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http://www.gyouseinews.com/domestic/aug2007/001.html
参議院選・与党惨敗と東アジア情勢の今後
参議院選での与党の歴史的大敗を受けて、混乱含みの政局が始まった。自民・公明惨敗の真因はどこにあったのか、そして日本はどんな方向に向かおうとするのか……。それを推測するには、まず米国の現状を知り、世界を知ることから始めなければならない。
うつ病の噂飛び交うブッシュ大統領
米国の世論調査では、ブッシュの「イラク政策を支持しない」者が68%に達するという。来春に削減される予定の駐留米軍についても54%が「来春まで待つべきでない、すぐにでも削減を」としている。ところが同時に、65%の人は「米軍が撤退したら、イラクは自力で治安回復はできない」と考えている。つまり米国民の多くは、イラクの戦後復興のことなど考えず、自国兵士の安全を優先すべきだと考えているのだ。
世論の厭戦感だけでなく、ブッシュ政権と与党との深刻な亀裂のために、大統領がうつ病に陥り、政権運営が困難になっているとの噂が飛び交っていた。そんな噂がネット上を駆け巡っている最中の7月末、ブッシュが入院し、チェイニー副大統領が大統領代行に指名されたとのニュースが発表された。実際は、ブッシュの胃にポリープが発見され、その検査、除去のための入院だったようだが、ネット上では「適応障害症候群(うつ病)」が真実のように語られている。
ブッシュがうつ病なのか否かは、詳細が公表されていないので不明だが、彼自身が疲弊し、政権の支持率がガタ落ちになった原因がイラク戦にあることは間違いない。イラク戦開戦はネオコン勢力の圧力であり、長引くイラク戦の中でネオコン系は衰退、没落していった。だがネオコンは必死の巻き返しを図り、ここに来てその成果が徐々に形を表し始めている。
ネオコン復権
米大統領選出馬を表明しているジュリアーニ(前ニューヨーク市長=共和党)は、外交政策の顧問としてチャールズ・ヒル(イェール大教授)を筆頭とするタカ派論客を選んだと発表した。
ヒルは、イラクのフセイン政権打倒を主張したPNACの要望書に名を連ねている。PNAC(アメリカ新世紀プロジェクト)とはネオコン中核の圧力団体だ。ヒルはかつて、「国連を廃絶して、その代わりに民主主義国家だけで新たな国際機関を作るべき」と主張したことがある人物。ボルトン前国連大使の理論的支柱でもあった。最近、ボルトンが論壇などに登場する機会が多いことも含め、ネオコン系が復権しはじめていることが明らかだ。
ジュリアーニがネオコン系論客を選んだことは、大統領選をタカ派戦略で戦い抜く決意を示したものと考えられる。共和党のジュリアーニに対し、民主党の最有力候補であるヒラリー・クリントンは、「イランに対する軍事攻撃を辞さない」と公言。こちらもネオコン迎合の論調を隠すことがない。
米国では「ユダヤ票の獲得が当落を決める」と言われている。それが事実か否かは別として、大統領候補がユダヤ票の取り込みに躍起になるのは常識なのだ。大統領選を来年に控えていることがネオコン復権の一因と言っても良いだろう。
米国とイスラエルの微妙な関係
ネオコン主導によるイラク戦に最大の危機感を抱いたのは前イスラエル首相のシャロンだったろう。シャロンは右派強硬シオニストであり、その立場に立って入植運動を積極的に実施してきた。シャロンはまさに、イスラエルの大地に立つシオニズム運動家だった。
イスラエルとは遠く離れた米国のシオニストたちは、「エレツ・イスラエル(大イスラエル主義)」を唱え、米国を使って中東大混乱を演出した。在米ユダヤ人、ネオコン勢力たちの間には、イスラエル国民の安寧への配慮など微塵もないことをシャロンは読み取った。ネオコンと歩調を合わせることはイスラエル崩壊に繋がる――。そうした危機感を持ったシャロンは、右派強硬路線から転向、世俗国家イスラエルの存続を基本政策とした。だが、その転向直後にシャロンは倒れ、政界から引退することになってしまった。
