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クローズアップ2007:日朝正常化作業部会 対話演出、成果なし
モンゴルで5、6両日開かれた6カ国協議の日朝国交正常化作業部会は「過去の清算」と「拉致問題」を主テーマに協議が行われ、けんか腰の応酬に終わった3月の前回協議とは異なる様相となった。米国からテロ支援国家指定解除を引き出すには、日朝協議にも前向きな姿を見せる必要がある北朝鮮と、安倍晋三首相が主導した強硬路線が手詰まりで軌道修正を模索せざるを得ない日本の事情が一致したためだ。だが、今回も拉致問題を「解決済み」とする北朝鮮側の姿勢は変わらず、日本側にとっては実質成果抜きの苦しい対話演出となった。【ウランバートル中澤雄大、西岡省二】
◇米を意識、態度改善−−北朝鮮
「可能なら、この作業部会を今後、頻繁に開催することにした」。6日夕、日程を終え、モンゴル外務省で記者会見した金哲虎(キムチョルホ)外務省副局長は作業部会の「成果」を淡々と語った。金副局長の会見の中には従来にない「誠実」「信頼」というキーワードがちりばめられていた。
北朝鮮は2日間、対話ムードを積極的に打ち出した。3月の作業部会(ハノイ)では5人だった代表団を9人にほぼ倍増させ、昨年2月の日朝包括並行協議で拉致問題を担当した対日外交の専門家、金副局長を次席代表格に加えた。わずか3時間あまりで事実上、席を立った前回とは一転、真摯(しんし)に対応する姿勢を演出した。
その背景には、6カ国協議の進展がある。1、2の両日にジュネーブで開かれた米朝国交正常化作業部会で、核廃棄へ向けた「第2段階措置」である(1)核施設の無能力化(2)すべての核計画の完全申告−−の年内履行で米国側と合意、米朝急接近を強くアピールした。
ヒル米国務次官補が北朝鮮に「対日関係改善も重要だ」と伝えたとも言われる。北朝鮮が米国の意向を一定程度受け入れ、「日本との対話」姿勢を示す必要もあったようだ。金副局長が会見で、日航機「よど号」乗っ取り事件メンバーの扱いについて「協力の意思」をことさら強調したのも、それを意識したものとみられる。
北朝鮮は「日本の経済制裁がボディーブローのように効いている」(北朝鮮経済関係者)ともされ、日本との早期関係改善を望んでいるのは確かだ。一方で「日本以外との関係が良好だから、敵対的な安倍政権と直ちに対話する必要もない」(同)との見方もある。
さらに、今回の作業部会では「拉致問題は既に解決済み」という表現を従来より控えたものの、対日政策の原則的立場を変化させたわけでもない。対立を避け、実質論議を先送りしながら、安倍政権の方針に変化があるかを見極めようとしているようだ。
◇孤立…戦術に変化−−日本
「北朝鮮の主張はそんなに変わっていないが、懸案事項の解決に向け、誠実に協議することを確認できた」。日本の美根慶樹・日朝国交正常化交渉担当大使は協議終了後、記者団に「一定の成果」を強調した。
拉致問題を最優先してきた日本は今回、あえて北朝鮮の最大関心事である「過去の清算」協議の先行を認めるなど、随所で北朝鮮への配慮を見せた。初日の5日、北朝鮮代表団を急きょ日本大使館に招き夕食会を開いたのもその一つ。宋日昊(ソンイルホ)・日朝国交正常化交渉担当大使が日本語で自らの外交歴を語るなど、打ち解けたムードだったという。
背景には、強硬姿勢だけでは北朝鮮を動かすことができず、日本の孤立化が進んでいる事情がある。融和路線に転じた米政権は、北朝鮮のテロ支援国家指定解除に向けて動き出しており、日本が目指した国際社会による「北朝鮮包囲網」をテコにした拉致問題解決は行き詰まっている。
さらに安倍首相自身、内閣改造で政権浮揚を狙ったものの、閣僚らの相次ぐ問題発覚で政権維持すら難しさを増している。北朝鮮への強硬姿勢が「安倍人気」を支える構図は大きく変化したとはいえ、「拉致問題で一定の成果を上げなければ、政権はますます袋小路に陥る」(政府関係者)というのが現実だ。
そんな足元を見透かしたように、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は機関紙で「日本側に変化が垣間見られる。従来の政策的基調をこれ以上維持するのが難しくなっている」と報じた。今回、日本が見せた「変化」は問題解決に向けた新たなアプローチとも言えそうだ。
ただし、今回も実質的な成果には至らず、首相は首相官邸で記者団に「拉致問題が前進しなければ、ただ話し合っていても成果とは言えない」と語った。強硬路線では立ち行かず、柔軟路線も簡単に通じそうもない中で、安倍政権の戦略はなお揺れ動きそうだ。
◇よど号犯協議提案、テロ国家指定解除向け布石
よど号グループは、以前から日本帰国の意思を表明してきた。北朝鮮側も帰国に反対しない立場を明らかにしており、帰国のための日本政府とメンバーの直接協議を求めてきた経緯がある。
帰国すれば警視庁が70年に起きたハイジャック事件で逮捕することが確実な情勢だが、グループが日本政府との協議を条件とする背景には、二つの理由があるとされる。北朝鮮当局の保護下で比較的恵まれた生活を送ってきたメンバーらが、日本政府から何らかの譲歩を引き出し北朝鮮に“恩返し”することと、「政治犯としてのプライド」から逮捕・裁判の過程で自分たちに有利な状況を作ることだ。
北朝鮮による「協議場所提供の用意」表明には、北朝鮮が日本側から譲歩を引き出す狙いがあることは確実だ。対米関係においても、彼らを帰国させることでテロ支援国家指定解除への環境を整えることもできる。
日本政府はこれまで一貫してグループとの協議に応じない姿勢を貫いており、今回も変えないとみられる。
毎日新聞 2007年9月7日 東京朝刊
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