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「経済コラムマガジン07/7/23(491号)
・参議員選の注目点
・ダボス族を富ませる自民党の「構造改革」
今回の参議院選挙の最大の関心事は、何と言っても与党の獲得議席数である。はたして与党が非改選議席数と合わせて過半数を確保できるのかが注目点である。新聞や週刊誌は与党の過半数割れを予想している。しかし仮に過半数を割ると言っても程度が問題である。
わずかに過半数に届かない場合には、自民党は無所属議員などをかき集め、なんとか過半数を確保するであろう。また場合によっては、国民新党がキャスティングボードを握ることも考えられる。しかし大きく過半数を割った場合が問題である。この時は、政界にどのような波乱が生じるのか筆者にも予測が困難である。
このように与党の獲得議席数というものが、一番の関心事ということに誰も異論はない。しかし筆者にはこの他にいくつか注目していることがある。注目点の一つは自民党の昔からの支持層がどうなるかである。自民党の支持組織と支持層は、中選挙区制のもとで出来上がったものである。しかし小選挙区制に変わりこれが崩壊し始めた。壊れ始めたというより自民党自らが壊したという面がある。
象徴的なのが先の郵政改革選挙であった。自民党は自らの支持組織である特定郵便局を敵に回して闘った。そこには公明党票と浮動票をかき集めれば、選挙に勝てるという読みがあった。たしかにPR会社作成のデマが不思議なほど効果を生み、自民党は雪崩れ的大勝利をおさめた。比例区では自民党は、04年の参議院選挙で1,680万票であったが、05年の郵政改革選挙では2,600万票と何と900万票以上獲得票を増やした。
しかしその裏で自民党は、昔からの固有の支持者(郵政票など)を確実に失っている。固有の支持層の中でいまだに自民党に投票しているのは、「中選挙区時代からの惰性」「自民党の候補者を支持しているわけではないが、民主党よりまし」「自民党が与党だから自分に何か経済的メリットがあるのではないか」といった理由で投票している人々だけである。
まず中選挙区から小選挙区に変わって、投票に行かない人自体が増えている。また「人」より「党」と言っても、かろうじて「人」は信用できるかもしれないが、「党」は信用できないという人が多いはずである。だいたい選挙用の想定問答集の作成をPR会社に丸投げしているような政党(http://www.asyura2.com/07/senkyo38/msg/546.html参照)を信用できるはずがない。
そして先の郵政改革選挙で、反対派を追出したことにショックを受けた支持者も多かったはずである。特に反対派議員には昔からの自民党の生え抜き派が多かった。それを他党からの転向組や自民党の異物である小泉首相が中心になって追出したのである。参議院選が近づき、これはまずいと反対派の一部を復党させたが、どれだけ効果があるのか疑問である。
注目点の二つ目は公明党の動きである。今回の選挙に限ってなのか、一般の運動員の動きが鈍いような気がする。筆者の知っている熱心な運動員は、春の統一地方選であれだけ活発に活動していたのに、参議院選ではほとんど動いていない。この人物だけが例外なのかもしれないが、公明党に異変が起っていることが考えられる。
前回04年の参議員選では、小泉自民党が大敗する予想が出たため、いくつかの一人区で一週間前から公明党のテコ入れが行われた。この結果自民党は破れたが大敗までは行かなかった。今回の選挙でも自民党の大敗が予想されている。はたして今回も公明党のテコ入れがあるのか注目される。
しかし構造改革派が席巻している自民党と公明党が連立を組んでいること自体に無理がある。今日、自民党が向いている相手は、例えるならダボス会議に集まってくるような人々である。構造改革の名の元に、世界の貿易や資本・資金の移動の自由化を推し進めている人々である。つまり経済のグローバル化でメリットを受ける経済人である。構造改革で国家や地域が荒れても、ガードマンを雇って身辺を警護するかボストンバックに金を詰めて安全な国に逃げて行くのがこのダボス族である。
