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(http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070912dde041010045000c.html)
安倍首相辞任:「職を賭して」一転 電撃の表明、なぜ−−国会、霞が関は絶句
「本日総理の職を辞するべきだと決意致しました」。海上自衛隊の給油活動継続を「職を賭して」と表明してから、わずか3日。安倍晋三首相は12日、緊急会見で辞意を表明した。「本会議の時間が決まらない」と朝から国会内がざわつく中で、突然飛び込んできた衝撃の一報。参院選の惨敗、相次ぐ閣僚らの辞任……。内閣支持率が低迷し続け、退陣を求める声も強まる中、何が引き金となったのか。唐突な「決断」に、列島中に驚きの声が広がった。
国会では本会議で代表質問が行われる場合、開会時間など日程は早めに決まる。だが、この日は違った。衆院議員の間では、開会の時間がなかなか決まらないことをいぶかる声が高まっていた。
「おい、まだ(開会の)予鈴は鳴らないかな」
12日正午過ぎ、スーツを着込み、議員会館の自室で本会議出席に備えていたある議員は秘書に呼びかけた。
「1時開会は無理と議運は言ってるそうです」
「何だろうな」
議員が首をかしげた瞬間、テレビのテロップに「安倍首相、辞意を伝える」の速報が流れた。議員は食い入るように画面を見つめ、早速情報収集のため、あちこちに電話をかけ始めた。
◇不祥事続いたお友だち内閣
安倍首相は06年9月20日、自民党総裁選で麻生太郎幹事長と谷垣禎一元財務相を破って第21代総裁に就任した。第1次安倍内閣は同26日に発足したが、親しい仲間を多く集めたことから「お友だち内閣」などとも呼ばれた。
安倍内閣は、相次ぐ閣僚の不祥事に悩まされた。同12月に、佐田玄一郎行政改革担当相(当時)が政治資金問題で辞任。今年1月に故松岡利勝農相(当時)の事務所費問題が浮上し、5月に松岡氏が自殺した。7月には久間章生防衛相(当時)が、原爆投下について「しょうがない」と発言し辞任に追い込まれた。さらに、参院選直前の同月、赤城徳彦農相(当時)の事務所費問題が浮上したことなどから自民党は歴史的な大敗。8月になって赤城氏を更迭した。
第2次安倍内閣では、閣僚などの相次ぐ政治資金の問題が発覚し、混乱を極めていた。
赤城元農相の度重なる事務所費問題など閣僚の不祥事で傷ついた安倍内閣は、「身体検査」を終了したはずの参院選後も、やはり政治とカネの問題にまみれた。
今月1日に遠藤武彦前農相が組合長を務める農業共済組合が、99年に国の補助金115万円を不正受給していた事実が発覚し、出はなをくじかれたほか、額賀福志郎財務相や玉沢徳一郎元農相などの事務所や政治資金を巡る不祥事も相次いだ。
◇官僚ら「内閣改造したばかりなのに」
東京・霞が関でも衝撃が走った。厚生労働省幹部は午後1時前にテレビに流れた「安倍首相辞意」のテロップに「えっ」と絶句した。その後「内閣総辞職となれば、また、大臣が代わるのか。やっと、年金などの課題がスムーズに動きだしているところなのに……。とにかく情報が本当かどうか知りたい」と話した。
国土交通省幹部も「内閣改造したばかりなのに、また代わるのか」とつぶやいた。幹部らは「なぜ辞任するのか」などと慌ただしく情報収集に走った。
農水省幹部はテレビの速報で知り、「えっ本当にそうなのか。所信表明をしたばかりなのに」と半信半疑の表情を見せた。
テロ特措法の国会論戦を控える防衛省・自衛隊では、14日から全国各地でインド洋の自衛隊の補給活動をアピールする一般向けセミナーも予定されており、唐突な辞意表明に驚きと困惑の声が漏れた。
同省では、ある自衛隊幹部は「安倍さんほど自衛隊の現場を訪ね、士気を気遣ってくれた総理はいなかった。本当だとしたら誠に残念だ」とやるせない表情。別の同省幹部は「小池(百合子前防衛相)さんが内閣にとどまらないと言い出した時も驚いたが、まさか安倍さんまでとは。もう政治家は信じられなくなりそうだ」と情報収集に追われていた。
◇地元「どういうことだ」
安倍首相の辞意表明におひざ元の山口県にも衝撃が走った。自民党県連の長谷川忠男幹事長は「今初めて聞いた。考えられない。テロ特措法の延長に職を賭すると表明したばかり。どういうことなのか真意が分からない」と動揺を隠さない。首相の若手後援会「晋緑会」の冨永洋一会長(47)は「驚いた。首相の決断なので支持するしかない。いろんな巡り合わせが悪かった。気の毒だ」と残念そうに話した。
自民党県連の河野博行会長は「あっけない幕切れでショックだ。地元選出の8人目の宰相として8月末には県連が応援決議を出したばかりだし、残念でならない」。党下関支部の塩満久雄支部長は「残念だが、まだ事情もよくのみ込めない」と戸惑いを見せた。
◇脱税疑惑、取材進む
突然辞意を表明した安倍首相については、「週刊現代」が首相自身の政治団体を利用した「脱税疑惑」を追及する取材を進めていた。
同編集部によると、安倍首相は父晋太郎氏の死亡に伴い、相続した財産を政治団体に寄付。相続税を免れた疑いがあるという。晋太郎氏は91年5月に死亡し、遺産総額は25億円に上るとされていた。編集部は安倍首相サイドに質問状を送付し、12日午後2時が回答期限としており、15日発売号で掲載する予定だったという。
毎日新聞 2007年9月12日 東京夕刊
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