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ネオリベラリズムとネオコンの破綻(北沢洋子(国際問題評論家) )
http://www.asyura2.com/07/war87/msg/108.html
投稿者 近藤勇 日時 2006 年 12 月 18 日 19:54:10: 4YWyPg6pohsqI
ネオリベラリズムとネオコンの破綻
2006年12月
「06年はブッシュ大統領の敗北の年」 北沢洋子(国際問題評論家)
http://www.jca.apc.org/~kitazawa/
はじめに
昨年は、世界を変える3つの大きな事件が起こった。
第一に米国の中間選挙で民主党が圧勝したこと。これは、ブッシュ大統領をはじめとするネオコン一派の敗北である。
第二に、ラテンアメリカに次々と左派政権が誕生したこと。いずれもネオリベラリズムに反対し、貧困根絶を最優先課題にしている。
第三に、ネオリベラルなIMF(国際通貨基金)、世銀(国際復興開発銀行)、WTO(世界貿易機構)という強大な国際経済機関が、存在の危機に陥り、その正当性を失った。
1.米中間選挙での民主党の勝利とネオコンの敗北
11月7日の米国の中間選挙では上下両院で民主党が多数派を独占した。これは12年ぶりのことであった。これは民主党への信任投票ではない。
むしろ「イラクからの米軍撤退」を要求する世論がブッシュ大統領に「ノー」を突きつけたといえよう。これには、息子をイラク戦争で失った母シンディ・シーハンさんの座り込み闘争をはじめとした、女性たちの粘り強い反戦運動が大きく貢献した。さらに、市場原理主義、格差の拡大、貧困の増大に抗議する若ものたちの反グローバリゼーションの大規模なデモも無視できない。
中間選挙の結果、ブッシュ政権は、今後2年間“死に体”になってしまった。そして米軍とともに唯一イラクに攻め入った英国のブレア首相の退陣も間もない。
「ネオコン」とは「ネオコンサーバティズム」を略したもので、新保守主義と訳される。ネオコンは、一切の国際協調を排し、テロを力で持って押さえようとする。この一派は、ブッシュ大統領をはじめ、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ボルトン国連大使、ウォルシュビッツ世銀総裁など、米国内だけでなく国際政治のレベルでもそれぞれ最高ポストを独占してきた。
ブッシュ大統領は、ラムズフェルド国防長官の解任を余儀なくされた。またボルトン氏が国連大使に再任される可能性は極めて低い。
これは、9.11以来、国際世論を無視してアフガニスタン、イラク戦争など一連の対テロ戦争を一方的に強行してきた「ネオコン」一派の敗北であった。
彼らが国連の反対を押し切って強行してきたイラク戦争の結果は、3,000人を超える米軍の戦死者を出し、さらに「大量破壊兵器」やフセイン政権と「アルカイダとの関係」という戦争の大義も崩壊した。イラクの復興はもとよりイラク国内の治安さえ維持できない状況になった。誰の目にもイラク戦争の失敗は明らかになった。11月末に、今日、米軍占領下のイラクでは、米国の傀儡と見なされれば、首相は務まらない状況にある。
2.ラテンアメリカ大陸では左派政権が大多数に
昨年メキシコ以南のラテンアメリカでは総選挙が続いた。
まず、05年12月、ボリビアの大統領選挙では、エボ・モラレス氏が勝利した。彼はラテンアメリカでは最初の先住民出身の大統領となった。そればかりではなく、モラレス大統領は、「共同体社会主義」を唱え、ベネズエラのチャベス大統領、キューバのカストロ首相の社会主義に賛同している。
ブラジルでは、11月に労働党のルラ大統領が再選された。ルラ氏は、ベネズエラのチャベス氏のように、強い反米色を打ち出していないが、貧困の根絶を最重要プログラムに掲げている。
