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http://www.sankei.co.jp/seiji/seikyoku/070919/skk070919000.htm
海上自衛隊による洋上補給活動は、アフガニスタンではなく、イラクに展開する多国籍軍の作戦をも支援しているのではないか−。そんな疑念を増幅させたのが、米軍の早とちりだった。
米中央海軍・第5艦隊司令部が2005(平成17)年7月、海軍のホームページ(HP)にイラク作戦への各国の貢献を紹介する記事を掲載した際、誤って海自の補給活動も含めてしまったのだ。これでは、アフガニスタンでの「不朽の自由作戦」(OEF)でテロとの戦いを支援しているという日本政府の前提が崩れてしまう。政府の指摘を受けた米軍は、HPから問題の記述を慌てて削除した。
11日、バーレーン・マナマの米海軍第5艦隊司令部の将校クラブで行われた多国籍海軍幹部に対する日本人記者団のインタビュー前。多国籍海軍は冒頭で、1枚紙の報道用資料を配った。
「日本の補給艦はOEFを支援する艦船だけに給油している。海上自衛隊は『イラクの自由作戦(OIF)』を支援したことはない」
HPに誤って掲載した経緯や、日本の政界の一部にある「イラク作戦との一体化」への疑念に配慮したものだった。
海自は、OEFの海上阻止活動(OEF−MIO)を実施している多国籍海軍合同任務部隊(CTF150)だけを支援するのが目的だ。対象国と交換公文を交わし、補給前の調整でも対イラク作戦に加わらないことを確認している。
だが、江田憲司衆院議員(無所属)はテレビ番組や自らのHPで、米軍サイドの説明を「自衛隊の給油がイラク戦争に転用されている」と批判する。江田氏のほか、補給活動の継続に反対する民主党は、臨時国会での審議を通じ、政府に情報提供を迫る方針だ。
ただ、いくら交換公文を交わしたとはいえ、軍事作戦は機密のベールに包まれている。補給した多国籍軍艦船の活動海域は、「相手を信用するしかない」(防衛省筋)のが実情だ。限られた情報の提供で、野党に対しどこまで理解を得られるかは不透明だ。
テロ特措法の“本名”は実は、日本の法律の中で最長だ。法律名だけで112字ある。「テロとの戦い」という大義のために自衛隊を海外派遣する生みの苦しみが煮詰まった結果だ。
「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」
「国際連合」の文字が2度出てくるのも、海自の活動が「『米軍対アフガニスタン』ではなく、『国際社会対テロリスト』」という構図に基づくことを強調したものだ。事実、OEFには米国だけでなく、エストニアや韓国などアフガニスタン本土の作戦だけで約20カ国が参加し、死者も640人に達している。
国連安保理決議1386に基づく国際治安支援部隊(ISAF)本体には37カ国が軍を派遣、国際社会が一致して治安維持にあたっている。
だが、こうした活動の根拠法である「テロ対策特別措置法」は、政府・与党が新法案の国会提出を検討しており、失効が確実視される。
シーレーン防衛
「インド洋をテロリストの自由の海にさせてはいけない」「海自艦艇を引いて他国にそこを守ってもらい、日本だけがシーレーン(海上輸送路)を通ってぬくぬくしていて国際社会の理解が得られるのか」
高村正彦防衛相は9月3日の講演で海自のインド洋派遣の意義をこう強調した。原油の9割を中東に依存する日本にとって、中東からインド洋、マラッカ海峡を経て日本に至るシーレーンの安全は国益に直結する。
最近、派遣への理解を得るため、政府・自民党内から同様の「シーレーン防衛」発言が盛んに発せられている。だが、派遣に伴うこうした「もう一つの狙い」は今まで“封印”されてきた。テロ特措法の立法趣旨にそぐわないためだ。活動継続に対する反対派を勢いづけてしまう恐れがあったからでもある。
中東海域の安全航行という日本の国益に直結する議論が真正面から語られるようになったきっかけが、テロ特措法が危機にひんしたためというのも皮肉なめぐり合わせだ。
そもそも、テロ特措法は平成13年の9・11(米中枢同時テロ)の翌日、国連安全保障理事会が全会一致で採択した決議1368を根拠に制定されたものだ。決議は、「国際の平和と安全に対する脅威に対し、あらゆる手段を用いて戦う」ことをうたっている。
憲法の制約により、戦闘が行われていない地域や海域での多国籍軍の後方支援が目的だ。シーレーン防衛を行うために海自を派遣することが立法の趣旨ではない。
森本敏・拓殖大海外事情研究所長は「中東全体の海上輸送路の安定を強調すると、『イラク作戦もやっていた』という議論の土俵に乗ることになる。法案を通したいのであれば、多国籍軍への後方支援という法の趣旨を貫くべきだ」と語る。
旭日旗が消える
マナマ(バーレーン)の第5艦隊司令部にはペルシャ湾、アラビア海、紅海といった中東地域全体の海域を担当し、イラク作戦も担当する米中央海軍司令部、多国籍海軍司令部がある。
11日、日本人記者団の前に現れた中央海軍副司令官のスウィフト准将は、軍人らしからぬ極めて政治的な言葉を口にした。「海自が撤退しても大した影響は出ないし、燃料も何とか措置できるだろう。しかし、本当の問題は日本がいま享受している中東地域での対話の機会を失うことだ」
つまり、インド洋やアラビア海から旭日旗(自衛艦旗)が消えるダメージは、この地域における安全保障上のデメリットを日本にもたらすことを率直に語ったものだ。
防衛省幹部はいう。「有志連合への参加で日本が得た情報を提供することで、米軍からもたらされる中東海域に関する情報の質は格段にアップした。撤退してしまえば情報コミュニティーから外される」
安倍晋三首相の退陣表明翌日の13日夕、洋上補給活動の視察を終えて上陸したアラビア海北部の港の沖合には、日本に行くのだろうか、巨大な石油タンカーが航路を東に向けていた。(加納宏幸)
(2007/09/19 01:53)
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