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大胆予測 ’07参院逆転<1> 安倍政権の行方
2007年8月21日 紙面から
参院で与野党が逆転し、先行きがますます見えにくくなった政界。安倍自民党と小沢民主党の力関係も変わり、これから政局はどう動くのか。「ねじれ国会」で懸案の政策課題の行方は。政治部の第一線記者が大胆に予測した。
問 参院選で負けたにもかかわらず、首相の座にとどまる安倍晋三首相には、相当風当たりが強いようだね。
答 手続き上は問題ない。でも、惨敗しながら責任はとらないというのは、確かに分かりにくい。釈然としない思いは、自民党内に充満しているし、国民も同じだろう。
■人心一新
問 内閣支持率も20%台に低迷している。再浮上のきっかけはあるか。
答 一度、国民に見放された政権が再浮上した前例は、ほとんどない。参院選後も赤城徳彦農相の更迭や、防衛省の次官人事をめぐるドタバタなど、好ましくないことが続いている。二十七日の内閣改造で、再生した姿を見せるのが最後のチャンスかもしれない。
問 改造はどんな方針で臨むのだろう。
答 人心一新を掲げている以上、ほぼ全閣僚が交代するとみていいだろう。でも、それで人心一新といえるかどうか。
問 どういうこと。
答 まず自民党議員の一部の中に、安倍内閣に加わるのは「泥舟に乗る」ようなものだという空気があるんだ。
それと、議員心理の中には、赤城氏のような「政治とカネ」の問題が自分にもあるのではないか、という懸念がある。入閣してから発覚し、政治生命に傷がつくくらいなら「一回休み」にした方が得策だと考える人は、少なくないというよ。
問 評価される人事を行うにはどうしたらいいだろう。
答 首相に批判的だった人たちを起用することだろうね。「お友達内閣」と言われるのは避けたい。ズバリいえば、微妙な関係にあるといわれる福田康夫元官房長官や、参院選前後、首相に辛口コメントを連発していた舛添要一参院議員らを登用できるかが焦点だ。
問 小泉純一郎前首相のようなサプライズ(びっくり)はないのかな。
答 首相は奇をてらう人事は好まない。小泉氏を入閣させるぐらいの人事をやれば、皆、『オッ』と思うだろうけど。もっとも、小泉氏は要請されても絶対に受けない。
■ブレーキ
問 人事で得点を稼げないと、政策面で信頼を回復するしかない。
答 首相も、このことは十分承知していて、巻き返しを図ろうと必死だ。ただ、当面は民主党の攻勢の前に「専守防衛」の政権運営だね。
問 安倍首相というと、すぐ憲法改正が思いつくけれど。
答 ただ、これを前進させるのは難しい。憲法改正を発議するには衆参両院で三分の二の賛成が必要だ。参院選の敗北で「三分の二」は遠のいた。自民党が目指す二〇一〇年の発議は絶望的だ。
問 教育改革にも力を入れていたよね。
答 そう。教育再生会議は、十二月に第三次報告を出すことになっている。だけど、ここでもブレーキがかかりそうだ。
問 どうしてかな。
答 三次報告の目玉は教育バウチャー制度の導入。この制度は生徒が行きたい学校を選び、自治体から配布された利用券(バウチャー)を学校に納める仕組みだ。
問 学校選択の幅が広がるのはいいじゃない。
答 都会に住む人はいいさ。でも、地方の人は選択する学校の数は少ない。参院選で「地方切り捨て」に対する怒りが噴き出したことを考えると、国と地方の格差をさらに広げる政策はとりにくいと思うよ。
問 ほかの政策は。
答 年金問題や公務員制度改革などは、今後も精力的に取り組むだろう。しかし、この分野では民主党が参院の「数の力」を背景に対案を次々に出してくる。譲歩する場面もでてくるだろう。
■ジレンマ
問 それでは安倍政権「らしさ」が、見えなくなっちゃうじゃないか。
答 そうなんだ。安倍首相は参院選で敗北以来、「反省すべきところは反省する」と言っているけど、反省して「美しい国」「戦後レジーム(体制)からの脱却」路線まで転換すると、安倍政権が存続する意味が薄らいでしまう。
問 そこに安倍政権のジレンマがあるということになるね。
答 ここを打開して低迷にピリオドを打つことが、首相にとって急務だ。自民党内で「安倍政権では衆院選は戦えない」と見切られると、一気に安倍降ろしの火の手があがってしまうからね。 (金井辰樹)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2007082102042638.html
