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http://www.news.janjan.jp/government/0708/0708090549/1.php
左翼陣営の後退招く「確かな野党路線」 いつまで続けるのか 2007/08/10
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参院選は自民・公明の歴史的大敗、民主の圧勝という結果となり、ともあれ日本の二大政党制は新しい段階を迎えた。
そういうなかで、日本共産党は選挙区1、比例代表1の合計2議席を減らし、非改選の4議席と合わせ9議席から7議席に後退した。7月30日付の常任幹部会声明「参議院選挙の結果について」は、「日本共産党は、比例代表選挙で3議席を獲得しました。これは、1議席減の結果ですが、得票数では、前回及び前々回の得票を上回る440万票(7.48%)という地歩を維持することができました」とのべ、後退・敗北を認めず、あたかも現状維持ができたかのように取りつくろっている。
だが、宮地健一氏のホームページでの分析によれば、投票率・有権者の増加からみて、共産党は本来223,046票増えていなければならず、前回比45,364票しか増えなかったのでは、実質、177,682票の後退、という。いずれにせよ、「確かな野党」という訴えが有権者の心に響いていたら、こんなみじめな結果にはならなかったろう。主張が有権者に受け入れられなかったという点で、これはまさに敗北以外の何物でもない。
共産党は、今度もまた抜本的な自己批判・敗因分析はおこなわず、不破・志位・市田氏らひと握りの党特権官僚の名誉と保身のため、ごまかしの選挙総括をおこなうのだろう。すでに前記の常任幹部会声明のなかで、「東京、大阪、京都などで得票を増やしました」とのべているのが、相も変わらぬ手口である。いくつかの要因で得票が伸びた選挙区だけを取りあげ、他の選挙区でもこれらの選挙区のように地方組織や支部が戦っていれば、「全国的にも勝てたはずだ」という奇弁である。
共産党の後退は、もはや「歴史的趨勢」であって、あれこれの選挙戦術のレベルで論ずべきものではない。そこで、かねて懸案になっていた、このテーマについて、とりあえず第1稿を提示することとした。目下、資料を収集中で、論点の完全な展開は期しがたいが、とりあえず、この問題で私が日頃あたためている考え方の骨子だけでもあきらかにしておきたい。
そもそも、政党とは何か。こういう場合によく使われる『広辞苑』によれば、「共通の原理・政策をもち、一定の政治理念実現のために、政治権力への参与を目的に結ばれた団体」とある。1989年2月10日付の奥付をもつ、新日本出版社発行『新編社会科学辞典』によると、政党とは「資本主義社会における階級闘争の発展の産物。共通の理念と政策で結合される階級のもっとも活動的な人びとの結集体で、政治権力の獲得、または維持を根本的な目的とする政治集団」とある。自明なことだが、権力の獲得を抜きにしては政党について語る意味はなく、権力の獲得を目指さない集団はせいぜい「政治グループ」に過ぎず、「政党」とはいえない。
日本共産党は、近年、各種選挙のたびに「確かな野党」を唱え、この「確かな野党」の前進こそ日本の未来を切り開くと叫び続け、民主党はもちろん、社民党、新社会党を含めすべての野党を批判・攻撃してきた。
結果はどうか。「確かな野党」の躍進が見られなかっただけでなく、日本の左翼陣営全体が停滞・後退を余儀なくされてきた。いまや「最大の政治勢力」といわれる無党派層は、こうした左翼陣営の低迷ぶりに愛想をつかし、変化・変革の望みを二大政党制の一方の担い手である民主党に託さざるを得なくなっている。それが、今回の参院選の結果にほかならない。
今回の参院選でも、とりわけ前半戦で共産党は、もっぱら民主党批判に精力をついやした。「自民党と少しも変わらず、それより悪い」という決めつけである。それは、かつて、反ファシズム人民戦線戦術を採用する以前のスターリン時代に国際共産主義運動の中ではびこっていた「社会民主主義主要打撃論」を彷彿とさせるほどである。
