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□小沢一郎氏の敗北 [池田信夫 blog]
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/26bb0a008afe7c12b14225ad4b467873
小沢一郎氏の敗北
2007-08-18 / Law/Politics
今回の参院選で敗北したのは、安倍首相ではなく小沢一郎氏だと私は思う。私は、かつては取材する側として20年以上前から彼の行動を見てきたが、今回の参院選とその後の対応を見ていると、彼はかつての小沢氏と同一人物だとは信じられないほど変わってしまったからだ。
特に驚いたのは、先週のシーファー駐日米大使との会談で、テロ特措法の延長に反対したことだ。小沢氏は対米関係に強い政治家として知られ、日本は「普通の国」になるべきだとする改憲派だった。湾岸戦争のときは、自民党の幹事長として「憲法」や「国連」などの神学論争ばかり続く国会を押し切って、90億ドルの「国際貢献」を実現した。その彼が、今度はその国連や憲法を持ち出して社民党みたいな議論をするのは、小池防衛相のみならず、身内の前原氏からも批判されて当然だろう。
ただ、ある意味では彼の行動は選挙前から一貫している。マニフェストで農家への所得補償を掲げたのは、勝敗の鍵を握る一人区へのバラマキだろうし、消費税の増税を引っ込め「子供手当」の創設を掲げたのは無党派向けのポピュリズムだろう。しかも、こうした政策に必要な15兆円以上の財源を「行政のスリム化」で捻出するというのも、かつての社会党の論法と同じだ。要するに「何でも反対」で安倍政権を追い詰め、解散に追い込もうというのだろう。
小沢氏の行動には、奇妙な二面性がある。彼が、かつてEconomist誌に寄稿したとき、同誌は「このように論理的な日本の政治家を初めて見た」と評した。羽田政権の末期に社民党が復縁を求めてきたときは、「烏合の衆の与党になるよりは下野する」として妥協を拒否した。これは結果的には自社さ政権を生んだ大失敗だったが、彼はのちに「まさか自民党が社民党委員長に投票するとは思わなかった」と述懐していた。分裂の続く新進党を解散して自由党に「純化」しようとしたのも、同じような原則的な性格による失敗だ。
他方で、すべてを政局の論理であやつろうとする面もある。細川政権の崩壊したあと、渡辺美智雄氏を自民党から離党させて党首にかつごうとしたり、海部俊樹氏を首相候補にしたり、「自自連立」で自民党をかき回そうとしたりした戦術はすべて失敗に終わった。特に自自連立は、自公連立与党の多数派を固定し、政権交代をさらに困難にしてしまった。このように独断で「奇策」によって政局を動かそうとする性癖が、側近の離反をまねいた。
1993年に『日本改造計画』を書いたころの小沢氏には、バブルとともに崩壊した「日本型システム」をサッチャー=レーガン流の新自由主義によって改革し、規制を撤廃して個の自立をうながすという明確なビジョンがあった。ところが細川政権はわずか9ヶ月で終わってしまい、日本はバブルの処理と称して、かえって莫大なバラマキを続けた。そしてこれを是正したのは、小泉氏の「構造改革」だった。小沢氏の出番は、なくなってしまったのである。
そこで小沢氏は、とにかく政権交代を実現するには手段を選ばないという方針をとったわけだ。結局、彼は「原則」の人ではなく「政局」の人だったのだろう。健康不安を抱える彼としては、やはり死ぬまでに一度は首相になりたいのかもしれないが、国民にとってはそんなことはどうでもいい。参院で民主党が「何でも反対」して安倍政権が行き詰まり、解散・総選挙で「民主・社民連合政権」が誕生する、という悪夢は御免こうむりたいものだ。
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