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2007年08月17日
藤井裕久という政治家
人の評価は容易ではない。ましてや直接に親交のない政治家が多くなった今の政治の世界において、特定の政治家の器量を的確に評価する自信は私にはない。そう前置きをした上で、私は敢えて言う。メディアを通じた言動を見る限り、私は今の政治家の中で藤井裕久をもっとも高く評価すると。
その藤井のインタビュー記事が17日付毎日新聞に出ていた。その中のテロ特措法延長問題に関する藤井の言葉に私は瞠目した。彼は、小沢一郎が勇み足発言をした国際平和維持活動(PKO)への協力について、「・・・国連平和維持活動の形で日本が参加する可能性が必ずしもないわけではないが、治安維持が目的ならダメです・・・」とさりげなく軌道修正しているのだ。
なぜこの発言が重要なのか。
小沢民主党代表がテロ特措法延長問題に関し、「米国が一方的に始めた戦争には賛成できない」と言ったのは正しかった。ところが小沢代表はそのあとにすぐ「国連決議に基づいたものではないので協力できない」と続けたため自分を縛ってしまった。すかさずシーファー大使に、「国連決議を正しく理解していない」とつけこまれ、外務省や読売新聞(16日付勝股秀通解説委員)などから「アフガン攻撃は国連や国際社会が認めた戦いである」などと反論される余地を残した。
わき道にそれることになるが、私であればその後に、たとえばこのように続けたであろう。「アフガニスタンの現状を見ると、武力によってアフガンを民主化させることはもはや不可能であることは明らかだ。国際社会もその誤りに気づき撤兵する国が増えつつある。そのような状況下において、11月以降も自動的に補給支援を続けることについては再考せざるを得ない。わが国の補給支援が有益である事が確認されればいつでも再開の用意はある」と。
政府や外務省は小沢発言の原則論を突いて攻めてくるに違いない。そもそも国連決議などというものはどうとでも解釈できるものと相場が決まっている。私がまだ駆け出しの外交官であったころ、ジュネーブの国連代表部に勤務し、連日国連決議の条文作成に関与する事があった。そこで学んだ事は、国連決議の条文作りは、作成する当事者でさえ文章の意味が分からず作成しているという事実である。それほど曖昧な作業であるのだ。言い換えれば、関係当事国が自分たちに都合のいいように読める文章をぶつけ合い、妥協の結果同床異夢の決議文で手を打つという作業が、国連決議案作成の外交交渉なのである。これは冗談ではなく本当の話なのだが、作成当時の当事者に聞かなければ、その意味が分からないという国連決議がゴロゴロしているのだ。そういうわけだから、国連決議で合意されたものかどうか、などという議論に入り込めば、政府・外務省に圧倒的に有利になってしまう。丸め込まれてしまうのである。
それよりも私が懸念する事は、小沢代表が、国連決議を重視するという原則論に固執するあまり、国連決議に基づいて設立された治安維持のための国際治安支援部隊(Internationl Security Assistance Force)に対しても、「国連平和維持活動と同じ性格を付与され、オーソライズされている」と発言し、これを容認する姿勢を示してしまったことである。
国際治安支援部隊は確かに国連決議に基づいて創設された。しかしそれは伝統的な国連平和維持活動とは異なり、治安が悪化しているアフガニスタンなどで殆ど戦闘活動そのものに従事する部隊となっている。だからこそISAFに当初から参加しているNATO諸国でさえも、今では自国兵士の犠牲に対する国内の反発により、撤退機運が高まっているのである。さすがの小泉前首相や安倍首相も、みすみす自衛隊に犠牲者がでるようなアフガンやバクダッドへの派遣には踏み切れなかったのである。
そのようなISAFへの協力に前向きな発言をしてしまった小沢代表は、この点を政府、自民党から突っ込まれることであろう。それをいち早く見抜いたのが藤井裕久である。だからさりげなく、「治安維持が目的ならダメです」と軌道修正をしたのである。
さすがである。小沢代表は、これからの政局を乗り切るに際しては藤井裕久を最強の補佐役とし、その助言に耳を傾けるべきである。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/08/17/
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