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http://mainichi.jp/select/opinion/maki/news/20071009dde012070060000c.html
実は……安倍晋三前首相に「誠実さ」を感じていた。彼が父・安倍晋太郎外相の秘書官をしていたころ、若干の交流があった。頼み事をすると「できる」「できない」をハッキリ言う。そのころは「窮屈だが、とても誠実な若い官吏」という感じだった。
ところが、彼が責任ある立場になり、記者会見する姿を見て、何となく不安になった。もちろん「誠実さ」に欠けたというのではない。ただ「口の回り」に違和感を覚えるのだ。僕が東京生まれで「べらんめえ口調」で育ったので、そう思うのかもしれないが、何か、安倍さんの言葉遣いに“子供っぽい響き”を感じてならない。
演説の語尾がいつも「〜でごじゃいます」と聞こえる。「〜で、ございます」と言っているのに。なぜだろう。
やっと分かった。安倍さんは秘書官の時より多弁になった。時間を気にするから早口になる。そこで「〜でごじゃいます」になる。早口に気づき、急にポツン、ポツンと切るから「スムーズな流れ」にならない。だから、僕は不安を感じる。
今、ちょっと不安に感じているのが舛添要一さんである。政治家になる前まで一緒に競馬場へ行った。お母上の葬儀に参列させてもらったこともあるから、まあ、親しい間柄だった。でも、最近、彼がテレビに登場すると、チャンネルを変えたい衝動にかられる。
「バカにつける薬はない」とまでさげすんだ安倍さんの改造内閣に入閣する彼に、かなり違和感を覚えていたが、最近はまるで「おかっぴき」ではないか。
社会保険庁職員の年金保険料の着服。とても許されることではない。「牢屋(ろうや)に入ってもらう」という言葉は的確な表現だが、その後がどうもいただけない。「市町村は(社保庁よりも)もっと信用ならない」と言ってみたり、抗議した市長さんに「小人のざれ言に付き合う暇はない」と挑発する。安倍さんと違って「立て板に水」。でも「横領額を弁償して解雇されたやつ」まで牢屋に入れたら満員だ。人気取りと見られても仕方がない。年金問題の核心はそんなことではないはずだ。
大マスコミの皆様、我が友人・舛添さんのお尻を追っかけないでください。サービス精神で、彼はまたまた「見出しになる言葉」を立て板に水のようにしゃべるでしょう。でも、その度にアチコチで“子供のけんか”が起こり、年金改革は遅れてしまうのですから。(専門編集委員)
毎日新聞 2007年10月9日 東京夕刊
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