大胆予測 ’07参院逆転<2> 民主党の戦略
2007年8月22日 紙面から
問 参院で与野党勢力が逆転した。参院選から一カ月近くたったのに、各種世論調査での民主党の支持率は高く、自民党と肩を並べている。勢いはまだ続くのかな。
答 確かにこれまで民主党は国政選挙で躍進しても、すぐに失速した。野党で過半数までは届かなかったからだ。結局、国会は与党主導のままで、無力な民主党に有権者は失望した。だが、今度は違う。参院は自民党が多数派工作する余地もないほど野党優位だ。
■苦い経験
問 何が変わるのか。
答 民主党が参院で主導権を握る。参院議長には同党出身の江田五月氏が就任した。一九五五年の自民党結党以来、自民党以外から参院議長が出たのは初めてだ。
問 秋の臨時国会はどうなるのか。
答 従来とはがらりと変わるはずだ。これまで衆院から送られる政府提出の法案の多くは、衆院の審議時間の七割を超えると、与党主導で採決されてきた。これからはそうはいかない。
野党側は、法案の不備やあやふやな答弁を徹底追及するだろう。証人喚問や参考人招致も、基本的に野党側の思いのままになる。与党によって事実上封印されていた「国政調査権」も活用し、政府の仕事内容や税金の使い道を調べるはずだ。
困った政府・与党は、野党側に法案の修正協議を呼びかけるだろう。
問 民主党は話し合い路線に応じるのか。
答 それはない。過去に苦い経験があるんだ。
参院で与野党が逆転した一九九八年の臨時国会で、当時の菅直人代表は金融問題は「政局にしない」と発言。与党との協調路線をとったことで、小沢一郎氏の率いていた自由党は野党共闘を見限り、自民党と連立政権を組んだ。民主党は政権奪取のチャンスを逃した。
党内には二の舞いを演じてはならないという思いが強い。小沢代表も「与党と話し合い、足して二で割ることは、選挙で示された国民(の民意)に責任を果たすことにならない」と話している。
■数の力
問 では、政府提出の法案は参院で片っ端から否決するのか。
答 与野党対決の象徴となる法案には反対していく。例えば、インド洋での自衛艦の給油活動を継続するテロ対策特別措置法の延長がそうだ。
だからといって「何でも反対」という態度はとらない。やみくもに安倍晋三首相や閣僚の問責決議案を可決することもないだろう。いままで与党を「数の横暴」と批判し続けてきた手前、数の力にものを言わせる荒業に出れば、世論を敵に回す恐れがある。
問 では、どう政権を奪い取るのか。
答 あくまで国会で攻勢をかけて安倍政権を衆院解散・総選挙に追い込み、選挙で一気に政権奪取するシナリオだ。
問 荒業も使わずにそんなことができるのか。
答 国政調査権や証人喚問などを駆使し、年金、役人の天下り、政治とカネなど、あらゆる分野で政権の問題点をあぶり出す。そして、年金保険料流用禁止法案、天下り根絶法案など国民の理解を得やすい法案を参院で可決する。与党が衆院で否決すれば、政権交代を求める国民の声が強まると読んでいる。
追いつめられた安倍首相はいちかばちか解散・総選挙しかなくなる−。小沢氏の描く戦略はそんなところじゃないか。
問 そんなにうまくいくかな。結局、衆院選は先に延ばし、安倍首相が辞めるだけではないか。
答 その可能性はある。「早く次の衆院選をやってもらい、安倍首相と戦いたい」と期待している民主党にはありがたくない展開だが、野党がどうにかできる話ではない。早期解散に追い込む確実な手段などない。
■王 道
問 小沢氏は政界再編による政権交代を仕掛けないのか。
答 それはないだろう。政党が同一選挙区で候補者を一人しか出さない衆院小選挙区制では、大規模な政界再編は起きにくい。そもそも、衆院での与野党の議席差を考えると、百人くらい自民党を割って出ないと政権交代は無理。国民も政党の離合集散に飽き飽きしている。民主党内でも「政界再編は王道ではない」と否定的な見方が強い。
問 いつだれと戦うにせよ、次の衆院選で政権交代は可能か。
