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政局論争はこれで打ち止めにして欲しい(2)(天木直人のブログ 9/14)
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投稿者 天木ファン 日時 2007 年 9 月 15 日 09:45:25: 2nLReFHhGZ7P6

2007年09月14日

政局論争はこれで打ち止めにして欲しい(その2)


1. 福田の強みと弱み

   政治に疎い国民は、なぜこれほど急速に自民党が福田擁立に傾いたか、いぶかしく思う向きがあるかもしれない。たしかに福田は地味だ。それにこの期に及んでも「貧乏くじかもしれない」などと斜に構えている。この皮肉っぽいところが福田の欠点だ。世論向きではない。小泉人気が健在の劇場政治であれば、明らかに出番はない。
   しかしすでに述べたように、今の日本は劇場政治では乗り切れないほど問題が山積している。劇場政治にだまされる政治意識の低い国民は常に存在するが、大方の国民は、米国に言われるままの対米従属では日本はコケにされるだけだと気づき始めた。小泉型政治はもう駄目だ、と心ある国民は思い始めた。それに加えて、腐っても鯛ではないが、腐ってもやはり自民党だという国民は多い。かつて大鵬、巨人、目玉焼き、という事が言われたことがあったが、日本人の体制順応の気質は急にはかわらない。変われない。
   そしてなんと言ってもあの安倍の後だ。若くてイデオロギーに走った安倍の後は福田の手堅さが目立つ。自民党が結束して政権を死守しようとすれば福田しかなかったということだ。そして結束する自民党はやはり手ごわい。福田は小泉と違って人の意見を聞く。官僚にも受けはいい。受けを狙った派手なパフォーマンスを好まない。これらが今は福田の最大の強みとなったのだ。
    私が注目したのは、あの福田が、今回ばかりはその気になったことだ。そしてその理由として、「平時だったらこんな事にはならなかったが、今は非常事態だ。危機を救わなければならない」と心中を述べた事だ。これは本音だろう。この発言は迫力がある。安部の言葉とは違う。小泉の言葉とも違う。
    何故額賀は降りたのに麻生は勝てない総裁選にたつのか。それは出来レースであるからだ。総裁選を行わないと談合だという批判を招く。形式的に総裁選は必要なのだ。額賀と違って麻生は安倍の後任者として本命視されていた男だ。今となっては瘠せ馬の先走りとなったが、降りるわけにはいかない。しかし小泉と違って福田は話し合いを重んじる男だ。組閣では借りを返すだろう。損はない。
    野党は一斉に古い自民党に戻ったと批判するだろう。しかし福田暫定内閣はそうではない、緊急避難だ、自民党存亡の時に挙党体制で臨むのだ、といい続けていれば良い。そしてそれはその通りなのだ。福田自民党は小沢民主党と自民党の生き残りをかけて勝負してくる緊急自民党なのだ。
小泉によってボロボロにされた自民党を土俵際で引きとどめるには結果的に福田は適役なのかもしれない。ひょっとすると自民党再生の救世主となるかもしれない。

