こんな事態にいたったのでしょうか。香山さんは、新自由主義、グローバリズムが引き金になったと解説します。安倍政権に引き継がれた小泉改革のように、政府の役割を縮小する「小さな政府」や規制緩和、市場競争主義の政策を推し進めた結果だというのです。
世界で生き抜くための市場原理主義や経済利益優先主義、これによる拝金主義が「弱肉強食は当たり前」「他者に厳しく、自分に甘く」という排除型社会を進め、さまざまなレベルで社会や人の劣化を招いたという論理立てです。
新自由主義が日本独特の終身雇用制や年功序列の会社社会の変容を、勤勉や思いやり、正直といった日本的徳性の喪失を、さらに敗者、弱者を尊重する福祉型社会の崩壊を、それぞれ迫ったともいえます。
日本は危機に瀕(ひん)しているのではありませんか。「ワーキングプア」の副題は「日本を蝕(むしば)む病」です。
こんな時こそ、政治の出番です。時代状況を検証し、先見性のある対策を取るのが政治の役割ですから。でも、安倍首相は無自覚で世間知らずでした。憲法改正や教育再生を叫ぶのは得意でも、地方や弱者への気配りは苦手だったようです。
それに対する強烈なしっぺ返しが参院選でした。年金記録不備や「政治とカネ」問題を含め、安倍政権の機能不全への告発となりました。
でも、首相の惨敗に目をつむっての続投と内閣改造が結局、無責任な「政権放棄」を招いたのです。
首相一人の責任ではありません。選挙に勝てそうだからと担ぎ出し、続投を認めた自民党も同罪です。そして今度は、政治的混乱におかまいなく、国会を空転させ、派閥の論理による後継者選びに奔走です。
有権者の姿が見えない
有権者の姿が見えない自民党政治は劣化と呼ぶしかありません。
新総裁に選出が確実といわれる福田康夫氏は「若い人に希望を、お年寄りに安心を」と新たな国づくりの旗を掲げました。でも、基本的には小泉・安倍路線を踏襲する方針だといわれます。
この国のあすを決めるのは国民です。日本の劣化を防ぐためにも、選択肢を示して民意を反映させる解散・総選挙が待たれます。
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