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2007/09/08
関連記事:植草裁判 最終意見陳述で無実訴える
元大学教授の植草一秀氏著「知られざる真実 拘留地にて」(イプシロン出版企画)を読んだ。
06年9月、電車内で痴漢行為をしたとして逮捕・起訴された植草氏は、無実を訴え、現在裁判で闘っている。植草氏は本書を当時拘留されていた東京拘置所で書いたそうだ。多くの制約や条件があり、データを充分示せなかったため、その点を保釈後に補足したとの記述があるが、一読して伝わってくるのは、論理の明快さと、その主張に一貫性があることである。
植草氏は自らにかけられた疑惑に対し、「天に誓い、疑いをかけられている罪を犯していない」と本書の冒頭で明言している。また、「痴漢は卑劣な犯罪」であり、「痴漢犯罪を憎悪していた」とも語っている。そして、「私の言葉を信じてもらえるか、読者に委ねられる」と述べ、「本書で私は真実をありのままに記述した。私の心に一点の翳りもない」と断言している。
今回の事件に遭遇する直前まで植草氏は、「直言」というサイトに「失われた5年−小泉政権・負の総決算」という記事を書いていた。筆者は「直言」の愛読者だったので、植草氏の記事についても毎回欠かさず読んでいた。最後となった06年9月6日掲載の記事には、小泉政権の5年半の期間、日本経済は最悪の状態に陥った、と植草氏は小泉政権の経済政策を厳しく批判していた。
小泉政権時代、日経平均株価は7,600円まで暴落した。植草氏は、国民が本来直面せずにすんだ苦しみを与えたと述べ、失業、倒産、自殺などの悲劇が国民に襲い掛かった一方で、日本の優良資産を破格の安値で外資が大量取得したことに言及し、小泉政権の経済政策の失敗による「人災」であるとして糾弾していた。
本書は、第一章「偽装」、第二章「炎」、第三章「不撓不屈」と三章からなり、巻末資料として「真実」と題する、植草氏が遭遇した事件の経緯について詳細に述べた文章が載っている。筆者がもっとも強い関心を持って読んだのは、本書の眼目ともいうべき、第一章「偽装」の中にある、りそな銀行が国有化される過程で行われた処理の経緯である。
植草氏によると、それまで銀行には5年分の「繰延税金資産」計上が認められてきたそうである。しかし、りそな銀行だけがなぜか3年計上しか認められず、債務超過に陥った。そのままだと破綻するはずだったりそな銀行に、政府は預金保険法第102条第1項第1措置の「抜け穴規定」を適用し、税金を投入してりそな銀行を救済した。
問題は、なぜ、それまで認められていた5年計上が、りそな銀行だけ3年しか認められなかったのかということである。「繰延税金資産5年計上」を前提に3月末を迎えたりそな銀行に対し、監査法人が3年計上を伝えたのは5月6日だった。この時期に指摘を受けても手立てを講じることができないことから、植草氏は「謀略」の可能性を指摘している。りそなと同じような程度の財務症状の銀行は複数ある中で、なぜりそなが標的とされたのか。その理由についても、植草氏は言及している。
りそな銀行については、06年12月、朝日新聞や東京新聞などが、りそな銀行が3年間で自民党への融資額が10倍となったことを伝えていたことが記憶に新しいが、国有化された銀行が一政党に私物化されているような状況は大きな問題であるにもかかわらず、なぜかこの問題について追及する記事がその後書かれることはなく、議論にもなっていないことに、疑問を感じた国民も多いのではないだろうか。
植草氏は、りそな処理に関する巨大なインサイダー取引疑惑の存在について、テレビで何度も指摘していたそうだ。本書で植草氏は、今回の事件とこうした発言の関連性については一言も言及していない。ただ、事実をありのままに述べているだけである。そこからなにを汲み取るか、読者の想像力に委ねている。
植草氏は、04年の「手鏡事件」の真相について記述した原稿300枚を書き終え、小泉政権の総括と新政権の政策課題を経済政策論として出版する予定だったそうだ。事件に遭遇したことによって予定が白紙となり、新規に書き下したものが本書である、と述べている。
前回の事件(エスカレーターで女子高生のスカートの下を手鏡で覗いたとして警察官に逮捕された事件)については、植草氏を横浜から品川まで尾行してきた警察官の目撃証言が二転三転したことや、実際に現場で実況見分した人たちによって、警察官の主張の信憑性に疑いが出ていることや、監視カメラに映像が残っていないことなど、えん罪の可能性が強いことを多くの人が指摘している。植草さんを支援するインターネットのサイトでは、今回の事件が起きたときも真っ先にえん罪の可能性を指摘し、不当な長期拘留に抗議の声を挙げた人が数多くいた。
佐藤優氏の件で「国策捜査」という言葉が知れ渡るようになったが、植草氏の事件も「国策捜査」であると指摘する声がある。これらのほか鈴木宗男氏、辻元清美氏、西村慎吾氏など、国策捜査と言われている事件に共通するのは、メディアによる異常ともいえるような情報操作だ。
植草氏の場合も、まだ事実が明らかになっていない段階で、一方的に犯罪者と決め付け、植草氏を貶めるような報道が連日のようにテレビで報じられた。本人が言ってもいないことを言ったように伝え、なんの裏付けもない不確かな情報を、あたかも事実であるかのように報じていた。報道番組やワイドショーなどの司会者やコメンテーターと称する出演者は、一般の視聴者の代弁者のような口調で植村氏を誹謗中傷するような発言を執拗に繰り返していた。
裁判が始まってからも、公判で審理された内容を正確に伝えず、故意に歪曲し、植草氏を貶めるような記事を書いていた一部のメディアもあった。特に、植草氏の無実を証言した、同じ電車に乗り合わせた目撃証人に対し、犯行があったとされる時間帯のあと、ウトウトしたという目撃証人の言葉をとらえ、「ウトウトしていて(植草氏が犯行行為に及んだか否か)見ていなかった」と断じたことは、著しく事実に反していると言わざるを得ない。
植草氏は「偽装は偽りがさらされたときにはじめて偽装だと知らされる。偽装が露見するまで、偽装が本物として扱われる。偽装が怖いのはこの点である」と本書で述べている。
小泉政権の行った経済政策の実態が徐々に明らかになり、小泉首相の唱えた「改革」がだれのためのものであったのか、多くの国民が気づき始めている。自民党惨敗という、参院で示された民意について、閣僚の不祥事や年金問題や政治とカネに対する処理に問題があったこと、また、「自民党にお灸をすえた」などととらえている意見もあるが、大企業や一部の富裕層を優遇する一方で、地方を切り捨て、弱者を切り捨てる小泉政権の政策を継承した安倍政権に対して国民は「ノー」を突きつけたのである。
政治は弱い立場の人たちのためにある、との信念のもと、弱者切り捨ての小泉政権の経済政策を厳しく批判してきた植草氏がなぜ事件に遭遇したのか、本書を読めばその答えは得られるはずである。「偽装」を見過ごせば、ふたたび同じことが繰りかえされる。植草氏が本書で訴えているように、メディアの情報操作に惑わされず、1人ひとりが自分の頭で考えが、判断することが「偽装」を見抜く大きな手立てとなることを、いまこそ私たちは心して肝に銘じなければならない。
なお、巻末資料の「真実」には、今回の事件や04年4月の手鏡事件に加え、98年の事件についても、その経緯について真相を明らかにしている。
1人で多くの人が本書を読み、不当な理不尽と戦いながら、なおも勇気をもって発言を続ける植草氏の声に耳を傾けてくれることを願っている。
(ひらのゆきこ)
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