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安倍首相の突然の辞任を「無責任」という人が圧倒的に多かった。しかし、私は昨日の永田町徒然草で「かろうじてわが国の歴史に例外を残さなかった点は、わが国の憲政史上良いことだったと私は思っている」と書いた。これは重要なことである。歴史に誤りを残さないことは、政治家にとって大切な仕事なのである。なぜ、自民党や公明党の中で単純にこのことをいう人がいないのだろうか。それは、彼らが誤った歴史を作る共犯者だったからであろう。
「私は続投に反対したのだ」などということは、共犯者でないというアリバイにはならない。政治家は結果責任が問われるからである。まあ、それでも共犯者ではなく、幇助者として少しくらい刑は軽いとでもいっておこうか。しかし、続投に反対だといいながら安倍首相が改造するとなるとこれを許し、党や内閣の役職についた者は黙っていた者よりも罪は思い。舛添クンなどはその筆頭である。もっと罪が重いのは、安倍首相に続投をけしかけたり、続投声明を公然と支持した者である。この手の政治家は、麻生幹事長を筆頭に数え切れないくらいいる。この罪深き政治家を国民は許してはならない。
わが国の国民には“罪と罰”という観念が薄いといわれている。それを宗教的土壌に求める人もいる。宗教的土壌とは、キリスト教的意識がないからだという。キリスト教では、人間はいつも神と対峙している。自らの行いは、常に神にみられている。世間は誤魔化せて、神は決して見逃してくれない。あまり自信はないが、キリスト教はそのような教えだと私は理解している。キリスト教国で産まれた近代民主主義体制や自由主義体制には、このように原理原則にうるさいところがある。
私はキリスト者ではないが、このようなことを知っているのでいつも原理原則にうるさいのである。原理原則とは何かをいつも考えようとしている。自由主義や民主主義の原理原則は、“歴史の失敗を集積した人類の叡智”なのである。あえて成功の歴史といわないのは、「選挙という手法が、最高の方法かどうかは分からないがこれ以上の方法がないからである」と言い草に象徴されているような気がする。自由主義も民主主義はペシミズムの塊なのかもしれない。
安倍首相が結局退陣しなければならなかったのは、選挙の結果を否定しようとしたからである。換言すれば、民主主義を否定しようとしたからである。お調子者は安倍首相に媚諂ったが、多くの国民は選挙の結果を否定しようとする安倍首相を決して許そうとはしなかったのである。自民党や公明党が今回の総裁選びで忘れてならないのは、この原理原則である。投票率が58.64%というと低いような気もするが、それでもおよそ6000万人が投票所に足を運び、その政治的意思を表明するのである。世論調査とは重みが違うことを知らなければならない。
これまで何度も書いたように今回の選挙結果は、自公“合体”政権が審判されたのである。国民は自公“合体”政権にノーを突きつけたのである。自民党や公明党の国会議員の発言を聞いているとどうもここのところが分かっていないようである。この根本が分かっていなければ、いかな彌縫策を弄しようが自公“合体”政権は己の危機から脱却することはできないであろう。私の政治的立場は、自公“合体”政権の打倒であるからそれを責めるつもりはない。まあ、自業自得だから仕方ないであろう。
安倍首相は「テロ対策特別措置法を継続するするために、自らが職を引くことにより局面を変えることが必要だ」と考えたという。これからは、テロ対策措置法あるいは類似の措置をすることが是か非かということに野党は全力を傾けなければならない。この議論は、年金問題よりもはるかに大変であろう。しかし、政権交代しても現在の外交・防衛政策に何らの変化がないようだったら、そんな政権交代はあまり意味がない。民主党を中心とする野党には、自公“合体”政権とは違う外交・防衛政策を早急に練り上げることが求められているのだ。
テロ対策特別措置法とはいうが、この法律はテロ一般の防止を目的とした法律ではない。アメリカが9・11同時多発テロに報復するためにはじめたアフガン戦争をどう支援するかということで急遽提出された法律にすぎない。テロとは地下に潜行する組織が行う武力行使である。そしてそれはどこの国でも犯罪である。私はテロを憎むことは人後に落ちないつもりだが、テロを防止するために戦争という手段が有効だとはどうしても思えない。“戦争”とは、国家対国家の戦いである。テロを支援する国家を撲滅すればテロがなくなるほど単純なものでもないと思う。この辺りから基本的に論じなければ、正しい結論には到達することはできない。この数ヶ月間は、このテーマが中心的課題になるだろう。
それでは、また明日。
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