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政治部・木原雄士(9月17日)
安倍晋三首相の突然の辞職表明からわずか2日目の14日。永田町の関心が自民党総裁選に集まる中、休会状態で閑散とした国会内の参院事務総長室を6人の民主党議員が訪れた。
6人が手にしていたのは年金保険料の使途を給付に限定する「年金保険料流用禁止法案」。独自法案をまず野党が過半数を握る参院に提出・可決させ、衆院で与党に賛否の判断を迫る「参院先議」作戦に早くも動き出したのだった。月内には1円以上の支出に領収書添付を義務付ける政治資金規正法改正案も提出する方針。有権者の関心が高く、与党も反対しにくい法案を連発し、次期内閣を揺さぶろうというわけだ。
参院先議のタマとして用意している法案は10本前後にのぼる。後継首相選びで身動きがとれない与党とは対照的に、民主執行部の意気は上がる一方だ。輿石東参院議員会長は「政局よりも政策で勝負する」と宣言。マニフェスト(政権公約)の政策を次々と法案化する筋書きを描く。
執行部を突き動かすのは、参院での「数の論理」に裏打ちされた自信である。「首相が交代しても衆参のねじれは変わらない」。小沢一郎代表が13日、中国要人の賈慶林全国政治協商会議主席にこう豪語したように、少なくとも次の参院選がある3年後まで、野党が参院の主導権を抑える構図が続く。
ところが、ここにきて当初の勢いが失速する兆しが見えている。今国会での提出法案は結局、3、4本程度に絞り込む見通し。用意している法案の半分以下しか使わないかもしれない、というのだ。
なぜか。参院先議では提出者となる参院議員が衆院での答弁も担当する。参院民主は115名と最大会派を誇るが、うち3分の1は今回の参院選で当選したばかりの新人議員。参院幹部の1人は「答弁者を確保するのが難しい」と頭を抱える。
「参院は新しい人は多いが人材が足りないから……」。10日、衆院の代議士会で山岡賢次国会対策委員長が思わず口を滑らせた。即座に「いまのは取り消し、取り消し」と発言を訂正したものの、本音だけに出席者から失笑がこぼれた。
常任委員長ポストを巡るゴタゴタも尾を引きずっている。配分方式を巡って自民と対立。土壇場で論戦の舞台となる花形の予算委員長ポストを自民に譲り、党内から反発の声があがった。簗瀬進参院国対委員長は「他の重要ポストを全部とった。作戦通り」と強弁するが、参院選直後の8月の臨時国会で「議院運営委員長は民主、予算委員長は自民」という密約をかわしたため、逃げられなくなった、との説がもっぱらだ。
真相はいまだに闇の中だが、党内から不満が漏れるのは、参院民主がいまだに与党との協調を重視する「55年体制」を引きずっていると見られがちだからだ。参院民主がどこまで自民との対決モードに転じられるかどうか、正念場はこれからだ。
人材不足と55年体制。参院民主は新しい問題と古い問題を同時に抱える。自民党総裁選で優位に立つ福田康夫元官房長官は慎重居士として知られ、民主にとっても手ごわい相手だ。アジア外交の重視や地方への配慮など、民主の主張と似る面も多い。調整型の政治手法で「民主案丸のみ」などのからめ手を使ってくる可能性もある。
後継首相が選ばれる今月下旬、民主と自民による激しい国会論戦が始まる。足を引っ張りかねない2つの悩みを民主はどこまで克服できるのか。その結果が民主の勢いの持続力を左右するだろう。
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