2. 小沢民主党は衆議院選挙で勝てるか

  そうは言っても今の政治状況は民主党に有利である事に変わりはない。早い時期に解散・総選挙に追い込む事が出来れば政権交代は夢ではない。だからこそ自民党は解散を引き伸ばし、社会民主主義的な政策を取り入れて着実に手堅い政策を推し進め、世論の支持をとり戻そうとするだろう。
  小沢民主党と福田自民党のせめぎあいは、まず解散の時期についてどちらが主導権を握るかにかかっている。
  小沢民主党は年金問題と政治とカネに集中すべきだ。国民の怒りの炎を絶やすことなく、自民党永久政権の弊害こそ諸悪の根源である、一度は本格的な政権交代を実現しなくては日本は変われない、と攻め立てるしかない。
  福田自民党は、暮らしと生活の問題に軸足を移し、社会民主的な政策を取り入れる振りをするだろう。改革という言葉を使い続け、つまり改革路線は変わらないと言いながら、決して新自由主義を唱える事はないだろう。「改革は止めない」という言葉を使い続けて、その実、小泉政策を否定するのだ。国民は改革の意味はわかっていない。改革と言い続けていれば安心するのだ。その程度の意識なのだ。間違っても増税などと言ってはいけない。景気抑制策をとってはいけない。
   小沢民主党との戦いはテロ特措法延長に絞って攻撃することだ。安倍の政治生命を奪った因縁のテロ特措法延長問題だ。弔い合戦のつもりで勝負するべきだ。
   テロ特措法に関する世論などあてにならないものだ。14日の毎日新聞の世論調査では補給活動賛成が49%、反対が42%と既に逆転している。この世論を見て民主党がうろたえているらしい。その通りなのだ。何が何でも反対だと言い続けるならば、やがて民主党は反対政党だということになって、国民にそっぽを向かれる事になる。
   それに福田自民党は、延長できなくても、安倍のように職を賭けるなどと大見得を切る必要はない。悲壮な気持ちになる必要はない。最善を尽くしたがそれでも民主党が反対した、日本国民の賛成にも関わらず民主党が反対した、と淡々と言えばいいのだ。まさに福田に打ってつけの役回りだ。そしてそれはその通りなのだ。福田の責任でも自民党の責任でもない。米国が福田を公約違反などと言うはずもない。親米の福田自民党が総選挙で政権を失うような事があれば、米国にとっても困るのだ。
今回の件で米国は明らかに小沢民主党に警戒感を持った。小沢民主党が政権を取るぐらいなら福田自民党のほうがいい、安倍では頼りなかったが福田自民党は大切にしなくてはならない、補給活動の停止は残念だが、日米軍事同盟を堅持し、米軍再編に協力してくれればそれでよい、政権交代が生きないように総選挙では福田自民党を応援しよう、もし米国がこのように考えるようになると、その時点で福田自民党の勝ちだ。福田は今からシーファーと協議しそのシナリオを作るべきだ。米国と手を組むのだ。

3. 小沢一郎のアキレス腱

  小沢自民党の誤りは、テロ特措法延長問題を政局の中心に据えたことだ。本人はその気でなかったかもしれないが、日米関係は日本の政治の最大の争点であることを軽視しすぎた。年金や政治とカネの問題は、一時的に国民の怒りを招くものであっても、国の基本に関わる政治的争点ではない。やはり日米安保体制の是非こそ最大の選択なのだ。
   小沢のもう一つの大きな誤りは、この一大政治争点を、党内の右派を説得することなく、旧社会党の連中と組んだ事だ。輿石を代表代行に重用し、テロ特措法担当の陰の外相に鉢呂を起用したのには驚いた。いずれも組合あがりの旧社会党員だ。しかも原則を曲げて安保体制を容認し、自民党と組んで社会党を潰し、その後は生き残りの為に連合と一緒に民主党に走った連中である。小沢は政策論でなく政局に重点を置いた。とてもまともに日本の安全保障政策について自民党と論戦する気構えがあるとは思えない。それは必ず大きな負担となって政権奪取の前に立ちはだかるに違いない。
  14日の日経新聞によれば民主党の前原副代表は、13日の朝日ニューススター番組収録で、「党内でもテロとの戦いに日本も加わる事が必要だという人間が相当いる。私がわかる範囲でも40−50人規模はいる」と述べたらしい。さらにまた、「小沢代表の考え方に関してはまだ党内でつめ切れていない。反対の理由が情報公開の不足なのか、憲法論議なのか、国連決議に解釈なのか、議論していかなければならない」とも述べたという。これは驚くべき発言だ。民主党内で基本論議のないまま、「反対」だけを固執していると暴露したのだ。これでは米国も怒る。自民党も怒る。国民も怒る。政治生命をかけた安倍は生真面目すぎたということだ。馬鹿を見たということだ。
   福田自民党はこの点を徹底的に衝くべきだ。展開次第ではこの問題で民主党は崩壊するかもしれない。結果的に、安倍は、自らの政治生命と引き換えに小沢民主党と差し違えする事になるかもしれないのだ。恥じをさらしたが自民党を救ったという事になるかもしれない。
    あの唐突の辞任が、ありえなかった福田の登場を実現し、そしてその福田がテロ特措法延長問題で反転攻勢する。下野必至の自民党を首の皮一枚で救うことになる、それはそれで戦後政治史の一大ドラマである。

4. 保守大連合連立か護憲勢力の蘇生か

   さて福田自民党と小沢民主党の勝負はどうなるのだろう。これからの日本の政治はどうなるのだろうか。それは勿論解散・総選挙の時期とその結果次第である。勝ったほうが暫くの間政権を維持する事になる。負けたほうは分裂する。そして程度の差はあれ、なんらかの政界再編が起きる。そこから先は予言の世界だ。政局評論の域を超える。だから私の評論はここで終わりにする。


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