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http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/kokkai/news/20070919dde012010010000c.html
ようやく秋の風を感じ始めたかなと思ったら、残暑に台風や大雨と、どことなく落ち着かない。そんな中で突然の自民党総裁選が始まった。2人の候補、福田康夫元官房長官(71)と麻生太郎党幹事長(66)の街頭での訴えを聴衆はどう受け止めるのだろう。東京と高松に足を運んだ。【本橋由紀、写真・内林克行】
◆「ちゃんとした人に早く決まってほしい」
◇東京・渋谷◇
2人の街頭演説はJR渋谷駅のハチ公前から始まる。16日午後3時、演説会まで1時間。人が集まり始めていた。
「責任政党の自民党です。よろしくお願いします」。選挙カーから絶え間なく流れるアナウンス。所信表明演説までしながら、首相の職を投げ出すように辞めたのは、どこの党の誰だったか。「責任政党」の言葉がなんだか軽すぎて、さみしい。
「まったくねえ。どうしようもない」。法被姿のお父さん(65)がつぶやいた。駅前にはこの日、金王八幡宮のみこしが出ていた。「それっ、そりゃっ」「ぴーひゃら、ぴーひゃら」
ハチ公の銅像前にいた神奈川県内の女子高生(17)は「麻生さん、見たい! えー、来るんですか? ラッキー」と満面の笑み。こちらもお祭り気分かと思ったら、黙って一緒にいた女子高生(17)が口を開いた。「なんで?って思うのはね。総理大臣を自分たちで選べないじゃないですか。福田さんに決まっちゃうんですよね」
首相が決まるこの選挙。しかし、ほとんどの国民は直接、参加できない。だから私は、しらけている。
自民党の総裁選で圧倒的な支持を受けて安倍晋三首相が政権の座に就いたのはほぼ1年前。だが、自らは総選挙を経ることなく、小泉純一郎前政権の「財産」を使って強行採決を繰り返した。参院選で大敗しても「基本路線は支持されている」と居座ったあげく、あっさり退陣。この数年、政治は一体、どれほどの民意を本気でくんだのだろうか。
午後4時前、2人が選挙カーに立った。福田さんは余裕を漂わせ、麻生さんはにこにこ笑顔を振りまいている。
最初に演説したのは福田さんだった。「すべての皆様方の……、立候補させていただきました」。上空のヘリコプターと近くのビルから流れるコマーシャルの音が重なる。「日々の生活が、それにふさわしいものか、考えていかなければ……。若い人たちが希望を持てるように、安心できるようにしっかりやっていきたい」。耳に優しい話ばかりと思っていたら、後ろの方から聞こえてきたのはこんな声。「福田さんじゃ、面白くねえな」
麻生さんの番になった。「いえーい」「たろうー」。拍手も大きい。「109はマルキューって言うんです。ここで作られるファッションがアジアを席巻している」。語尾を伸ばす独特のしゃべり方。はやりの「脳内メーカー」などを持ち出すが、なんだか聴衆に迎合する漫談を聞いているようだ。
演説を聞いていた女性(33)は「議員の人が大勢を決めちゃったけど、街中の空気とは違いますよね」と不満をのぞかせる。自民党員なんだそうだ。周囲では、テレビカメラが「スピーチ力はどっちが上?」などと、聴衆に採点してもらいに回っている。
しかし、私たちはこの数年、演説のうまさや人気先行で決まる首相の危うさも見てきたはずだ。40代の女性は「ちゃんとした人に、早く決まってほしい」と話した。国会は開会中なのに、23日まで総裁は決まらない。60代の女性にはこうまくしたてられた。「この国はもう、とっくにぶっこわれている。誰も反省しないで同じことを繰り返すだけ。マスコミだって悪いのよ」
放送作家の山田美保子さん(50)の言葉を思い出した。「本当にもったいないですよね。無駄なお金がかかっていると思うと。政治空白を作らないとか、テロに負けないとか言ってましたけど、もし今、テロがあったらどうするんでしょう」。駅前の高層ビルを見上げたら、ちょっぴり背筋が寒くなった。
◆「思い切って総選挙をしたほうがいい」
◇四国・高松◇
翌17日、参院選で自民が惨敗した四国。台風の影響を受けたのか、晴れ間ものぞくが、雨もぱらつく。三越高松店前の会場は押すな押すなの人だかり。暑い。熱中症で倒れる人が出るのではないかと心配になる。おばあちゃんやおじいちゃんは倒れかけた放置自転車と人の波に挟まれて身動きがとれず、危なっかしい。「へたな企画やなあ。中央公園でやればいいのに」
だが、参院選で安倍さんが中央公園に来た時は会場の広さばかりが目立ったらしい。だからって、少しは交通整理をするなり、通路を作ればいいのに。「狭くて暑くて苦しいけど、我慢していただきたい」と主催者のアナウンス。我慢ばかりを強いて、参院選でお灸(きゅう)を据えられたのではなかったの?
車が渋滞しているとかで、聴衆のストレスがたまる。予定を12分過ぎ、2人の候補者が到着した。
まずは福田さん「東京は大きなビルがある。この高松は裏に行けばそういうビルはない」と言い出した。すかさず「そんなことはない」という声。「けなしているんではないんです。一般的に言うと、都会が発展し、地方はよくない。でも都会は世界と闘っている、東京は発展せざるを得ない」。別の男性の声が響いた。「一極集中しとって、なんや」。東京から来た私が聞いていても、どこかピントがずれているような。しかし、福田さんは続ける。「小泉改革が悪かったのではない」。これにヤジがエスカレート。「現場を荒廃させて何を言うか!」
代わってマイクを握った麻生さんはここでも人気者だ。「さぬきと言えば?」と投げ、「うどん」と言わせる。聴衆の反応は抜群だが、残らない。雨が降り出し、演説を切り上げた。
この演説会、まるで夏の花火大会みたいだった。蒸し暑くて、人がいっぱいで、時々歓声が上がるけど、それでおしまい。
高松市で子育て支援のNPO「わははネット」を主宰する中橋恵美子さん(39)は「2人とも具体性がなさすぎた。こんな話を聞くために、こんなしんどい思いして立っとんたんと違う、って言いたかったわ。香川の話をしても2人とも深みがなかったしねえ」と断じた。会場にいた地元の民主党の関係者は「世界と闘っているのは東京だけじゃない。地方です。あの程度の認識の人が派閥の論理で選ばれてくる」と言った。
そうは言っても、2人のうちの1人が首相になる。
沖縄県宮古島市から旅行にきたという男性(50)は「トップが代わってもどうなるのか。ただ、今は弱者が切り捨てられているのは間違いない。思い切って総選挙をした方がいい。そうでなきゃ、庶民は不在だ」。
遠くのおみこしを見るだけではなく、私もみんなも、一緒にみこしがかつげる。そんなお祭りこそ求めたい。
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ファクス03・3212・0279
毎日新聞 2007年9月19日 東京夕刊
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