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http://www.news.janjan.jp/government/0708/0708281429/1.php
2007/08/29
安倍改造内閣がスタートした。さる7月30日の第21回参議院選挙での歴史的大敗後、自民党総裁の座に居座った形の安倍晋三氏は、8月27日午後7時、皇居での認証式を経て、党内の反対者や派閥の実力者をこの改造内閣に取り込みながら、前途多難な船出となった。
テレビを付けると、一晩中、記者会見を見せられた。一番印象に残ったのは、多弁な安倍首相の空疎な記者会見ではなく、外務大臣から党の幹事長に横滑りをした麻生太郎氏の開口一番で開き直ったような次の言葉だった。
「自民党をぶっ壊すと言う人を選び、本当にぶっ壊れた自民党を、どのように立て直すかが我々の仕事だ」
確かにこの言葉は、現在自民党が置かれた立場と状況を的確に述べた実に率直な意見で傾注に値すると思われる。
そう言えば麻生氏は、「劇場型政治」や「ワンフレーズ・ポリティクス」と称賛と批判が相半ばした前首相小泉純一郎氏のやり方に必ずしも全面的に賛成した自民党員ではなかった。それでも何故か、小泉第第一次改造内閣(03年9月22日発足)で総務大臣就任を皮切りに、第三次小泉改造内閣(05年10月31日発足)では外務大臣を拝命し、続く安倍政権でも外務大臣を続けてきた。
麻生氏の言う通り、自民党は小泉政権の5年5ヶ月で、完全にぶっ壊れているというべきだ。ふしぎなのは、崩壊したはずの自民党が、小泉純一郎在任中、支持率をさほど下げることなく終わったことだ。それはおそらく、日本国民が、小泉純一郎という政治家の日本人のパトス(情念)に訴えかけるようなある種の催眠術に罹っていたとも考えられる。もっと言えば、小さいながらファシズムの大衆心理という雲が日本中に漂っていたということになるかもしれない。
小泉氏が破壊した自民党政治の根本は、聖域無き構造改革というワンフレーズによって、第一に党内調整型の政治から官邸主導の政治に変えたこと。第二に自民党政治の基盤だった郵政、農協、土建、医療などの支持団体を根こそぎにしながら、自らの信じる「構造改革」という大言壮語を実現しようとしたことである。この部分は自民党の聖域だったところで、マスコミはこれを好意的に報道し、支持政党無しの無党派の人々は意味もなく、このワンフレーズに支持を与えた。
郵政民営化は、小泉氏の長年の信念とも言える政策だったが、結局これによって、自民党は巨大な集票マシーンを失ったことになる。今後郵貯や簡保が巨大な金融機関に変貌することで、単なる民業圧迫というレベルを越えて、日本の金融市場の機能がマヒし、金融不安が発生するというエコノミスト(例えば菊池英博著「実感なき景気回復に潜む金融教の罠」ダイヤモンド社07年6月刊参照)もいる。結局、この郵政民営化は、単に金融市場に混乱をもたらすだけではなく、日本人のタンス預金をアメリカのグローバル経済を標榜する連中に差し出すようなもので、恒常的な円安と円キャリートレードの基礎的条件を醸成したようなところもある。
現在、農協の自民党は離れは、凄まじい勢いで進んでいる。それは小泉政権において、小規模農家切り捨てと企業参入を可能にする農政に舵を取ったことによる農協末端組合員の反乱とも言える状況である。
グローバル経済の浸透の中で、傷みを伴う改革が、各地で高齢化の進む小規模農家を直撃している。その結果、都市優先、地方切り捨ての構造が、ますます明確になる中で、農協中央会の指示は、もう既に、末端には通じないところまで来てしまったということである。
したがってもしも年内に衆議院解散が起これば、参議院選挙以上の政界激変が起こることは必至であろう。そして自民党は、東京を中心とする都市型の政党として、生き残るしかないことも考えねばならぬ状況まで来ているのである。
どこの地方でも、県議会と言えば、土建屋のトップが、議員になっているケースが多かった。しかし公共事業は、地方財政のひっ迫から削られ、土建業者は、多くの県で、自民党という政党に見切りをつけてしまっているのが実情である。
官邸主導というトップダウンで進められた小泉改革(政治)の構造が、ここまで書き進むと明らかとなる。結局、小泉改革は、小泉純一郎の自己満足の賜物だったということになりはしないか。
つまり小泉政権を支えたのは、かつての自民党支持団体ももちろんあった。彼らの感覚としては「小泉さんも最後は自民党員だから、まさか長年自民党を支えてきた我々の利害を犯すような政策を取るはずはないだろう」というものだ。
冷酷無比な小泉氏は、そんなことに怯むような政治家ではない。政治家小泉純一郎は、彼自身が必要と信じて疑わない「構造改革」を、旧来の支持者たちの既得権を根こそぎになっても実行に移したのである。
小泉政権の後ろ盾は、これまでの自民党を支えてきた旧来の支持者から、アメリカが標榜するグローバルリズムだった。もっと言えば、小泉政権を支えたのは、ブッシュ共和党政権との綿密な共闘路線だった。その結果、アフガン、イラクでアメリカが始めた戦争には、いち早く支持を表明し、人一倍気を配ったのであろう。
結局、安倍政権をひと言で表現すれば、小泉政権の負の遺産を抱えたままの「安倍貧乏くじ政権」である。小泉政権が壊した自民党の支持団体の修復は、容易ではない。既に郵便局は、民営化の流れの中にあり、農協は自民党離れを起こして、その流れは止まりそうにない。各地の土建業者も、少なくなる一方の公共事業の中で瀕死の有様である。
このように考えると、船出したばかりの安倍政権は、船出した途端、テロ特措法という嵐に遭って難破しかねない危なっかしい政権というしかない。ただ考え方によっては、日本政治における民主主義の成熟という観点で考えるならば、日本にも本格的な二大政党時代がやってきたということである。この秋の国会で、真摯な政策論争がなされるならば、むしろ望ましいこととの見方もできると思うがどうであろう。
(佐藤弘弥)
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