答 党選対関係者は「(勝つための)基本形は参院選でできている」と説明している。参院選の一人区でやったように、魅力的な候補者を立てて、他の野党との協力関係を築き、有権者に支持される政策を打ち出すのが「王道」だ。小沢氏も自ら再び地方行脚して、支持を広げていくだろう。 (高山晶一)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2007082202042885.html
大胆予測 ’07参院逆転<3> ポスト安倍
2007年8月23日 紙面から
問 自民党議員は二十七日に迫った内閣改造と党役員人事で気もそぞろだろうね。
答 今回はどうも様子が違う。「泥舟には乗りたくない」という声も少なくない。参院選の惨敗で、議員の関心は「衆院選をいつ、誰を担いで戦うのか」になっている。
■先手必勝
問 前回の衆院選は二〇〇五年九月。衆院議員の任期切れは〇九年九月だから、まだ残り二年もあるじゃないか。
答 自民、公明の与党は参院で過半数割れした。野党は参院を舞台に攻勢をかけ、衆院解散に追い込もうとしてくる。与党は衆院選であらためて過半数を獲得し、有権者が政権交代を望んでいないことを証明しなければ、野党の抵抗を排して政権を安定させることはできない。
問 政府・与党提出の法案が参院で否決されたら、衆院で三分の二以上の賛成によって再可決しないと、成立させることができない。いまは衆院にそれだけの議席があるが、次の衆院選で維持するのは難しい。それどころか、下手をすれば政権を民主党に奪われるよ。
答 危険を恐れて解散をためらっていれば、選択肢が狭まってじり貧状態に陥る。野党側に追い込まれて、不利な状況で解散することにもなりかねない。それよりは先手必勝で、自分たちに有利な時期を選び、解散に打って出たほうが得策だ。
問 次の衆院選も安倍首相で戦うのかな。
答 首相が参院選で受けた打撃は致命的だ。内閣支持率をV字回復させ、自民党の命運をかけた決戦の先頭に立つエネルギーは残っていない。衆院選は新総裁(首相)で戦うべきだとの意見が大勢だ。
問 首相退陣を求める意見はまだ強くないよ。
答 内閣改造後も支持率が上向かず、秋の臨時国会で首相の問責決議案が可決されれば、年内にも「安倍降ろし」が強まるだろう。臨時国会を乗り切って通常国会に入っても、審議の混乱などつまずきがあれば、一気に退陣論が強まるだろう。
■対 抗 馬
問 新総裁の候補は。
答 本命は麻生太郎外相だ。くだけた話術は人気が高い。時事通信が今月上旬に実施した世論調査の「総裁にふさわしい人は」との質問で、小泉純一郎前首相(17・1%)に次ぐ二位(14・9%)に入り、三位以下を大きく引き離した。
問 失言が多いのが不安材料だね。
答 「アルツハイマーの人でも分かる」発言に失望した議員は多い。首相との一体化路線も懸念される。二十七日の人事でも要職で処遇される見通しだが、首相と一蓮托生(いちれんたくしょう)という印象が広まれば、いざ総裁選となっても「麻生カラー」が見えにくくなるだろう。
問 対抗馬は。
答 谷垣禎一前財務相や福田康夫元官房長官の名前が挙がっている。谷垣氏は昨年秋の総裁選で安倍氏と戦い、その後も批判的な立場を取っている。「安倍政治」の転換を掲げて総裁選を戦うことはできるけれど、人気は高まっていない。福田氏も一部に待望論はあるものの、支持は広がっていない。
問 小泉前首相の再登板、小池百合子防衛相を初の女性首相に担ぐ案も聞こえてくる。
答 二人とも明確に否定しているが、政権を守るためには何でもやってきたのが自民党。二人とも人気は高いから、可能性はゼロとは言えない。
■立て直し
問 解散の時期は。
答 自民党内では、(1)秋の臨時国会の混乱を受けて、年内に解散(2)〇八年度予算成立後の同年春に解散(3)北海道洞爺湖サミット(同年七月七−九日)後に解散−などがささやかれている。
問 可能性が高いのはいつか。
答 年内では、参院選の教訓を生かして態勢を立て直す時間が足りず、野党側に塩を送ることになりかねない。地方対策を中心に選挙戦略を練り直して、予算に反映させるだけの時間を確保する必要がある。となると、〇八年度予算が成立する来春以降となる。
問 来春に麻生首相で衆院解散、という可能性が高いというわけか。
答 現時点で予測すれば、そうなるね。政界は一寸先は闇だから、時期がずれたり、麻生氏以外の議員が次期総裁になる可能性は大いにある。それでも「新総裁で早く衆院選に打って出る」という流れは変わらないだろう。 (渡辺隆治)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2007082302043140.html