「社会民主主義主要打撃論」とは、労働者階級が共産党支持に目ざめないのは、その前に社会民主主義が立ちふさがっているからであり、運動のなかで主要な打撃を加えるべきは社会民主主義であるというセクト的戦術を指す。ヒトラー台頭期、ドイツ共産党はヒトラー攻撃よりドイツ社会民主党攻撃に力を注ぎ、結果としてヒトラーの権力掌握に道を開いてしまった。今回の参院選における共産党の「確かな野党」路線は、さしずめ日本版「民主党主要打撃論」とでも言うべきものである。
ところで、議会制民主主義のもとで政党が政治権力を獲得する道は、二つしかない。ひとつは、自らが過半数を制する第一党となることである。それが不可能なら、現に存在する諸政党の組み合わせ・連合により多数派を形成し、この多数派の手に政治権力を握ることである。日本の現状で、共産党が第一の道を選べる余地は絶望的に皆無である。だとしたら、後者の道、つまり諸政党の組み合わせで多数派を形成し、共産党もこの戦列に一員として加わるという方法しかない。
参院選を前に5月17日に開かれた共産党第四回中央委員会総会への幹部会報告で志位委員長は、自民・公明批判に続いて、民主党に関し「三中総」を引用しながら、「日本の進路にかかわる重大問題について、民主党が自民党政治と同じ流れに合流し、財界からも、アメリカからも信頼されるもう一つの保守政党への変質をとげた」「今日の民主党は、自民党政治の『三つの異常』を共有する政党であり、政治の基本でどちらかが『よりまし』とはいえないのであります」と決めつけた。
はたして、民主党は自民党と同列かそれ以上の反人民的政党なのだろうか。だとしたら、日本の前途は絶望的であり、今回の参院選における国民の民主党選択もとんでもない過ちを犯したことになる。常任幹部会声明が「今回の選挙での自公政治にたいする国民の審判は、それにかわる新しい政治の方向と中身を探求する新しい時代、新しい政治的プロセスが始まったことを意味するものです」とのべていることとも矛盾する。
共産党は別格として(上意下達のどうしようもない一枚岩政党だから)、どの政党も内部に矛盾をはらんでいる。自民党内にさえ加藤紘一氏のように、「専守防衛」の立場から、『我、自衛隊を愛す 故に、憲法9条を守る 防衛省元幹部3人の志』(かもがわ出版)を推薦している人もいる。公明党ですら憲法9条改悪には反対せざるをえない。民主党にも、菅代表代行のような市民運動・護憲派もいれば、前原グループのように自民党そこのけの改憲・集団的自衛権推進派がいる。
8月7日付朝日新聞(大阪本社版)の「朝日・東大調査」によれば、「(民主党は)これまでの調査では衆参を問わず6〜7割の議員が改憲賛成派だったが、今回、改憲賛成派が4割を割った」と指摘している。政党というものは、世論の動向次第で変わっていくものなのである。だからこそ、多数派形成の望みもあるのだ。
要は、こうした各党派内の矛盾を正確につかみ、どうしたらこうした矛盾を顕在化させることができるかを探求する努力と能力である。それを、「正しいのはわが党だけ。他党はすべてだめ」(「確かな野党」というのは、正確にはそういう意味である)と十把ひとからげに切って捨てるような児戯に類するやり方では、多数派形成はもとより、みずからの生き残りすら危険にさらす結果となろう。その意味で、「確かな野党」路線は分裂主義・敗北主義の路線である。それは、多数派形成に逆行する分裂主義であり、政権への展望をあらかじめ放棄する敗北主義である。
かつて、共産党は「○○年代の早い時期に民主連合政府を」というスローガンを掲げたことがある。党綱領に「よりましな政府」という規定があったこともある。しかし、最近はとんとそういう言葉を聞いたことがない。共産党が弱小化し、もはや統一戦線の指導権をとれる可能性がなくなったためだろうか。
私は日本のそう遠くない将来への希望として、社民党、新社会党、共産党、無党派左翼が一つに合流し、単一の社会民主主義にもとづく左翼政党(名称は「共産党」以外ならなんでもよい)が生まれることを望んでいるが、現状では、そこまで到達する以前に、少なくとも国会レベルでは共産党の議席がゼロになるのではないかと真剣に憂えている。そんなことにならないためにも、この参院選での後退・敗北を、上意下達ではなく下からの点検により、しっかり総括してもらいたいものである。
筆者ホームページ:http://www17.plala.or.jp/japantomorrow/
(巌名泰得)
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