シャロンの後を継いだのは、同じ世俗路線を継承するオルメルト政権だ。オルメルトはシリアとの和解を進めるなど、従来の強硬右派路線を軌道修正し、中東全域の和平模索にイスラエルの未来を託している。しかしそれは、在米ユダヤ勢力、ネオコンの主張とは明らかに対立するものだ。
ネオコンが復権すれば、イスラエルの政策と対立することは火を見るよりも明らかだ。つまりこれまで蜜月関係にあった米国=イスラエル間が、捩れて歪になることが予想される。それは現在すでに存在している米国内の思想的対立、文明的対立の激化を招き、さながら「文明内戦」の様相を呈することを予測させる。米国の迷走が、さらに混乱混迷の坩堝に陥り、世界的な「文明の衝突」を招く可能性が高まっている。
英露の外交官追放合戦と、米ソ冷戦を越える激しい対立状況。中東やイスラム世界の激変。それに加えてコソボ内戦、中国問題、北朝鮮問題……。難問を抱えた世界は、まさに世紀末的ハルマゲドンを呼び起こす直前にあると言って良いだろう。
こうした世界的混乱、混迷の中で行われたわが国の参議院選挙で、自民党を初めとする与党が大敗を喫した。
安倍が唱える「戦後レジームからの脱却」とは
安倍晋三政権は「戦後レジーム(体制)からの脱却」を主要政策に掲げ、その柱の一つとして公務員制度の見直しを進め、憲法改正のための国民投票法案を成立させたりしていた。だが参議院選挙の争点の中心は「年金問題」となり、閣僚の不祥事や不用意な発言が与党の足を引っ張った。国民大衆は間違いなく与党「=自民党+公明党」にNOを突きつけたのだ。
年金記録の消失や不払い、不正使用については40年以上も前から何度も何度も、ときには過激に報道されていた。それがなぜか今年5月になって突如大問題として浮上し、全マスコミが束になって騒ぎたてたのだ。
年金問題がこれほど大きな話題になった理由として、「これ以上隠し続けることができなかった」「野党の追及が厳しかった」「マスコミが膨大量の実例調査を明らかにした」等々と分析されている。だが、本当にそれだけなのだろうか。参院選与党大敗を演出するために作り上げられた仕掛けだったのではないのか。――実際、参院選与党大敗北は、年金問題が真剣に語られ始めた時点で、決まったも同然だったのだ。
先の国会で安倍晋三は『改正国家公務員法』について以下のように述べている。
「公務員の世界に能力・実績主義を導入し、各省庁による再就職斡旋を禁止するとともに、退職後の元公務員による現職公務員への働きかけに関し、罰則付き行為規制を新たに導入する法律を成立させることができました。これは、戦後の官僚主導を支えてきた旧式の公務員制度を解体し、新たな時代にふさわしい制度として再生する礎となります。この法律によって、公務員制度改革の最大の難関は突破いたしました」
公務員の終身雇用制を撤廃し、天下りについても省庁とは独立した「人材バンク」を通すことで透明化させることを決定。さらに民営化などを進めることが可能な総合的公務員制度改革を進めている。
これはいわゆる「五五年体制」によって構築された、国家官僚組織と労組との共存共栄体制を破壊しようとする行為である。――少なくとも官公労はそう感じたはずだ。
かつて小泉純一郎は「自民党をぶっ潰す」と叫び、改革を表面に押し出し、「郵政民営化の是非を国民に問う」として衆院選に討って出た。小泉純一郎は郵政官僚やその支配下にある国会議員などを「抵抗勢力」と呼んだが、官僚全体を敵に回したわけではなかった。極論すれば小泉純一郎は、200兆円の郵貯を郵政省支配から金融庁の下に置いただけであり、それは利権争奪戦に過ぎなかったわけだ。小泉政権を継承すると言って登場した安倍晋三は、利権争奪戦を仕掛けたのではなく、官僚・公務員が貪り続けてきた利権体制そのものを破壊しようとしたのだ。
