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韓冬雪氏 「2大政党制よりも独自の多党制」
曾理2007/07/25
《プロフィール》
韓冬雪。1955年中国・重慶市生まれ。1980年吉林大学日本語学科卒。1986年吉林大学研政治学理論専攻修士号。1987〜1988年関西学院大学法学部政治学、1994〜1995年西南学院大学法学部政治学に留学。吉林大学、中国政法大学、関西学院大学などで教鞭をとり、吉林大学行政学主任教授教授、行政学院院長などを歴任。現在、清華大学政治学部教授。主要著書や論文に:「東北アジア区域連携と中日関係」「政治学原理」「政治学概論」「トウ小平の社会主義民主論」などがある。
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Q.日本の政治学についての感想は?
僕の専門は政治理論であり、日本の政治学が中心テーマではないのですが、日本との縁は長かったです。大学時代は日本語学科で、主に言語と文学を中心に勉強しました。大学卒業後、旧紡績工業部の外事局に入り、しばらく仕事をしていましたが、政治学に興味を覚えて、大学に戻って勉強し始めた。それから、日本に留学と研究活動を重ねてきました。
日本の政治学は、戦前はドイツに大きく影響され、そして戦後はアメリカから強い影響を受けました。僕が1987年に初めて日本に留学しに来た時は、大学で政治学を教えていた先生たちは、だいたいアメリカで学んだできた方々でした。アメリカの理論を適用する事例として、日本を取り上げるように指導されることが多かったです。僕が1回目の留学を終えたところ、日本独自の政治学が強調され始めたような気がします。それは、日本の現在の政治を基盤にして、日本の歴史の文脈の中で、日本人なりの方法で研究するという政治学だと思います。日本の政治学は現在、かなり高いレベルに達していると思いますが、今でも進行中ですね。
Q.中国の政治学においても似ているような要素は?
僕の先生の世代までは、中国の政治学はマルクス主義が独占していましたが、ポスト冷戦期への移行とともに、欧米や日本の理論も積極的に取り入れてきました。ただ、中国の社会、経済と政治は非常に複雑な構成と性格を持っているので、既存の理論では捉えにくい面がたくさんあります。そういう意味では、中国は日本と同様に、あるいは、日本以上に、独自の政治学を必要としています。
その土地で生きる者でしか分からない皮膚感覚とでも言いましょうか。中国の独特の事情は、外国の研究者にはどうも理解しがたいものが多いと思います。そこで、中国の政治学者たちが自分の言葉で進める政治学が必要です。「自分の言葉で」というのは、外国の理論を中国語に翻訳するだけではなく、中国独自の概念、理論と方法論を開発、整理することを意味します。
その一方で、外から見てわかることもある。ただ自分の国で暮らしているだけでは、比較もできないので、結局自分の国がよくわからない。僕の留学の経験から言うと、外国に行って勉強して、まず視野を広げて、いろんな意味で示唆を受けました。今、僕は自分の教えている学生にも、いっぺん外国に出て、そこから中国をより立体的に、複眼的な視野で見なさい、と話しています。
Q.中国では安倍政権の印象はどのようなものですか?
安倍首相は就任後の最初の外遊先をアメリカではなく、中国と韓国にしました。また、在任中の靖国参拝の有無を曖昧にしています。それは外交において柔軟な姿勢を示してくれた、というふうに中国側は受け取っていると思います。しかし、全体から見ると、安倍政権は政策上、保守的であると、そして自民党の中でも右寄りの方だということには変わりはないです。特に、「戦後レジームからの脱却」と、憲法改正に拍車をかけていることに対して、警戒を感じているのも事実です。
もう一つは、安倍首相自身の政治理念はいったい何であろうか?ということが曖昧だと感じます。「美しい日本」というのは一体どういう意味でしょうか?非常に曖昧な言葉で語られていますか、実際に、日本が今直面している、格差や福祉制度などの問題をどのように解決するか、ということについては、具体策を示していないように思います。
政治学者の立場から言うと、政治のリーダーというのは、巧みな話術を操って国民の拍手を狙うのではなく、はっきりしたビジョンを持って、国民を説得し、いい方向へと導くという責任を持っているわけです。そういう意味では、安倍首相は強いリーダーシップを発揮するタイプではないかもしれません。
どういう政治理念を基礎に、21世紀の日本をどの方向に導いていくか?それは安倍首相だけではなく、自民党政権が今、国民に一番問われている問題だと思います。
Q.中国の選挙の現状と可能性は?
中国の選挙はまだまだです。現在、地方の村レベルでは、村民たちの投票で村長と村民委員会が直接選ばれるように、直接選挙が行われています。村とは、家庭に次いで、中国の一番末端の生活単位でありますが、政権・政府組織ではありません。そういう意味では、村における選挙は、生活共同体の選挙であり、政治選挙ではないのです。選挙が村レベルを突破して、政権・地方行政の末端である「郷・鎮級」の地方になると、本当の政治選挙になりますが、それは現在まだ実験中で、普及していません。
それでも、村民たちは非常に積極的に選挙に行きます。なぜなら、農業資材の調達から、村所有地のリースまで、村の経済のことに対して、村長が大きな権力を持っているからです。この選挙には共産党員でなくても立候補・当選することができます。そのため、党の村支部と選挙による村民委員会との関係に問題が生じることもしばしばありますが、中国の独特の事情を踏まえて、折り合いをしながら、村レベルの直接選挙は早いスピードで広がっています。こうした村の選挙は、中国のこれからの政治選挙の予備校であり、本当の「草の根」の民主政治だと思います。
Q.今回の参院選の注目点は?
何と言っても、今回の参院選は安倍政権に対する「信任投票」ですね。政権発足後初の本格的な国政選挙となったこの参院選では、政策、路線、政権担当能力が問われます。
そして、マスコミの報道を見ますと、自民vs.民主の構図が注目されている印象です。日本の政治は「2大政党制」になりつつあると言われていますが、僕は逆に、そうなったら困ると思います。なぜなら、日本には、2大政党制では代表しきれない、様々な階層がいます。それぞれの階層を代表する政党がいて、それぞれの利益を代弁するので、社会のバランスがある程度、民主政治という手段で守られているのではないか。これらの政党が消えてしまったり、弱体化してしまったりすれば、ほかの階層の声が届けにくくなり、政治のバランスが取れなくなるのです。
多様な階層の多様なニーズと考え、特に、少数の意見をどうやって吸い上げていくのか、アメリカのような2大政党制になると、それは大変難しくなります。日本の1つの特徴は、ある程度の安定した組織と支持層を持つ政党が4〜5つも同時に存在することです。政治のバランスを維持するためにも、現在の多党制の方がいいのではないか、と僕は思います。
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