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http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/kaneko/news/20070823dde012070003000c.html
8月15日の終戦記念日。安倍晋三首相は、日本武道館で開かれた全国戦没者追悼式で式辞を読んだ。
「今日の平和と繁栄は、戦争によってかけがえのない命を落とした方々の尊い犠牲と、戦後の国民のたゆまぬ努力の上に築かれています」
その日、首相は自ら秘書官が用意した原稿に手を入れた、と16日付の産経新聞が書いている。元の原稿は、昨年の小泉純一郎前首相の式辞をふまえ「……心ならずも命を落とした方々の……」となっていた。
首相は、それを「かけがえのない命を落とした方々」に変えた。
産経紙によると「『心ならずも』の部分に、保守系文化人や議員から『自ら命をささげた戦死者に失礼だ』との批判があったことを考慮したものだ」という。
そうだったのか。心ならずも原爆や空襲で死んだ人々は、同じ戦争による死でも格が落ちると考えているのか。心ならずも、南方のジャングルで餓死した人々や輸送船とともに海の底に消えた人々も、特攻隊員より格落ちになるのか。
この言い換えのカギは、「戦死者」という概念にある。「戦没者」と「戦死者」がどう違うかという問題でもある。そして結局は、靖国神社と千鳥ケ淵戦没者墓苑の違いに行き着く。
戦死者とは、戦闘で死亡した戦闘員である。だから「死ぬのは覚悟」「自ら命をささげた」人々である。靖国神社は、戦死者だけを顕彰・慰霊する施設である。「心ならずも」亡くなった非戦闘員は対象外だ。
戦没者とは、戦闘員も非戦闘員も含め、広い意味で戦争によって命を失った人々のことである。
千鳥ケ淵戦没者墓苑の計画が持ち上がった1950年代から、国家が慰霊するのは戦死者か戦没者かをめぐって、靖国神社と厚生省が激しく対立した。それがいまも追悼施設問題に尾をひく。新刊の「靖国戦後秘史 A級戦犯を合祀した男」(毎日新聞社刊)に詳しい。
小泉前首相は靖国神社に参拝したが、式辞は戦没者追悼にふさわしい言葉を選んだ。
言い換えた安倍首相の念頭にあったのが、報道通り「戦死者への礼」だったならば、靖国参拝を見送った安倍首相の式辞は、より靖国寄りだった。心ばかりだろうが。(専門編集委員)
毎日新聞 2007年8月23日 東京夕刊
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