★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK41 > 926.html ★阿修羅♪ |
安倍晋三首相の10日の所信表明演説は、まるで自らの反省文のようだった。目立ったのは参院選惨敗の反省と続投への釈明。「安倍カラー」は影を潜め、個別政策でも海上自衛隊の給油活動継続に理解を求めたほかは目玉がなかった。9日には、給油活動継続の法整備に失敗した場合は「退陣」する意向まで示したものの、力強さに欠け政権の停滞感が際立った。【佐藤千矢子】
冒頭、首相は参院選の結果を受け「退陣すべきとの意見もあることは十分承知している」と述べた。首相周辺は「冒頭におわびを入れるなんて前代未聞」と話すが、実は「首相が一番こだわった」(政府筋)という。
だが、低姿勢で民主党の議員席にたびたび目をやりながら「野党の皆様とも建設的な議論を深める」と呼びかける首相に、野党から「あなたじゃできない」「辞めてから始めろ」と激しいヤジが飛んだ。衆院に続く参院での演説では、来年7月の北海道洞爺湖サミットのくだりを読み飛ばすハプニングもあった。
選挙に負けたのに、なぜ続投するのか。首相はこの疑問に「戦後レジームからの脱却」という「改革」実行のためと応えた。しかし、皮肉にも参院選惨敗でその「改革」路線は大きく修正を迫られている。
昨年の所信表明では「美しい国」を連呼し、人口減少社会にあってもイノベーション(技術革新)とオープン(市場などの開放)による経済成長を目指すという「新経済成長戦略」を訴えたが、今回はそうした強気の姿勢はなかった。
売り物だった新経済成長戦略は表現を弱めたうえで後半に回され、代わって強調されたのが格差是正や地方配慮だった。
消費税増税を含む税制の抜本改革も「本年秋以降本格的な議論を」と述べるにとどめ、「07年度をめど」としていた結論時期は先送り。最重視していた「集団的自衛権行使の研究」も消えた。
理念、経済・財政政策、安全保障政策のいずれでも「安倍カラー」がほぼ消滅した内容だった。
こうした演説に、首相に批判的な自民党谷垣派幹部は「これで一つでも政策が実現できるのか」と皮肉交じりに指摘。首相に近い議員も「ここまで安倍カラーをなくして、何のために続投したのか」と不満を漏らした。
一方、民主党の鳩山由紀夫幹事長は「反省と言いながら、政策の基本的な方向は間違っていないと言っている。国民に、一体何を考えているんだという気持ちにさせると思う」と批判した。
◇改革の決意は評価−−竹中平蔵・慶応大教授
これまでは各省庁の意見をみな取り入れて演説が長かったが、今回は短く、自分の言葉で明瞭(めいりょう)に述べていた。ただ、参院第1党の民主党に対し、もっと強く政策協議を呼びかけるべきだった。
「改革を止めない」と明確に打ち出したことは良かったが、「改革の影に光をあてる」というのはおかしい。「影」の原因は改革ではなく、グローバリゼーション化だからだ。影をなくすにはさらなる改革が必要だが、そこを打ち出せなかった。このため「地方への配慮」などとして公共事業の増加など歳出圧力が強まることが予想される。
「どうしても改革しなければならないから続投する」との決意は評価するので、改革を実行してほしい。
◇「退陣表明」で帳消し−−田中秀征・元経企庁長官
所信表明に強い関心があったが、前日のシドニーでの「退陣表明」のような首相の発言で吹き飛んだ。これで内閣総辞職への流れが加速し、止めがたいものになるからだ。
演説は短く総花的だが、「改革の影の部分に光を当てる」と参院選の惨敗を踏まえて軌道修正する一方、「ばらまきや護送船団といわれたかつての政治手法に回帰することは絶対に許されません」と改めて改革への熱意も示した。憲法改正や「美しい国」も大きく後退し、退陣を示唆する発言さえなければ一定の評価を得た演説であった。
しかし、(インド洋での)給油継続に職を賭して取り組むという発言は、すべての演説内容を無に帰してしまった。政治判断が未熟と言われても仕方がない。
毎日新聞 2007年9月11日 東京朝刊
安倍首相:所信表明演説 「安倍色」封印、反省文 身内からも不満の声−政治:MSN毎日インタラクティブ
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/archive/news/2007/09/11/20070911ddm005010024000c.html
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK41掲示板
フォローアップ: