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http://www.magazine9.jp/karin/070725/070725.php
あまみや・かりん北海道生まれ。愛国パンクバンド「維新赤誠塾」ボーカルなどを経て作家に。自伝『生き地獄天国』(太田出版)のほか、『悪の枢軸を尋ねて』(幻冬舎)、『EXIT』(新潮社)、『すごい生き方』(サンクチュアリ出版)、『バンギャル ア ゴーゴー』(講談社)、『生きさせろ!〜難民化する若者たち〜』(太田出版)など、著書多数。現在は新自由主義の中、生活も職も心も不安定さに晒される人々(プレカリアート)の問題に取り組み、取材、執筆、運動中。非正規雇用を考えるアソシエーション「PAFF」会員、フリーター全般労働組合賛助会員、フリーター問題を考えるNPO「POSSE」会員、心身障害者パフォーマンス集団「こわれ者の祭典」名誉会長、ニート・ひきこもり・不登校のための「小説アカデミー」顧問。「週刊金曜日」「BIG ISSUE」「群像」にてコラム連載。雨宮処凛公式サイト
7月22日、六本木ヒルズ前で一方的に折口と「待ち合わせ」した。グッドウィルユニオン主催の「ピンはねと不安定雇用に抗議する緊急行動」、その名も「折口ちょっとこい!」に参加してきたのだ。
当日の六本木ヒルズ前には「黙っていたら生きられない」というスローガンがバルーンの下にはためき、「折口ちょっと来い!」という横断幕が翻る。グッドウィルで働く人や派遣ユニオン、グッドウィルユニオンの面々、「もやい」の湯浅誠さん、ついでに私などが次々と発言。集まった100人ほどで六本木ヒルズに向かって、「グッドウィルはデータ装備費を返せ!」「ピンハネをやめろ!」「生活できる仕事をよこせ!」と叫んだのだった。
途中、選挙運動中の社民党カーが現れ、福島みずほさん、松浦ひとみさん、上原ひろ子さん、そして斉藤貴男さんと佐高信さんが駆け付けて発言してくれた。「折口ちょっとこい!」と呼びかけたら折口は来なくて社民党が来る、というなんとも不思議な展開となったのだが、休日の六本木ヒルズで老若男女が入り乱れて折口にいちゃもんをつける、という行動に打って出たことはそれだけで意味があるはずだ。
さて、その前日はまたまた大阪で「なかまユニオン」に呼ばれて講演をしてきた。その前の日は、東京で「遭難フリーター」の完成試写会。23歳のフリーターが自らの派遣労働者の日常をドキュメンタリーとしてまとめた作品だ。主人公でもあり、監督でもあるぶっちは、05年の郵政選挙の時、思わず小泉を支持したという過去も持っている。いわゆる「典型的な」パターンかもしれない。
あの時、「不安定な若者」が小泉を支持したことへのバッシングが巷に溢れた。が、参院選を前にして、思うのだ。そのバッシングは「馬鹿で無知で貧乏な若者は投票なんかするな」という強烈なメッセージとして当事者の胸に響いたのではないか。彼は彼なりに考えた果てに小泉を支持した。それを「馬鹿」の一言で切り捨てるような人達はあまりにも多い。その果てに選挙が近くなったら「投票に行きましょう」なんて言われても、なんだかなーと思うのではないだろうか。だって彼らは、そんな言葉を間に受けて、真摯な気持ちで投票に行った挙げ句、バッシングされたのだから。この間の若者バッシングがどういった結果をもたらすか、それは当日まで闇の中だ。
この間、ニュース23の「わたしの多事争論」に出演した。都内のネットカフェで、ジャスト一分間、フリップに「生きさせろ!」と書いて語った。最後に「国民の命を粗末にしない政治を」と訴えた。よく自殺なんかに関して「命を粗末にするな」なんて言われるが、命を粗末にしてるのは明らかに今の政治ではないのか? 北九州の餓死なんか際たるケースだ。それだけではない。年間自殺者3万人強のうち、生活苦原因の自殺は年間8000人ほど。OECD調査では日本の貧困率は先進国第2位。日本の貧困者は1800万人。だけど生活保護受給世帯は100万世帯。受けるべき人が全然受けてない。だいたい働いても食べていけないワーキングプアが存在すること自体が政治の大失敗ではないか。フルタイムで働いても生活できないなんて、最悪の国からの裏切りだと思うのだが、それでも最低賃金を上げるのが嫌らしい。やっぱり「貧乏人は死ね」ってことか?
湯浅誠氏の「貧困襲来」(山吹書店)によると、04年に自己破産した20万人の4人に1人が貧困が原因でサラ金に手を出した人たちだったという。また06年の調査結果では、自己破産した人の4割以上の月収が生活保護基準を下回っていた。だらしないとかいう話ではなく、貧困が原因で多重債務に陥ってしまうという現実。中西新太郎氏の「〈生きにくさ〉の根はどこにあるのか 格差社会と若者のいま」(NPO前夜)には、経団連が「活力と魅力あふれる日本をめざして」という文書で、尊厳死制度を2010年までに創設したがっていることが書かれている。中西氏は書く。「保険医療制度でカバーできる死に方と、お金がかかる死に方とを選択させる。お金がなければ選択できない、どうぞ尊厳死を選んでくださいという提案なのでしょう」。安倍が言う「美しい国」や、経団連の「活力と魅力あふれる日本」には、生まれながらの特権階級しか存在しない。存在を許されない。
ああ、なんかだんだん腹立ってきた。そんな国で若者が「生きづらい」と感じるのは当然ではないか。今の政治は、ぶっちゃけると「市場競争で勝ち抜く能力と意欲がない奴は今すぐ国に迷惑かけずに死んでくれ」と言ってるだけだ。そこで動員される言葉が「自己責任」。こうなったら、貧乏人、役立たず、フリーター、ニート、ひきこもり、メンヘラーが堂々とのさばって生きる、それだけで充分に闘争だ。
はっきり言って私自身も政治に何か「期待」なんてしていない。今さらできない。だけど、異議申し立てとして、今の政治をブチのめすために、投票という抵抗形態も使おうと思っている。特権階級をのさばらせておいたらロクなことにならない、ということをここ数年、あまりにも見過ぎたからだ。
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