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http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007072390071404.html
「安保の現場」イラクと北朝鮮<上>
米兵中心に1万人空輸、実態隠す政府
2007年7月23日 07時14分
航空自衛隊の輸送機が昨年7月31日、イラクのバグダッド空港に乗り入れて間もなく1年。輸送した多国籍軍兵士はほとんどが米兵で、今年6月までに1万人を突破していたことが分かった。国連関係者の約10倍に上り「人道復興支援が中心」とする政府の説明と食い違う。派遣隊員らは「現実は米軍支援。それが日本防衛につながると信じ、命を懸けている。なぜ隠すのか」と説明責任を果たさない政府に不信感を抱く。イラクも拉致も「年金」にかすむ参院選。国民に知らされず、問われもしないまま、遠くイラクの地で「日米一体化」が独り歩きを始めている。
「米兵を運んでいることは、国民に説明できないほどやましいことなのか」。派遣隊員の1人が悔しそうにつぶやいた。
小牧基地(愛知県)から派遣されているC130輸送機は、クウェートを拠点にバグダッドなどイラクに週4、5回運航。国連用は北部アルビルまで飛ぶ週1便で、その便にも経由地のバグダッドで米兵が乗降する。
貨物室が米兵で“満席”の60人に上る時も。「米兵のタクシー」(隊員)になっているのが実態だ。
イラク特措法に基づく基本計画は、「人道復興支援が中心」と明記。米軍の後方支援が主任務となっている現状は、基本計画を逸脱している可能性が高い。それでも政府は「関係国が望んでいない」「隊員に危険が及ぶ」と、兵員輸送の実数公表を拒み続けている。
4月下旬。安倍晋三首相は国会で、「多国籍軍はインフラ整備など復興支援の活動にも取り組んでいる」と答弁。「人道復興支援」を強調した。
空自関係者は「(輸送する)米兵がイラクで何をしているかは正直、分からない。(任務は)聞かないのが現場の常識であり、暗黙のルールだ」と言い切る。
7月に入り、開戦以来の米兵の死者数は3600人を突破。死が日常化している戦場で「戦闘地域か非戦闘地域か」「戦闘員か非戦闘員か」の問いかけ自体が、現実を無視した「ナンセンスな議論だ」という。政府見解で「非戦闘地域」となっているバグダッド空港も、実態は戦場に近い。
隊員の耳にも日々、確認情報が届く。「離陸前の待機中、機体のすぐ上を複数の迫撃砲弾が飛んだ」「飛行してきたばかりのルートを着陸直後、ミサイルが通過した」。いずれも数分の差で被弾していた可能性が高い。
中堅の隊員は「飛ぶ日には必ず自室に遺書を置いていく隊員もいる」と明かす。
「日の丸を背負っている以上、心の支えは国民の理解と支持しかない。だからこそ、ありのままを知ってほしい」
政府の説明回避が、隊員たちの「覚悟」に暗い影を落としている。
【イラク特措法】 イラクに自衛隊を派遣する根拠法。2003年7月、時限立法(4年間)として成立。「非戦闘地域」での人道復興支援活動と、治安維持にあたる米軍などへの後方支援を行う「安全確保支援活動」がある。2年間の延長を決めたさきの国会で、安倍首相は空輸150回(昨年7月末−3月末)の内訳を多国籍軍125回、国連25回と初めて公表。輸送人数は国連分(706人)のみ明らかにした。
(東京新聞)
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