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「しんぶん赤旗」9月11日付9面(文化欄)から直接貼り付け。
自民大敗で変化する改憲をめぐる情勢/スケジュールに大きな狂い/テロ特措法が秋の焦点に/渡辺治一橋大教授にきく
いよいよ国会が開会しました。参院選の結果、憲法改悪をめぐる動きは今後どうなるのか。九条の会事務局の渡辺治一橋大学教授に聞きました。
参院選の自民大敗の原因は二つあります。ひとつは「構造改革」によって切り捨てられた地方の農業・地場産業層と、逆に「構造改革」の一層の推進を求める大都市部の大企業の中間管理職層、ホワイトカラー層の両方が―実はこの二つが発足時の安倍政権の支持基盤だったのです―安倍政権にノーを突きつけたことです。
民主抱き込みに大きなダメージ
もう一つは、教育基本法改悪、改憲手続き法強行に現れた安倍政権の改憲・タカ派路線に対する国民の警戒心が表明されたことです。この大敗で、憲法をめぐる情勢も大きく変化しました。
第一は明文改憲のスケジュールに大きな狂いが生じたことです。
明文改憲に必要な衆参の三分の二の賛成を得るためには、民主党を抱き込まなければいけません。ところが今回の民主党は、改憲間題では逃げましたが、テロ対策特別措置法の延長反対、イラクの自衛隊の撤兵など反軍事大国の路線をうち出して躍進しています。
共同通信の調査によると、今回当選した民主党議員の68.5%が九条改憲に反対です。注目すべき数字です。民主党全体は改憲の党ですが、今回の当選者だけ取ってみると、選挙の雰囲気を象徴しています。
とくに、通常国会で安倍自民党が改憲手続き法の採決を強行したことからいっても、民主党としても、おいそれと明文改憲の協議にむけて自民党の誘いに乗れない状況です。設置が予定されている参院憲法蕃査会では会長は民主党議員がなるからには一層国民の声を無視できません。
安倍首相は決して明文改憲をあきらめたわけではありませんが、憲法審査会を使いながら、改憲手続き法の三年後の施行を待って一気に民主党も巻きこんで改憲案を出すという思惑に大きなダメージを受けたのは明らかです。
「恒久派兵法」で解釈改憲を追求
情勢の二番目の特徴ですが、明文改憲がすぐには難しいとなると安倍政権としては解釈改憲を前面に出さざるを得ないことです。もともと安倍政権は明文改憲と同時に解釈改憲をも並行して追求してきました。
集団的自衛権の解釈見直しのため「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二前駐米大使)を四月に立ち上げたのです。その答申がこの秋に出るのを受けて、安倍政権は来年の通常国会で集団的自衛権を容認し米軍の後方支援を強化する安保基本法、垣久派兵法をたくらんでいました。ところがこちらの方も与党の大敗北で大きな困難を抱えざるを得なくなっています。
一つは公明党が非常に消極的になっています。背景には安借首相の改憲姿勢が選挙敗北の原因ではないかという判断があります。もう一つは民主党です。先の共同通信のアンケートで集団的自衛権を認めるべきだという民主党の当選者は24.5%しかいません。民主党は従来から、国連決議もないままにアメリカと一緒に戦争することはさすがにできない、集団的自衛権の行使は認められないという見解を出しています。
こうなると解釈改憲の方もなかなか難しい。秋に懇談会報告が出てもすぐの具体化は無理じゃないかと思います。
アメリカ追随の路線にも黄信号
三番目に重要なのは、解釈改憲どころか、アメリカ追随の自衛隊の海外派兵、後方支援にも黄色信号がともっていることです。今度の参院選で民主党は、共産党や社民党と並んでテロ特措法の延長だけでなく、自衛隊のイラク派兵、米軍再編特措法にも反対したからです。
とくにテロ対策特措法の延長を拒否できれば、日本の軍事大国化をこれ以上すすめない、改憲を後退させる第一歩となるだけに、この秋、非常に大きな争点になります。自民党はテロ対策特措法を修正してでも延長しようとするでしょう。ただ民主党も延長反対の旗を掲げた手前、そう簡単にウンとは言えない。
そこで、民主党はテロ対策特措法延長には反対するかわりに、国会の蕃議なしにどんどん自衛隊が海外にいけるようにする垣久派兵法を作り、アフガン派兵を再開する道を追求する危険性があります。実は、この垣久派兵法の道こそ、安倍政権がねらっている解釈改憲の路線そのものなのです。安倍政権は、この窮地を、垣久派兵法に民主党をひきずりこむ形で一気に逆転することをねらっています。財界、アメリカも民主党への圧カを必死で強化するでしょう。こうした方向を許すかどうかは、改憲と軍事大国に反対する運動にかかっています。
世論調査(「朝日」八月二十九日付)ではテロ特措法延長に反対の世論が非常に強いわけです。この声を顕在化させることができれば民主党も修正や代替策に簡単に乗れません。
国民の運動が決定的に重要
この秋が民主党にとって正念場になります。国民の側をむき続け、共産党と歩調を合わせるのか、あるいは財界・アメリカの圧カに屈して第二保守党としての「自覚」に立ち戻り、国民への公約を裏切るのかという正念場です。
それを決めるのは民主党が国民の声をどれだけ受けとめるかです。そういう意味でこの秋の国民の運動が決定的です。テロ特措法延長に反対しインド洋、イラクから自衛隊を撤兵させる、明文改憲も解釈改憲も許さないという声を大きく出せるかどうかが非常に大事になってくると思います。
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