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フォーラムin札幌時計台 第1回セミナー 2007年8月14日
辛淑玉 マイノリティから見た戦後日本の欠落
フォーラムin札幌時計台の第1シリーズは、「瀬戸際の戦後日本」という全体テーマの下でプログラムを組んだ。辛淑玉さんには、その冒頭を飾るにふさわしい刺激的な話をしていただいた。以下、辛さんの話を私なりに要約させていただく。
小泉政権登場以前の戦後日本について、平和や経済的な平等を達成したという評価があるが、マイノリティにとって平和や平等は無縁であった。在日韓国・朝鮮人は劣悪な経済的環境の中で貧乏な生活を強いられていた。沖縄には多くの米軍基地が存在して米兵による殺人やレイプが相次いだ。沖縄に戦後の平和があったのだろうか。だから、マイノリティの側から見れば、戦後日本の「成功」や戦後民主主義が嘘くさく見えてしまう。
小泉時代をくぐって、日本社会のマジョリティの安定や豊かさを支えた様々な仕組みが崩れ落ち、多くの日本人はあわて始めた。非正規雇用の増加に伴う若い世代の生活苦は、いわば日本人の「在日朝鮮人化」とでも言うべき現象だ。もちろん、経営者が労働力を使い捨てにすることは好ましいことではないが、そうした人間をモノ扱いする働き方はずっと前から在日朝鮮人が強いられてきたものだということを、どれだけの日本人が理解しているのだろう。
私(辛)は今まで、護憲や平和の運動に参加してきたし、そうした理念を追求する政治家や政党を応援してきた。しかし、平和や豊かさの埒外に置かれてきた私に、平和や憲法を守る運動の手伝いをしてほしいという護憲派、進歩派の感覚も少しおかしいのではないかと最近は考えるようになった。
多くの日本人は、自らの足元が崩れ始めた今、いっそうヒステリックに現状に対する不安や欲求不満のはけ口を求めている。より弱い者、マジョリティに対する敵とみなされた者に対する攻撃がその現れである。イラク人質事件の時に吹き荒れた「自己責任」という名の下の被害者やその家族への攻撃が典型例だ。香田証生さんがイラクで捕らわれた時には、救うに値しない命、殺されて当然の命という言葉を公言した。それほどまでに、日本社会には人間を蔑視し、差別する雰囲気が蔓延している。柳沢厚生労働大臣の「女性は生む機械」という発言は、そうした感覚を正直に表現したにすぎない。
在日に生まれながら、日本人に愛されたいと願い、日本人になったが、志半ばで死んだ2人の人物がいた。1人は、金優作(日本名、松田優作)、もう1人は朴景在(日本名、新井将敬)である。金は石原裕次郎にあこがれ、映画俳優となり、日本人に愛されることを願ったが、若くして病魔に襲われた。朴は、大蔵官僚から政治家に転身したが、当時の中選挙区制の下で同じ選挙区から選ばれていた石原慎太郎に敵視、蔑視され、石原を恐れていた。石原の秘書が新井の選挙ポスターに「北朝鮮から帰化」という黒いシールを貼った。また、「もし日本と朝鮮が戦争をしたらおまえはどちらに忠誠心を持つのだ」と石原に詰問されたこともある。朴は、証券会社から利益供与を受けていたという疑惑をもたれ、自殺に追い込まれた。
日本にいるすべての人が、国籍や性別に関係なく、そのままで尊重されるような社会はいつになったらできるのだろうか。
以上の要約の文責はすべて筆者(山口)にある。この要約を辛さんの発言として引用することは差し控えていただきたい。
講演に引き続き、私と辛さんが対論した。先の参議院選挙における自民党の大敗、民主党の躍進で浮かれている私に、辛さんは今の野党は信用できるのか、野党を支持した無党派層なるものを信用できるのかという厳しいパンチを浴びせた。私は、民主党の中には変な右翼もいるが、安倍政権の憲法改正や強者優先の経済政策に対決するという基本姿勢で選挙に臨み、勝利したことの意味は大きいと反論した。辛さんは、さらに、戦後レジームの中でマジョリティを保護してきた政策や仕組みがどんどん崩れ落ち、マジョリティが不安におののくようになった時、彼・彼女らはいっそう弱い者やマイノリティを攻撃し、束の間の慰安を求めるようになるのではないか、日本社会がアメリカ以上に閉塞し、固定化された不平等社会になる危険性があるのではないかと問いかけた。また、差別は快楽であり、マジョリティはこれからもそうした快楽に身をゆだねるのではないかとも述べた。私は、そうした悪いシナリオも実現する可能性があるが、逆に、自らの弱さやもろさを認識することによって、人間の尊厳に目覚め、同じ人間同士助け合おうという社会的連帯が生まれる可能性に賭けるしかないと主張した。
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