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自民党の総裁選が始まった。しかし、これほど面白くない馬鹿らしい総裁選も珍しい。今回の総裁選で自民党の命運が決まるというのに、こんな馬鹿らしい面白くない総裁選を国民注視の中でやろうというのだから、自民党はもう政権を維持するという執念が無くなってしまったようである。
私はそれでも誰か立候補するのかもしれないと思っていた。今回もし“本目候補”がいたとしたならば、昨日必要な推薦人を揃えて立候補届けをし、その候補者が福田氏と麻生氏を蹴散らかして当選したらその人が本当の“本目”であり、自民党の救世主になったであろう。その程度の人物は本当のところ自民党にはいくらでもいるのである。少なくとも福田康夫氏という急に出てきた71歳に化け物に怯えるようでは、自民党の若手議員はいったい何を考えているのかといいたい。
自民党にはもう人物がいないという。しかし、“人物”というのは、戦いの中で作られてくるものなのだ。坂本竜馬だって、高杉晋作だって戦いの中で人物になってきたのである。自民党の中の閉塞感・絶望感は実のところ口では言い表せないものがあると思う。だから、俺がこうやるといって立ち上がれば、鯉でも“龍”になることが分からないであろうか。政治の面白さはそういうところにある。現在の自民党の状態は、江戸時代末期の幕府を見ているような気がする。福田康夫氏を誰に例えたらよいのか私には分からないが、もう国民から見たらやり切れない気持ちになっているのではないか。
同じようなことは民主党にもいえるのではないか。小沢一郎氏は島津斉彬か島津久光のような気がする。民主党の中から西郷隆盛や大久保利通や高杉晋作や桂小五郎が輩出しないとほとんど機能不全に陥っている自民党幕府を延命させてしまうことになるのではないかという思いがするのは私だけだろうか。いまわが国に必要な人物は破天荒でもいい。歴史の扉を強引にこじ開けていく高杉晋作のような“狂気”をもった政治家なのである。
高杉晋作の“狂気”を物語る逸話がある。松下村塾では高杉晋作はエネルギーを持て余す乱暴者だった。酒を飲んでは暴れ、塾生の勉強の邪魔をすることもままあった。これに塾生たちが一致して抗議して松陰先生に嘆願書を出した。そこには「高杉君の乱暴で一同は大変に迷惑しています。先生からきつく叱っていただきたい。それでも高杉君の行いが改まらなかったら塾から追放していただきたい」と認められていた。
これに対して吉田松蔭は諭すようにいった。「諸君は間違っている。諸君が言うように私がきつく叱った。高杉がその行いを改め、礼儀正しくなったとしよう。しかし、そのとき高杉はもはや高杉ではない。諸君に高杉を殺す資格はない。諸君すべてのエネルギーより、高杉の方が優っている。回天の偉業のためには、高杉が必要なのだ」。高杉が師の知己の恩を痛感し、命懸けの行動に出たことは、その後の歴史が証明するとおりである。私の好きな逸話である。
それでは、また明日。
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