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白川勝彦:典型的な政治的発言!? = 永田町徒然草
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 9 月 11 日 07:23:17: mY9T/8MdR98ug

永田町徒然草 No.546

私は昨日朝、「それにしても、安倍首相は外遊先のオーストラリアで、おかしなことをいった。テレビでみる安倍首相の表情は、虚ろそのものである。言葉を並べているだけである」と書いた。<中略> 安倍内閣は、これからドンドン追い込まれていく。そんなことは当たり前のことなのだが、マスコミはさも重大事のように報道している」と書いた。昨日は、安倍首相の“職責を賭して”発言が大きく報道されていた

総理大臣がある特定の法律案に“職責を賭す”と発言した場合、“普通”はその法律案が国会を通らない場合には、総辞職か解散総選挙を意味する。しかし、安倍首相には、この“普通”は通用しないと思う。参議院選挙であれだけ大敗を喫したのに、「私の主張は基本的に支持されている」とのたまう総理大臣なのだから(笑)。私は昨日の発言の意味は、参議院でテロ特措法延長法案が否決されても、憲法59条2項のいわゆる“3分の2条項”を使って成立させますよと表明したにすぎないと考えている。

安倍首相の政治的思惑は、こういうことであろう。すなわち、“職責を賭ける”という非常な決意をしていろいろな批判はあるにしろ3分の2条項を使ってテロ特措法延長法案を成立させて、国際的公約=わが国の国際的地位を守った。“安倍首相も、それなりにやるではないか”という評価がそれなりに出てくるであろう。それを反転攻勢の足がかりにしたい。まあ、こういうことであろう。だから、安倍首相の“職責を賭ける”などという言葉に翻弄されてはならないということである。

安倍首相が“職責を賭ける”という刺激チックの用語を用いたのは、多分小沢民主党代表の例の「野党が過半数をとれなかった場合には、政界から引退する」という発言を参考にしたものであろう。安倍首相は、小沢氏のこの発言のために参議院選挙は負けてしまったのだとでも考えているのだろうか。もしそうだとしたら、安倍首相は参議院選挙の徹底的総括をしていないということになる。この辺が、安倍首相の軽いといわれる所以である

政治家は、いわゆる“政治的発言”をする動物である。政治的発言とは、政治的思惑や政治的打算や政治的効果を狙った発言のことである。小沢氏の“政界引退”発言も安倍首相の今回の“職責を賭す”発言も、まさに典型的な政治的発言である。小沢氏が“政界引退”発言をしたのは、参議院選挙の公示日の数日前であった。その時点では、少なくとも選挙が分かっている者の間では、選挙の結果、野党が過半数を占める議席を獲得できることはほとんど確実であった。

小沢発言は、正確には「非改選議席を含めて、野党が過半数を占める議席を獲得できないようでは、もう当分の間政権交代などできないでしょう。そういう国会にいてもしょうがない」という趣旨であった。改選議席の過半数は61議席であるが、非改選議席を含めての過半数となると野党の非改選議席が63議席あったので、実際は58議席獲得すれば小沢氏の目標はクリアできたのである。だから、世間をアッといわせた“政界引退発言”は、選挙を知っている者にはかなり大甘な目標だったのであるが、その政治的効果は大きかった

それでも予想は予想であり、実際の選挙がそうなるかはやってみなければ最終的結果は分からない。選挙情勢を一変させることも時にはある。1980年(昭和55年)の解散総選挙では大平正芳首相の死という大きな代償を払ったのだが、自民党は大勝した。選挙結果に自らの進退を賭けた小沢代表の“政界引退”発言には、政治的発言特有の危険性があることはあったのである。それだけに政治的発言特有の効果もあった。小沢代表の“過半数が取れなければ、政界を引退する”という発言で、多分5〜7議席くらいの増大効果があったと私はみている。

それに比べ、今回の安倍首相の“職責を賭す”発言には、何らの危険性も伴わない。参議院でテロ特措法延長法案が否決された場合、3分の2条項を使ってこの法律を成立させることは、確実にできるのである。世論の非難や批判があったとしても、参議院選挙の結果を公然と無視する安倍首相にとって、平気の平左・屁の河童であろう。現在のわが国の総理大臣は、そういう人なのである。このことを私たちは片時も忘れてはならない。

法律家としていうと、ひとつだけ問題がある。憲法59条4項の「参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取った後、国会休会中の期間を除いて60日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる」という規定である。民主党を中心とした野党が徹底的審議のために時間を費やした場合、この条項によって3分の2条項を発動できるのである。今回の臨時国会の会期は60日間であるが、臨時国会の会期は2回延長できる。だから引き伸ばし戦術は役に立たない

従って、野党は衆議院においても参議院においても、テロ対策特別措置法の問題点を徹底的に議論し、その不当性を国民に明らかにしなければならない。この議論は意外に大変だと思う。憲法9条やわが国の外交のあり方を全面的に問い直す議論をしなければならない。民主党が本気で政権交代を考えているならば、これらの議論を通じて民主党を中心とする野党政権ならばどのような外交防衛政策をやっていくのかを国民に明らかにするよい機会である。私がよくいうことだが、政権交代一般に良いも悪いもない。政権交代をすることにより、現政権のどこをどのように変えるのかということを国民に明確に示さないと政権交代に対する国民の本当の期待はでてこない。野党議員の奮闘を期待する。

それでは、また明日。

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