大胆予測 ’07参院逆転<4> 外交・安保政策
2007年8月24日 紙面から
問 インド洋で海上自衛隊の艦船が他国の船に給油活動をする「テロ対策特別措置法」の延長が、秋の臨時国会の焦点だね。どんな展開になるだろう。
答 政府・与党は民主党に修正協議を呼び掛けるに違いない。でも、結局、合意は難しく、改正案は参院で否決されるだろうね。
■転 機
問 なぜ合意できそうにないの。
答 自衛艦の給油活動は、アフガニスタンでのテロ掃討作戦を支援するためのものなんだ。ところが、民主党の小沢一郎代表は掃討作戦自体が「国連に承認されたものでない」から、自衛隊を派遣すべきでないと反対している。
民主党は国連の要請に基づく活動でなければ、自衛隊は派遣すべきでないという立場なんだ。自衛隊派遣の基本原則にかかわる話だから、小沢氏は妥協できないし、政府も歩み寄りようがない。
問 参院で否決されても、与党が衆院で三分の二以上の賛成によって再可決すれば成立するはずだけど。
答 確かに理屈はそうだけど、自民党内では現実的に難しいとの空気が強い。数の力で押し切ったという強引な印象を国民に与え、世論の反発を買うことを心配している。参院選であれほど負けた後だから、慎重にならざるを得ない。
問 テロ特措法を改正し、派遣期間を延長できなければ、海上自衛隊はインド洋から撤退することになるけど。
答 参院選前は想像できなかった撤退が現実味を帯びてきた。自民党執行部が「期限切れも、当然、考えないといけない」というのも、まんざら野党をけん制しているだけではないかもしれない。
問 打開策は見当たらないのか。
答 テロ特措法に代わり、民主党も受け入れ可能な新法制定を模索する動きが、政府・与党の一部にないわけではない。しかし、十一月一日の期限切れを考えると、時間的に難しいだろう。
問 海自が撤退した場合の影響は。
答 米国は「日本の活動がなくなれば、大きな問題になる」と、懸念を日本に繰り返し伝えている。それでも撤退となれば、日米関係への影響は避けられない。
一九九六年の日米安保共同宣言以降、日米同盟は強化されてきた。特に「小泉・ブッシュ」関係の下で一体化が加速し、インド洋やイラクまで、米軍との共同行動が既成事実化していたから、一つの転機になるかもしれない。
■き し み
問 ほかに日米関係に不安材料はないのか。
答 日米両政府が合意した普天間飛行場移設など在日米軍基地の再編も、停滞する可能性があるんだ。民主党は先の国会で米軍再編特別措置法に反対した。移設先の地元自治体が難色を示しているところも多く、これもごり押しできない。
問 米国はミサイル防衛(MD)システムで、米国に向けたミサイルも撃ち落とせるよう、集団的自衛権の憲法解釈見直しに期待していた。これはどうなるのか。
答 民主党もMD導入自体は反対していない。でも、憲法解釈の見直しは反対だ。与党の公明党も参院選後、反対姿勢を強めている。首相はここでも米国の期待に応えることはできない。
問 安倍内閣が最重要課題と位置付けてきた日本人拉致問題はどうなるのか。
答 拉致問題は日本と北朝鮮の二国間問題だが、日本は打開に向けて米国の後押しを期待してきた。自衛隊のインド洋やイラクへの派遣は、拉致問題への米国の協力と無縁でない。自衛隊の海外派遣をめぐり、頼みの米国とギクシャクした関係になれば、八方ふさがりに陥る危険はある。
■こ う 着
問 拉致問題の解決は一層困難になったのか。
答 そもそも米国は最近、北朝鮮との対話路線にかじを切り、米朝の二カ国協議も動きだしている。核問題を優先し、拉致問題を重視しなくなることも考えられる。
まして日朝関係は米朝とは対照的に停滞している。北朝鮮は安倍首相を敵視してきた。参院選の惨敗による安倍政権の弱体化を見透かし、拉致問題は当面は様子見を決め込むという見方もある。
六カ国協議の日朝作業部会が近く開かれる見通しだけど、拉致問題が劇的に動く環境にはないね。 (吉田昌平)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2007082402043416.html
大胆予測 ’07参院逆転<5> 生活第一
