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政府危機に陥った安倍政権 改憲・新自由主義路線にNO! 安倍内閣打倒へ追撃の闘いを = 週刊かけはし
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投稿者 ダイナモ 日時 2007 年 8 月 09 日 21:27:08: mY9T/8MdR98ug
 

http://www.jrcl.net/web/p01b.html

改憲・新自由主義路線にNO!
安倍内閣打倒へ追撃の闘いを

さらに追いつめられた安倍


 七月二十九日投票の参院選で「歴史的大敗」を喫した自民党内では、開票の最終結果がいまだ確定しないうちに安倍が「続投」を宣言したことへの批判と不満が噴出し、いっそうの大混乱に陥っている。
 七月二十九日、まだ投票が終わらないうちの午後の段階で、中川秀直幹事長、青木参院議員会長、森元首相が「三者会談」が行って、自民党が四十議席を割るようなことがあれば安倍首相の辞任は避けられないという判断を下し、その結論を中川が安倍に持っていったが、安倍は「いかなる結果になろうとも自分はやめない」と一蹴したことが報じられている。実際、一九八九年の参院選で自民党が三十六議席しか獲得できず大敗を喫した時、当時の宇野首相はあっさりと政権を投げ出した。一九九八年の参院選で橋本・自民党が四十四議席と大きく議席を減らした時、橋本は辞任せざるを得なかった。
 今回の参院選での自民党の敗北は、この二回の前例を上回るほどの深刻な打撃であり、安倍が早々に「続投」を決断したことで、党内からの批判を抑えられなくなったことは当然である。まして安倍が小沢との党首討論で「私を選ぶのか、小沢さんを選ぶのか」と「政権選択選挙」であることを明言した以上、安倍の責任が自民党内から厳しく問われることは避けがたくなったのだ。
 中川幹事長、青木参院議員会長は、引責辞任することになった。安倍は八月一日、政治資金問題で厳しい批判の対象となりながら、自ら擁護し続けてきた赤城農水相をついに更迭せざるをえなかった。政権発足十カ月で四人目の閣僚交代である。しかし「赤城更迭劇」は、安倍の責任追及の声を弱めることにはならなかった。小泉―安倍政権の新自由主義的な「弱者切り捨て」政策によって地方・業界の支持基盤を「ぶっこわされ」た自民党内からの怨嗟の声は、いっこうに収まる気配を見せてはいない。
 しかし、旧来の「自民党内政権交代」を可能にしていた利益分配的政治統合システムを基盤とする派閥構造は、二〇〇五年の郵政民営化解散を頂点にした小泉前政権の新自由主義的政治・経済・社会再編を通じて決定的に弱体化している。それが、安倍に対する自民党内の批判が大規模な「権力闘争」へと顕在化していく可能性を、当面のところ限定的なものにしている。
 アメリカのグローバルな軍事戦略への組み込みと、それが強制する「集団的自衛権」の行使を「合憲」化するための九条改憲、そして新自由主義的な政治・経済・社会再編の強行=労働者保護的な規制の撤廃と市場原理による福祉の切り捨てという枠組みから、自民党は絶対に逃れることができないのであり、そのことが派閥抗争的権力闘争の余地をきわめて限られたものにしているのである。
 問題は、アメリカ帝国主義の軍事戦略に一体化する「戦争国家」体制の構築と新自由主義的再編の推進を通じた「戦後レジームからの脱却」が、不可避的に拡大する抵抗を抑え、民衆を動員するための強力なリーダーシップを必要とするということである。安倍政権の十カ月は、彼がその任に耐えられなかったことを示した。そして現在の自民党の中にも資本の強権的支配が必要とするそうした「リーダーシップ」を発揮しうる候補者はいない。
 いずれにせよ、参院での与野党逆転によって安倍内閣の政策展開能力は決定的に削がれ、「解散・総選挙」の日程は早まらざるをえないだろう。かくして、今回の参院選における安倍・自民党の敗北は、継続する「政府危機」の新たな始まりでもある。

テロ特措法延長と民主党

 安倍内閣は秋の臨時国会を早ければ八月中にも召集するために八月二十七日前後に内閣改造を行うと報じられている(「朝日」8月5日)。秋の臨時国会での最大の焦点とされているのは十一月一日に期限が切れる「テロ対策特措法」の延長である。
 参院で与野党逆転を実現した民主党は、目標としてきた「政権交代」を手繰り寄せるためにも、「政権責任政党」としての能力を実地に示すことが迫られる。そして、そのための国際的枠組みであるグローバルな「日米軍事同盟」の強化の要請に、民主党がどう対応するかが厳しく問われることになったのである。
 小沢一郎民主党代表は、「テロ対策特措法」の延長に反対する方針を明らかにした。鳩山幹事長もそれに同意した。しかしシーファー駐日米大使は、小沢代表に対して会談を求め「テロ対策特措法」の延長に反対しないよう強力なプレッシャーをかけている。一度はシーファーとの会談を断った小沢は、会談に応じる意向に転じたと報じられている。
 他方、民主党前代表の前原誠司は、八月四日の読売テレビの番組で「テロ特措法延長に反対して米国との関係をまずくしては、まさに政権担当能力が問われる」と語り、同法の延長が必要だとする見解を述べた。菅直人代表代行も八月五日のフジテレビの番組で「テロ特措法」延長問題について「もともと多国籍軍を一切支援すべきではないという姿勢で反対したわけではない。自衛隊派遣そのものに反対したイラク特措法とは違う」と述べ、「柔軟な対応」を取る考えを示した。菅は「二〇〇一年の同法制定時に国会の事前承認が取れれば賛成できるところまでいっていた」と指摘し、「事前承認」などの条件が満たされれば延長に賛成することも示唆している。
 したがって「政権交代可能な二大政党制」が現実となった秋の臨時国会で、「戦争ができる国家」体制―九条改憲に反対する運動にとって、「対テロ戦争」のための自衛隊海外派兵を推進する法案への民主党の最終的同調を阻止し、自衛隊のインド洋、そしてイラクからの撤退を勝ち取る闘いが決定的に重要なものとなっているのである。アフガニスタンへの米軍の侵攻と占領支配は、イラク侵略・占領と一つながりのものである。そしてイラク占領支配の完全な破綻と同様に、アフガニスタンにおける米軍を中軸としたNATO軍の占領、タリバンなどの「武装勢力掃討作戦」も泥沼状況に陥っている。イラクへの自衛隊派兵には反対だが、アフガニスタンでの「対テロ戦争」は正しいという論理は成立しない。アフガニスタンの現実がそれを示しており、アフガニスタンの危機はパキスタンのムシャラフ軍事独裁政権の危機と連動している。
 そして「テロ特措法」の延長に反対し、同法を廃止して、アフガン占領・民衆虐殺を支える自衛隊のインド洋における「支援活動」をやめさせる闘いは、「有識者懇」による「集団的自衛権行使合憲」報告に反対し、来年の通常国会にも提出が企てられている米軍と自衛隊の海外における共同軍事作戦のための「安全保障基本法案」(仮称)を阻止する運動と結びつけて展開しなければならない。
 参院での「与野党逆転」状況を、改憲阻止の運動にとって有利に活用することができるかどうか、この点において民主党への強力なプレッシャーをふくめた労働者・市民の大衆的闘いの真価が問われることになる。

