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「駆けつけ警護」の問題点
参院選挙で当選した「ヒゲの隊長」こと、元自衛官の佐藤正久参院議員による「駆けつけ警護」容認発言。この問題は、陸上自衛隊最初の海外派遣となった1992年のカンボジア国連平和維持活動(PKO)参加の当時からくすぶっている。
カンボジアへは橋や道路の補修のため施設大隊600人が派遣された。選挙前の93年5月、旧政府軍による邦人警察官殺害事件が発生、日本の国会では選挙監視員となった日本人ボランティア41人の安全確保が議論になった。
政治の要請に応えようと陸上幕僚監部は、選挙監視員が襲撃された場合、駆けつけた隊員が撃ち合いの場に飛び込み、襲撃された当事者となることで正当防衛を理由に武器使用する手法を考案し、実施を口頭で命じた(95年11月20日東京新聞朝刊)。
イラク復興業務支援隊長だった佐藤氏の発言は、「(陸自部隊と同じサマワ駐留のオランダ軍が攻撃された場合)情報収集の名目で現場に駆けつけ、あえて巻き込まれる」意志があったとしており、カンボジアの事例に酷似している。
佐藤発言は集団的自衛権を検討する安倍晋三首相の私的懇談会が「駆けつけ警護」を容認する方向で一致したことを受けたものだが、果たしてオランダ軍を「駆けつけ警護」することは集団的自衛権の行使に当るのだろうか。
集団的自衛権に関する政府の統一見解は「同盟国など密接な関係にある他国が攻撃された場合、その攻撃を自国への攻撃とみなして実力で阻止する権利」とされる。
日本とオランダとの間に日米安保条約のような国防上の取り決めは存在しない。防衛省の法律専門家は「近くにいるだけでは『密接な関係』とはいえない」とし、自衛隊によるオランダ軍の警護は集団的自衛権の行使にあたらないと説明する。
だが、イラク特措法で自衛隊に認められているのは「自己の管理下に入った者」を守るための武器使用までで「駆けつけ警護」をすれば同法違反となり、交戦相手が野盗・山賊のたぐいでなく「国または国に準じる組織」だった場合、憲法九条が禁止する武力行使に該当する。
オランダ軍の任務は治安維持だから自衛隊を守ることが含まれるが、自衛隊の任務はイラク復興支援であり、オランダ軍を警護するする必要はない。陸自幹部は「一般論」として「どの国の軍隊も与えられた任務以外の行動はとらない。逸脱して任務遂行に支障がでれば、元も子もないからだ」という。
昨年12月、自衛隊法が改定され、海外活動が本来任務化された。海外活動を進めるに当たり、憲法を邪魔物扱いして改憲しようとする本末転倒の流れがある。
自衛隊が軍隊になれば、何でもできると考える人がいることには本当に驚かされる。
憲法の枠内で、できる範囲のことをする。「身の丈相応」が肝心だろう。
半田滋(編集委員)
「東京新聞」9/3 朝刊より
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