2007.9.15（その２）
森田実の言わねばならぬ［561］
平和・自立・調和の日本をつくるために【378】
〈2007年秋・森田実の地方報告〉［１］
健全なるモラルと自立精神が支える秋田県湯沢市と秋田市への２泊３日の旅で感じたこと
「旅人が旅をして、知らない土地の特色を一番容易く一番愉快に味って、永く記憶に残すものはその土地それぞれの名物になっている飲食物です」（永井荷風）
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９月６日と７日、台風襲来のさなか、秋田県の湯沢市と秋田市へ旅をした。講演のためであった。
６日に湯沢市へ行き１泊した。湯沢市という名を聞いて私が条件反射的に思い浮かべるのは稲庭うどんと名酒・両関である。
秋田県湯沢市は県最南端に位置する歴史のある地方都市である。良米と水に恵まれた「東北の灘」と呼ばれる酒造地帯である。７つの著名な酒蔵がある。
９月６日夜、私は湯沢市で講演したあと、２つの宴会に招かれ、美酒を楽しんだ。一次会でいただいた酒は「銀絞両関」と「冷用両関」。いずれも、すばらしかった。二次会では「冷用両関」。オンザロックでライムのスライスを浮かせて、数杯いただいた。何杯飲んでもうまい。最近、こんなに多量の酒を飲むのはめずらしい。しかし、体調は快適。翌朝もすっきり目覚めた。
稲庭うどんもいただいた。東京でもよく食べるが、本場でいただくのは格別である。
二次会の会場は「寿し処まつ井」。すばらしい寿司屋である。寿司は抜群にうまいが、他の料理も超一流。そこでまた「冷用両関」を何杯か飲み、稲庭うどんを食べた。
一次会の懇親会では、湯沢市長の鈴木俊夫さん、湯沢商工会議所会頭の髙久臣一さん、秋田県羽後町長の大江尚征さん、両関酒造会長の伊藤雄太郎さん、稲庭うどんの老舗の佐藤養助商店・総務部長の佐藤寿彦さん、その他多くの人々と懇談した。商工会議所会頭の髙久さんは二次会にも来てくれ夜11時まで、私の酒の相手をしてくれた。髙久さんは大人物である。皆さん、ひとかどの紳士ばかり。礼儀正しく、親切である。
稲庭うどんは、昔からの製法を守りつづけている。すべて手づくりである。名利を求めることなく、「丹誠込めて物をつくる」という職人の誇りを貫いている。一本一本が手づくりのあたかも芸術品のごとし、である。
酒造を支えているのも同じ精神である。よき伝統を重んずる厳しい職人魂と健全なモラルが、湯沢市という地域社会を支えている。
去る９月６日、私は、北上する台風９号の一歩前を新幹線を乗り継ぎ、北上駅から迎えの車で南秋田の湯沢に向かった。地元の銀行が主催する会で講演するためだった。銀行の人々は、皆さん親切な方ばかり。深く感謝したい。
翌９月７日の朝、北上する台風の真っ只中を、私は次の講演のため車で秋田市へ向かった。講演開始時間の寸前が、台風の目が秋田市上空を通過した頃だった。秋田市の会も（湯沢市とは異なる）金融機関が主催する経営者の集まりだった。
秋田県の経営者はたくましい。秋田県の地域経済はきわめて厳しい状況にあるが、皆さんは、めげずに頑張っている。皆、闘志満々である。台風直撃のなか、主催者も会員も、誰一人、会の延期を考えなかったようである。秋田県を代表するある経営者が言った――「われわれの熱意で台風を吹き飛ばそう！」と。
どの地方の景気もよくない。悪いと言っても過言ではない。そんななか、秋田県の経営者は負けていない。経営者同士の団結も強い。金融機関との信頼関係も固い。
秋田市の懇親会で出された酒は両関(銀絞)。連日の酒だが、いくら飲んでもうまい。
「森伊蔵」も出た。主催者の金融機関の前支店長が、新赴任地の鹿児島から送ってくれたとのことだった。心温まる話である。すすめられてオンザロックで２杯いただいたが、さすが「幻の焼酎」だけのことはある。両関と森伊蔵を代わる代わる飲んだ。いずれが、菖蒲（あやめ）か杜若（かきつばた）である。こんな贅沢は75年の人生で初めてだった。この夜の料理はフランス料理だった。
秋田の料理といえば「きりたんぽ」である。私は「きりたんぽ」愛好者で、毎年冬になると濱乃屋さんに注文し、親類にも贈る。大変に喜ばれる。湯沢市にも秋田市にも健全なるモラルが力強く息づいている。
去る７月29日の参院選では、東北地方の１人区ですべて民主党が勝利した。かつては自民党の金城湯池といわれた東北地方で、自民党は惨敗した。これは、地方を切り捨てた小泉構造改革の結果である。地方の経営者には、自民党に近い立場をとってきた人々が多い。だが小泉・竹中的自民党にはついていけないと考える経営者が増えている。自民党が小泉・竹中路線と訣別しない限り、自民党に未来はない。秋田県への旅で改めて秋田県人の温かさを感じた。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03679.HTML
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