「新しい時代」の「新しい政治」

 参院における「与野党逆転」と、安倍政権の危機の拡大は、改憲・「戦争国家体制」と新自由主義に反対する運動が、このチャンスを利用しつつ、民主党からいかに政治的に独立して「二大政党制」の枠組みを突破する内容を持つことができるのかを突きつけている。
 「護憲勢力」としての共産、社会両党は、民主党の一人勝ちの中で、議席、得票率ともに後退し、議会政治においてますます周辺的存在となってしまった。新自由主義的「構造改革」がもたらす格差と貧困と排除への怒り、米国のグローバル軍事戦略に追随した改憲と「戦争国家」への労働者・市民の不安と批判は、共産、社民両党への支持につながらなかった。社民党は、参院選においてそうであったように民主党との「野党共闘」路線にいっそうひきずられざるをえないだろう。
 「たしかな野党」路線を掲げ、今回の参院選においても民主党批判のキャンペーンを強化してきた共産党も、明らかに「転換」の圧力にさらされている。
 共産党は七月三十日の「参議院選挙の結果について」と題した常任幹部会声明の中で、「日本共産党は、自民・公明政治にたいするこの国民的審判のうえで、自公政治に正面から対決する『たしかな野党』として、とくに政治論戦で一定の役割をはたしえたことを確信しています」と述べた上で、次のように主張している。
 「今回の選挙での自公政治に対する国民の審判は、それにかわる新しい政治の方向と中身を探究する新しい時代、新しい政治的プロセスが始まったことを意味するものです。この選挙の結果は、自民・公明の政治にかわる新しい政治はなにか、という問題について、国民の選択が明らかになった、ということではありません。国会論戦でも、国政選挙でも、国民の声にこたえる政治とはなにかという問題が、ますますその比重を大きくしてゆくだろうことは、疑いありません」(「しんぶん赤旗」7月31日)。
 「新しい政治の方向と中身を探究する新しい時代、新しい政治的プロセス」の始まり、というこの規定は、きわめて微妙な内容をふくんでいる。これは「たしかな野党」路線、あるいは独善的セクト主義からの一定の転換への模索を意味しているのではないだろうか。それは「新たな国政選挙を迎える次の機会には、政治の本当の改革者の党、新しい政治の建設者の党として、かならず前進・躍進を期す決意です」という文面にも表現されている。
 この評価は、同常任幹部会声明が掲載された「しんぶん赤旗」の同じ1面コラム「潮流」欄で「二十二歳の女性」から党本部によせられたメールを紹介して書かれていることとも対応している。この女性は日本共産党の政策に「心から同調していた」けれど、「自公を、安倍総理をひきずりおろすため、私自身……票が分散しないよう苦肉の策を講じることになりました」と民主党に入れたことを示唆していた。彼女は「しかし」と続けて「日本共産党を支持する気持ちはまったく変わっていません。自信をもってがんばっていただきたいです」と書いていたそうだ。この若い女性からのメールを取り上げた「潮流」の筆者は「〇七年参院選は、日本の新しい変化を予想させます」と結んでいる。
 民主党に投票した共産党の支持者のメールを取り上げて「日本の新しい変化」と規定するこの立場は、確かに共産党が直面する困難と「転換」への苦闘を率直に表現しているとも感じられる。
 この共産党の困難と「変化」への予感が、民主党との関係でどのような方向へ向かうのかは定かではない。そして、参院選での「与野党逆転」によって次期衆院選が「政権交代選挙」としての性格が浮上していく中で、労働者・市民運動やNGO、NPOの運動が民主党との関係をさらに強めていく力学が働くことも予測される。
 新しい左翼政治潮流の形成をめざすわれわれの闘いは、改憲と新自由主義に対抗する運動の社会的広がりに根ざしながら、柔軟な共同戦線ときわめて原則的・目的意識的なオルタナティブに挑戦しなければならない。川田龍平さんの当選の中でかいま見ることができた「新しい変化」への予感を、憲法改悪という支配階級の攻撃を阻止する強いられた政治過程に正面から取り組む中から、現実のものとするために奮闘しよう。
(8月5日 平井純一)

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