2007年8月25日 紙面から
問 参院選は「生活第一」を掲げた民主党が圧勝し、年金問題で後手に回った自民党が惨敗した。年金など国民生活にかかわる政策は重視されるようになるかな。
答 安倍政権は憲法改正など「安倍カラー」の強い政策を一歩下げて、生活に密着した政策に力を入れるようになるだろう。中でも「私の内閣ですべて解決する」とまで言っていた年金問題は手が抜けない。
■新たな武器
問 具体的には何をするのか。
答 安倍晋三首相は選挙前、来年三月までに五千万件に上る該当者不明の年金記録の照合と通知を終え、来年十月までにすべての年金受給者と加入者に加入履歴を郵送すると約束した。まずこれをきちんとやるだろう。もし作業が遅れたり、ミスがあれば、年金制度への不信をさらに強めかねないからね。
問 民主党はどう出るのか。
答 参院選で民主党が追い風をつかんだのは、「ミスター年金」と呼ばれる長妻昭衆院議員を中心に、記録不備問題を追及したのがきっかけだった。秋の臨時国会が始まれば、再び年金問題で攻勢を掛けるはずだ。
特に、野党は参院で過半数を得たことで、「国政調査権」という新たな“武器”を手に入れた。参院の委員会が多数決で調査権を発動し、資料の提出を求めれば、政府は応じるしかない。過去に政府が拒否したのは一件だけだ。
政府はこれまで五千万件の保険料総額や対象者数などの公表を拒んできたが、もうゼロ回答では済まない。もし第二の「消えた年金」なんか出てきたら、安倍政権の致命傷になるよ。
問 参院選では年金制度の抜本改革も議論になった。どうなるのかな。
答 まずは、政府が通常国会に提出し、継続審議になった、共済年金を廃止して厚生年金に統合する年金一元化関連法案をどうするかだ。
民主党は選挙戦で国民年金も含めた一元化を主張してきた。与党が政府案の成立を急げば、民主党が参院に独自の対案を出し、徹底抗戦するだろう。そうなると、与党には参院の与野党逆転が大きな壁になる。
問 与党はどうするつもりなのか。
答 民主党に修正協議を呼びかけ、時間をかけてでも合意を得ようとするはずだ。
民主党は二〇〇四年の年金改革の際、一元化を議論する与野党協議会の設置に合意したが、その後、与党との対決姿勢を強め、結局、協議会はできなかった。今回も応じるかどうか分からない。
そもそも、与党内では「臨時国会の短い会期で一元化法案を審議する余裕はない」との声もある。一元化法案は先送りしかないようだ。
■決断の期限
問 参院選では消費税も争点になったね。
答 首相は、秋から消費税を含めた抜本的な税制改正を議論するという考えを崩していない。だけど、参院選で「税率据え置き」を掲げた民主党に負けたことは無視できない。政府・与党内もいまや今秋の引き上げ決定は難しいとの空気が強い。
政府は、基礎年金の国庫負担分を〇九年度までに現行の三分の一から二分の一に引き上げる方針だ。その財源確保のために消費税率を上げるなら、まだ一年の猶予がある。来年秋が引き上げを決めるデッドラインになるのではないか。
問 「生活第一」を実現するための政策は、年金や消費税だけではないよね。
答 継続審議になっている最低賃金法改正案も、臨時国会の重要テーマとなりそうだ。
政府案は、全国平均で時給六百七十三円の最低賃金を生活保護の水準まで引き上げる。今の水準だと、一日八時間で二十日間働いても月収平均は十一万円弱だ。地方に住む三人家族が受け取る標準の生活保護費は月額約十二万円だから、働くより生活保護を受ける方が“お得”になる。
法改正はこの矛盾を解消するのが狙いなんだ。
■歩み寄り
問 これなら民主党も受け入れるのでは。
答 民主党は参院選で、最低賃金の全国平均額を三年をめどに千円に引き上げると公約したから、簡単に賛成はできない。ただ、支持団体の連合も最低賃金引き上げの早期実現を求めている。
対決一辺倒では世論に見放されるし、政権を担う「責任能力」も疑われる。世論の動き次第では、次善の策として最賃法改正は歩み寄ることも考えられる。 (新開浩)
=おわり
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/scope/CK2007082502043687.html
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