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2007年09月16日11時09分
11月1日の期限切れを控え、自民党総裁選後の国会で最大の焦点となるテロ特措法。正式名称は122文字もあり、現行法では最も長い。落語の「寿限無」さながらの名前になったのは、01年の法案づくりの過程で「国連憲章」や「人道的措置」などの響きの良い言葉が次々と継ぎ足されていったからだった。その舞台裏を、情報公開法を使って探ると――。
テロ特措法の正式名称の変遷
テロ特措法の正式名称を書き出すと、こんな具合になる。「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律」
だが、法案を審査する内閣法制局に内閣官房から初めて原案が示された01年9月25日の時点では、もっと簡単だった。「アメリカ合衆国の軍隊等の活動」を支援することが率直にうたわれている。
テロ特措法は「走りながらの法案づくりだった」と法制局関係者は振り返る。01年9月の米同時多発テロを受け、政府内で検討がスタート。米軍の軍事報復に間に合わせようと急ピッチで作業が進められたが、与党などの意向を受けて、原案は4度にわたって内閣官房で書き換えられた。
「アメリカ合衆国の軍隊等」が「諸外国の軍隊等」に変わったのは27日の第2案。10月1日の第4案では、「軍隊」という言葉すら消され、「諸外国の活動」への支援をうたうことになった。
一方、第4案では、それまで「支援等」とひとまとめにしていた部分を詳しくして「支援及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置」と書き足された。「諸外国の活動」にも、最終案で「国際連合憲章の目的達成のための」という枕詞(まくらことば)が加わった。
当時、法制局の次長だった秋山収さんは「題名を詳しく書きたいという要請が(内閣官房側から)あった。『だったら思いっきり長くどうぞ』と話した」という。
題名だけでなく、法案内容も回を追うごとに変わる。第1案には、自衛隊が対米支援を始める前には、国会の承認を得なければならないという条文があった。しかし第2案以降、これは消えた。
法案の閣議決定は10月5日。当時の民主党は「テロとの戦い」を認める点では政府・与党と一致しており、国会でも憲法9条をめぐる論議は深まらないまま、支援実施後の国会承認を義務づけるなどの修正を加えて10月下旬に成立した。
テロ特措法の経過に詳しい明治大の西川伸一教授は「軍隊という言葉を消す一方、国連憲章という水戸黄門の印籠(いんろう)のような文言を入れて、中立性・正当性を打ち出そうとした意図が読み取れる。最終案で『我が国が実施する』と分かり切った主語をあえて入れたのも、日本の主体性を強調するためだったのではないか」と語る。
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