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総理大臣というのは、日本の政治の心棒である。心棒がキッチとしていないとわが国の政治全般がグラグラしてくる。人心一新と称して、安倍首相は党・内閣の改造をしたが、新しく誕生した安倍内閣がいったい何をしたいのかまったく分からない。そんな中で、“オイオイ、これは何じゃいな”という記事が9月5日付の『読売新聞』一面に載っていた。
中学生 武道必修に
――伝統重視
中央教育審議会の専門部会は4日、今年度内にも改定を予定している学習指導要領で、中学校の保健体育の授業の中で、武道とダンスを男女とも必修とする案をまとめた。幅広い競技を授業で考え、子供たちに生涯楽しめる運動を見つけさせるためで、武道には礼儀作法を身につけさせる狙いもある。
武道は柔道や剣道、相撲などで、もともと「主に男子に履修させることと定められていた。一方、ダンスは主に女子が学んでいた。1993年度からは武道、ダンスとも男女が自由に選択できるようになり、一年生は武道かダンスから一つ、2、3年生では武道、ダンス、球技の中から二つを選ぶことになっている。ところが、最近は授業にヒップホップダンスなどを取り入れる学校が増え、相対的に武道の人気が低くなっているという指摘が出ていた。
中教審は、昨年12月に改正された教育基本法で、教育目標に「伝統と文化の重視」が掲げられていることから、「武道は日本の伝統や文化を知るために役立つ」と判断。1、2年時に水泳や陸上競技、ダンスなどとともに教えることにした。
教育基本法の改正は、安倍首相が総理大臣に就任してまず意欲をもってやったことである。教育基本法の改正は、戦後簡単にはできなかった。それを郵政解散選挙という詐術を使って獲得した化け物みたいな議席にものをいわせて、安倍首相はいとも簡単に改正した。安倍首相のいうところの“戦後レジームからの脱却”の一つであった。その結果がこういうことになるのである。
私が育った時代は戦後民主主義教育の真っ盛りのころであり、武道はやらしてもらえなかった。中学には柔道部も剣道部もなかった。もしどうしても柔道や剣道をやりたかったら、警察署などがやっていた私的クラブに行くしかなかった。高校になると柔道部も剣道部もあった。それは高校だからだったのか、それとも戦後からある程度歳月が経ったからのかは分からない。これもどうかと思うが、「武道は日本の伝統や文化を知るために役立つ」という理由から武道を必修にするというのはどうもいただけない。「武道には礼儀作法を身につけさせる狙いもある」となると論外だといいたくなる。21世紀の礼儀作法とは何かをもっと考えてもらいたい。
総理大臣がトンチンカンだとこのようなおかしなことが平気で罷り通るのである。教育は30年先、50年先にその結果が出てくる。わが国に必要な礼儀作法は、絶対に体育会系の“礼儀作法”ではない筈だ。国際社会においては、体育会系の礼儀作法だけでは通用しない。わが国の伝統的な武士道の精神も、ちょっと武道をしたくらいで身につくものではない。この人たちは、新渡戸稲造の『武士道』(Bushido: The Soul of Japan)をキチンと読んでいるのだろうか。
それは家庭や会社でも同じであろう。心棒となるべき人がチャンとしていないと必ずおかしくなる。毎日のニュースを見ていると病的なニュースが連日報道されている。家庭や会社が病んでいるのであろう。その原因は、わが国の政治にある。本来ならば責任をとってやめなければならない総理大臣がダダをこねてその職に居座っているのだから、わが国の社会全体におかしなことが罷り通ってくるのである。総理大臣がおかしなことをやっていると、社会全体がおかしくなっていくのである。政治とはその意味では恐ろしいものなのである。安倍首相の居座りの罪は重い。
それでは、また明日。
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