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2007年09月12日
仙波巡査部長、おめでとう
今日のブログのテーマはこれしかない。この事だけを書く。
愛媛県松山地裁は9月11日、愛媛県警巡査部長の仙波敏郎さん(58)の訴えを認めた。その訴えを全面的に認める判決を下した。画期的な出来事だ。
今から二年半前、県警の裏金を内部告発した仙波巡査部長に対し、愛媛県警は組織をあげて仙波部長を排除、疎外した。その措置に対し、仙波さんは県警を相手取って損害賠償訴訟を求めて来た。その判決が下されたのだ。
高橋正裁判長は、「配置換は造反への報復で、社会通念上、著しく妥当性を欠き違法」と全面的に原告の主張を認め、満額の損害賠償支払いを命じた。あわせて、程度を超えた口止め工作と、それに従わなかった為の懲罰人事について、当時の県警本部長の関与があった事を認定した。国家権力の組織的犯罪を認めた画期的判決である。この事はいくら強調してもしすぎることはない。この判決をきっかけに世の中が少しずつ変わって行く事を期待したい。
仙波さんの告発を知ったのは、私が外務省を去って一年半ほどたっていた時だった。その時の私は、権力に抗って声をあげることの厳しさを身をもって感じ、孤立無援の心細さの只中にあった。だから同様の境遇にある人たちのニュースに敏感であった。
雪印食品の不正を告発して排斥された冷凍会社社長、トラック運送業界の不正を告発して30年もの間閑職に放置され続けた会社員、政治的介入で番組を歪められた事を告発したNHK職員、耐震偽装を告発したために逮捕された社長など、いずれも一時的には脚光を浴び、注目はされても、その後は長く、厳しい人生を歩む事になる。
一時的な正義感のために告発に走る事は「割りに合わない」ことなのだ。だから皆口をつぐむのだ。見て見ぬ振りをするのだ。その常識に抗う愚かな者、変わり者、組織を乱す者のみが告発者となるのだ。
しかし誰かが不正を告発しなければならない。そうでなければ不正は大きな顔をしてまかり通る。結果的に皆が被害を蒙る。告発者こそ正義の実現者、先導者なのだ。
数ある告発の中でも、仙波さんの告発はとりわけ凄いものだ。なにしろ国家権力の中枢である警察の組織犯罪を、たった一人で正面から告発したのだ。官僚だった私は、それが如何に大それた事であるかよくわかる。国家権力の圧力の大きさを知っている。
判決が言い渡された瞬間、仙波巡査部長の頬に一筋の涙が流れたという(9月12日毎日新聞)。それを読んだ時、思わず私も涙ぐんだ。彼の心境が、まるで自分の事のように、痛いほどわかるのだ。
経験した事のある人はわかるに違いない。人間だれでも自分と向かい合ってギリギリの生き方をしてきた時、その結果がどうであれ、それが終わった瞬間にすべてから解放される。その時自然に涙がこみ上げてくる。どんなに強そうに見えている人であっても、その強さを持ち続けるために人知れず無理をしているのだ。自分に誠実であるほど負担も大きく、重い。その重圧から解放された時、涙があふれ出る。その涙こそ真実の涙である。
仙波さん、おめでとう。支えてくれた人たちに感謝し、共に喜びをかみしめて欲しい。有頂天になることなく、今こそ言動を自重して欲しい。定年までの残りの二年を無事に過ごして欲しい。そして全国に存在する不遇の内部告発者の無念に思いを馳せて、彼らの英雄となり、彼らの心の支えとなってもらいたい。
無事定年になってすべてから解放された時、杯を重ねて人生を語り合おう。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/09/12/
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