同じ時期、中米のニカラグアでも大統領選挙が行われ、ダニエル・オルテガ氏が当選した。これはサンディニスタ政権の16年ぶりの復活である。現在、オルテガ氏はかつての急進的社会主義政策を現在軟化させているとはいえ、親キューバ、反市場原理主義、そして貧困根絶を最優先させていることは間違ない。
さらに、11月末のエクアドル大統領選では、左派のラファエル・コレア候補がライバルのバナナ大富豪を破って勝利した。彼はベネズエラのチャベス大統領に同盟し、米軍基地の撤廃と天然資源の国家管理を公約している。エクアドルはベネズエラやボリビアなどのように親米のアンデス条約から脱退し、ブラジル、アルゼンチンなどのMERSCOR(南米南部市場)に加わると宣言した。
これまで「米国の裏庭」と呼ばれ、政治にも、経済的にも米国の属領であったラテンアメリカ(カリブ海地域を含む)の国ぐには、今日、MERSCORなど米国から独立した経済圏を持ち、政治的にも従属国でなくなってきた。多分、これまでのような親米国は、北米自由貿易地域NAFTAに加盟しているメキシコをのぞいては、エルサルバドル、コロンビア、ペルーなど数カ国にとどまるだろう。
残りのほとんどの国は、従来の金持ち優遇政策をやめ、ネオリベラルな市場原理主義政策の結果拡大した格差の解消と貧困の根絶を最重要課題とする点については共通している。しかもこれら左派政権は、すべて米国が唱える民主的な選挙によって誕生し、急進的な農民運動と労働組合の支持を受けている。これまでのように米国は、クーデターで覆すことが出来ない。
その中で、ベネズエラ、ボリビアのように社会主義を唱えている国でも、かつてのソ連・東欧などの共産党の独裁、生産手段の国有化という硬直化した社会主義ではない。
今日、ラテンアメリカのほとんどの国の社会主義とは、貧困を根絶するための富の分配と、利潤の追求ではなく人びとの連帯をもとにした参加型民主主義である。
米国は、NAFTAを拡大して、キューバを除く西半球34カ国を米国の覇権の下に置き、米資本の市場にするために、04年までに米州自由貿易地域(FTAA)の創設を提案していた。これは、昨年のアルゼンチンのマルデルプラタで開かれた第3回首脳会議において、完全に失敗した。
3.IMF、世銀、WTOの機能低下
05年末から06年中、IMF(国際通貨基金)、世銀(国際復興開発銀行)、WTO(世界貿易機関)という強大な国際経済機関の機能が著しく低下した。
05年末、ブラジルとアルゼンチンが、突然、IMFの債務を前倒し返済すると宣言して世界を驚かした。ブラジルの返済額は154億6,000万ドル、アルゼンチンは99億ドルにのぼった。
この2カ国は、IMFの大口借り手、つまり最大の顧客であった。ブラジルは1位、アルゼンチンは第3位であった。なぜこの2カ国は、IMFの債務を返済したのだろうか?
言うまでもなく、IMFの支配からのがれるためであった。両国は長い経済不況から脱出し、外国投資家が国債を買う意欲を見せ始めた。そこで、大量の国債を発行し、その中からIMFに債務の返済をした。
このような傾向は、他のIMFの大口借り手についてもいえる。たとえば、パキスタン(第2位)、ウクライナ(第4位)なども、IMFと手を切りたいと思い始めている。セルビアはすでにIMFの融資を断っている。2年前、好景気に転じたロシアは、すでにIMFに33億ドルを前倒しして返済した。03年、タイも返済した。
その結果、IMFは財政難に陥った。融資先がなくなったので、利子が入ってこなくなったのである。そしてIMFが最も恐れている「グローバル経済にIMFが果たすべき役割とは何か」という疑問が出てきた。つまり、IMFはその存在価値が問われているのである。
途上国の開発プロジェクトに融資している世銀も、IMFと同様な状態にある。
まず、大口の借り手であった途上国の主要な国ぐにが、条件の厳しい世銀融資よりも、金利の安い国際金融市場から借りることを選ぶようになった。南アフリカなどは、はっきりと世銀からの融資は受けないと宣言している。