これまで膨大な税収の上で胡坐をかき、生涯、途轍もなく甘美な生活を保障されてきた権利を奪われることを恐れた官僚たちは、朝日新聞を中心とする一部大手新聞TVマスコミを動員して安倍叩きを開始した。その仕掛けに、庶民大衆は乗せられてしまった。与党内にも官僚に同調する動きもあり、年金問題という爆弾が炸裂したのだ。その爆弾は見事に与党大敗北という結果を生んだが、安倍晋三は首相の座にしがみついたままだ。参院選後から安倍降ろしが激化しているのは、この爆発の余韻とも言えるだろう。しかしこの爆発がこの先、何を呼び込むか、官僚にもわかっていないのではないだろうか。
文明内戦は新たな戦国乱世となる
参院選において、どのような情報操作が行われ、どんな勘違いがあったかを考える状況ではない。国民は自民党政権にNOという審判を下した。国民大衆の審判を幸甚なものに置き換える作業こそ、現在の日本に与えられた使命である。
安倍晋三が掲げた「戦後レジーム(体制)からの脱却」とは、米国に隷属し属国状態にある日本が真に独立しようとする意志を表したものである。だからこそ米国は安倍政権の後ろ盾とならず、それを見越した官僚組織やマスコミが安倍叩きを徹底的に行ったのだ。こうした状況に陥ったことが、かつてあったろうか。――かなり異なった状況ではあるが、戦後60余年にわたる米国従属状態に似た歴史を、わが国は持ったことがあった。室町時代のことである。
中学・高校あたりの一般的な日本史ではあまり語られることがないのだが、足利将軍第三代の義満は、当時の中国(明王朝)から「日本国の王権を保障」されることを積極的に受け入れたのだ。つまり当時の室町幕府は、明王朝の冊封体制下に組み込まれた――明の隷属国家となったのである。その結果、足利一族は明王朝との「後朱印船貿易利権」を独占し、経済的発展を遂げることができた。金閣寺・銀閣寺に代表される煌びやかな室町文化とは、明に隷属した結果もたらされたものだった。
しかし、日本古来の伝統、文化、そして何より国の有様を蔑ろにする足利幕府の限界が徐々に露呈していった。そして日本は、応仁の乱、下克上、戦国乱世を経ることで、明王朝の冊封体制から脱却、これを超克することができた。外国の冊封体制から脱却するためには、内乱にも匹敵する苦痛を覚悟しなければならないことを、歴史が教えてくれている。
今回の参院選に関して、多くの識者の意見が一致している。それは「民主党が勝ったのではなく、与党が敗れたのである」という認識だ。事実、自民、公明の大敗と同時に、共産党、社民党も議席を減らしている。躍進した民主党ばかりが目立つが、非自民のミニ政党の得票にも注目すべきである。
秋の通常国会に向けて、安倍降ろしだけではなく、さまざまな動きが水面下で戦わされている。自民党分裂、民主党分裂といった噂も囁かれる状況だ。まさに下克上の時代が到来している。そんななか、突如、韓国の盧武鉉大統領が北朝鮮の平壌を訪れ、南北会談を行うことが発表された。
胡錦涛政権は北朝鮮問題にどう対処するか
8月8日、北朝鮮と韓国が同時に、「8月28日〜30日に、盧武鉉大統領が平壌を訪れて南北会談を行う」ことを発表、このニュースは激震となって世界中を駆け巡った。
朝鮮総聯本部土地建物売却事件に関し、これを北朝鮮に対する攻撃と見做していた金正日は、「安倍晋三首相在任中は日本との対話を拒否する」と表明(北朝鮮外交官高官の話『朝鮮新報』7月17日)、北朝鮮国内で激しい反日デモを繰り返していた。参院選自民大敗を喜んだのは「北朝鮮と官僚と朝日新聞」と揶揄する週刊誌も出たほどで、安倍自民の参院選大敗は金正日を喜ばせたことは間違いない。
選挙後、安倍降ろしが公然化するなかで、韓国・北朝鮮の南北会談は、安倍晋三にとってはますますのダメージとなる。6カ国協議の場で日本の立場がいよいよ希薄なものになるからだ。
では、今月末に行われる南北会談の主目的は「安倍叩き」の一環なのだろうか。――もちろん、そうではない。しかし、その目的は定かではない。
韓国・北朝鮮両国は今回の首脳会談の位置づけを、「北南首脳の対面は歴史的な6・15北南共同宣言と『わが民族同士』の精神にのっとって、北南関係をより高い段階へ拡大、発展させ、朝鮮半島の平和と民族共同の繁栄、祖国統一の新たな局面を切り開くうえで重大な意義を持つことになるであろう」と語っているが、それはあくまで表向きの話だ。実質はどこにあるのか?