世銀は「世銀債」を発行して、国債金融市場から借り入れ、それに手数料を上乗せして、途上国政府に融資するのが主なビジネスであった。これまで、世銀融資がもてはやされてきたのは、長期の融資であることと、担保力のない途上国政府は先進国の市中銀行から融資をうけることができなかったからであった。しかし、現在は、世界的なカネあまりで、金利が安くなっている。
IMFも世銀も、資本は先進国政府からの拠出金であるとはいえ、しょせん金融機関である。借り手がいなければ成りたたない。
昨年7月23日からジュネーブで開かれていたWTO6カ国(米、EU、日、オーストラリア、ブラジル、インド)の閣僚による非公式交渉は、米国がまったく譲歩しなかったために、ついに決裂した。ラミイ事務局長は、WTO交渉は当分の間、凍結すると宣言した。01年にはじまった「ドーハ・ラウンド(交渉)」は失敗したことになった。
このG6閣僚交渉の対立点を単純化すると、米国とEUはブラジル、インドなど途上国から農産物の輸出補助金の引き下げを、日本など農産物輸入国は関税引き下げを、ブラジル、インドなど途上国はEU、日本など先進国から工業製品の関税引き下げを、それぞれ要求されており、相手が妥協しなければ、自らも妥協しないという、いわば“3すくみ”の状況にあった。
80年代、レーガン、サッチャー政権の誕生とともに次々と先進国政府は市場原理主義と小さな政府というネオリベラリズム(新自由主義)の時代に入った。同じ頃、債務危機に見舞われた途上国では、救済融資をテコにして、IMF・世銀が、ネオリベラリズム政策である構造調整プログラムを押し付けていった。その内容は、「財政の均衡」と「貿易収支の改善」を口実にして、公務員の賃下げと解雇、教育、医療、福祉、開発予算の削減、国営企業と公共サービスの民営化、貿易、資本、金融の自由化であった。
90年代にいると、社会主義の崩壊がはじまり、市場経済が世界大に広がった。その結果、ネオリベラリズムも文字通りグローバル化した。中国やベトナムのような社会主義を掲げている国でも、「改革開放」の名の下に、経済ではネオリベラリズムが導入された。
95年にWTOが創設されると、「貿易の自由化」が推進された。これは、途上国に市場開放を強いるものである。貿易の自由化は、民営化とともに、ネオリベラリズム政策の中核をなすものであす。一方、WTOは、米国やヨーロッパ連合(EU)、日本などの先進国には「保護貿易」を保証する。これが、WTOで南北対立が最も激しい理由である。
ネオリベラリズムは、先進国、途上国を問わず、世界大に格差を広げ、貧困を増大させたのであった。日本ではまさに小泉政権が行なったことだ。
このネオリベラリズムをグローバルに推進してきたのが、IMF・世銀・WTOという3つの国際経済機関であった。ここ一年の間に、このトリオが破綻したのは、ネオリベラリズムの終わりを意味するのではないか。
世界情勢は、米国での民主党の圧勝、ラテンアメリカでは貧困根絶を最優先課題に掲げる左派政権が圧倒的多数を占め、IMF・世銀・WTOが機能低下をきたすという歴史的転換期にある。
一方日本では、小泉内閣が、20年遅れてネオリベラリズムを導入した。そして安部内閣は、現在憲法改正など一連のネオコン政策を強行しようとしている。すでに昨年末、その第1歩である教育基本法の改悪は自民党単独で強行採決された。これはまさに世界の趨勢に逆行している。しかし、これは、私たちが闘わねば、何も変わらないのだ。
ネオリベラリズムもネオコンも、すでに世界の人びとが行動をもって拒否したからこそ、破綻した。それは、99年11月、シアトルでの7万人の反WTOデモにはじまり、世界のあちこちで繰り広げられた数十万、数百万の規模の反グローバリゼーションのデモや、01年1月にはじまった10万人を超える世界社会フォーラム、2000万人に達したイラク戦争に反対する地球規模の同時デモなど、青年、農民、労働者、女性、市民のネオリベラリズムとネオコンに反対する人びとの闘いによるものである。
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