「盧武鉉が大統領職を降りる前に成果を残したくて取引した結果」という観測もある。また、「食糧、燃料、資金支援を求める北朝鮮からの要請」といった見方もある。だがこれらは単なる憶測に過ぎず、真実とは遠いようだ。
本紙が得た情報によると、南北会談は「北朝鮮の『統一戦線部』(統一戦線事業部)から韓国の『国家情報院』に持ち込まれた話」であり、その時点では「議題はまったく決まっておらず、北朝鮮側から食糧・燃料・資金・投資その他一切の支援要求はない」というのだ。
南北会談の細部は不明ではあるが、その本質は誰の目にも明らかだ。すなわち金正日・北朝鮮は米国と結び、米国の手先となって対中国恫喝の先鋒となることを世界に表明したということである。これに対して、中国・胡錦涛政権はどう対処するのだろうか。
かつて金日成時代の1993年、北朝鮮はIAEA(国際原子力機関)から脱退し、核査察を拒否。核開発疑惑が強まったことがあった。これに危機感を抱いた米国は、ジミー・カーター元大統領を北朝鮮に派遣(1994年6月)。金正日との話し合いに漕ぎつけた。
北朝鮮と米国との間には、朝鮮戦争停戦後ずっと水面下の回路が存在していたというのが、多くの専門家の見方であった。ところがその回路が不十分、もしくは中断された結果、両者の食い違いが生じ、それが金日成・カーター会談で修復されたと分析が的を得ていると本紙は判断している。
カーターとの会談では、金日成は終始ご機嫌で、にこやかに笑顔が世界中に報道されたものだった。このとき金日成は、カーターの「韓国の金泳三大統領との南北会談提案」の申し出を受け入れたばかりか、「在韓米軍の存在は意味を持たない。米軍は韓国ではなく、北朝鮮に駐留したほうが良いのではないか」といった提案まで行ったとされる。この提案は明らかに米国従属、中国敵視と見做されるものだ。この会談の直後、金日成は急逝してしまった。そして、北朝鮮と米国を結ぶ秘密回路は機能しなくなっていたと考えられる。
拉致被害者、曾我ひとみさんの夫であるジェンキンス氏が日本に来た時点から、どういった経緯かは不明だが、米朝の間に秘密の交渉窓口が復活していったと考えられる。そう考えれば、核を巡る6カ国協議の進展も、そして今回の南北会談も、米朝の仕掛けのなかの出来事であることが理解できる。
問題は中国がこれにどう対処するかである。かつてケ小平 は、北朝鮮・金日成が米国の軍門に下り中国敵視政策を採ろうとした時点で、肚を据えた大決断を下した。では、現在の胡錦涛政権に同じことができるだろうか。いや、時代が変わり情勢が変わった北朝鮮に対し、トップを制裁するだけでその流れを食い止めることができるのだろうか?中国政府の決断によっては、北東アジアはますます混乱混迷に陥るかもしれない。
揺れ動く世界、激動の北東アジア――。いまわれわれは間違いなくその時代を生きている。個人一人ひとりの動き、一人ひとりの生き様こそが、明日の日本を動かしていく。そのことを真実、肚の底に命じておきたい。
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