つまり与党が目指している方向は公明党の支持者と縁もゆかりもない。小泉政権の5年間でこれを実感したはずである。自民党との連立にメリットがあるとしたなら、政権与党にいること自体で何らかの利益を受けることである。しかしこれも一般の公明党の運動員には縁がない。筆者は、今回の参議院選の結果をきっかけに公明党と自民党の関係が変わるような気がする。
・国民新党への期待
自民党がここまで落ちぶれた結果、保守層の投票する相手がなくなった。したがって保守層は、投票を棄権するか、あるいは一部民主党に投票することになる。しかしこの人々が民主党を支持しているわけではなく、反自民としての投票行動である。
これに対して、先の郵政改革選挙で自民党が大勝したから、今回は自民党に「お灸をすえる」という解説を行っているマスコミ人が多い。しかしこれは単なるお灸ではない。再び自民党には戻らない票である。と言うのは自民党の若手の政治家ほど構造改革に毒されており、ますます自民党が悪くなることがはっきりしているからである。今後、保守層の自民党離れが加速することが予想される。
実際、昔からの支持者の自民党離れはどんどん進んでいる。自民党が大勝した先の郵政改革選挙でも、自民党を支持していた保守層の投票は着実に減っていたものと見る。B層の大量投票でそれが見えにくくなっていただけである。
今日の日本の不幸は、自民党の革新政党化によって保守政党がなくなったことである。自民党が民主党になってしまったのである。構造改革は本来民主党の党是である。そして「公務員たたき」と「構造改革」によって都会の浮動票を得ようとしている今日の自民党に保守層は愛想が尽きている。
この保守層の受け皿が必要である。本来なら国民新党がその立場に立つことになる。しかし小選挙区制の元では、自民党と民主党の激しい闘いの間に埋没してしまう。おそらく苦戦すると思われる。しかし今後の保守政党の行末を占う上では、国民新党の活躍が注目される。これが三番目の注目点である。筆者は、国民新党に限らず、保守の新党の登場を期待している。
しかし国民新党の支持率は、どのマスコミの調査を見ても、0.1%とか0.2%である。得票数で10万票前後ということになる。比例区での当選には100万票必要であり、これでは国民新党の比例区当選者はゼロということになる。ともあれ先の衆議院選では国民新党は比例区で118万票を獲得した。もっともこの時には関東や近畿といった大都市圏や北海道・四国に立候補者を立てなかった。
亀井静香氏は今回は比例で500万票は行けるとテレビで発言している。筆者には何とも言えない状況であるが、国民新党には是非とも頑張ってもらいたい。国民新党の改選議席数が2だから、地方区と併せて最低2以上の議席を得てほしい。綿貫党首は6議席の確保を目指すと言っておられる。たしかに国民新党が保守層の受け皿なれるなら可能な数字である。
今回は、自民党以外の保守政党が存在していけるかという可能性を試す選挙でもある。自民党が実質的にもはや保守政党と呼べなくなっている以上、新たな保守の新党が必要である。国民新党がそれになれるか注目される。
来週は参議院選の結果を取上げたいので、本誌発行は7月3日の火曜日あたりになる。
追記:麻生外相の「アルツハイマー発言」のもう一つの問題点
麻生外相のアルツハイマー発言が問題になった。中国で日本の米が高級食材として一俵(60kg)78,000円で売られているという話である。麻生氏は日本では一俵(60kg)16,000円であり、どちらが高いかアルツハイマーでも分るとやったのである。麻生氏は、今回政府主導で中国に日本米の輸出が決まり(自殺した松岡前農相が主導)、日本米が非常に高い値段で売れることを誇らしく語ったのである。要するに日本の農業は補助金をあてにしなくとも、輸出に活路を求めれば、利益が得られると話したかったのであろう。構造改革派の持ちネタの一つである。
しかし麻生氏の話自体がおかしいのである。デマそのものである。まず日本から輸出された初回の数量は15tくらいのはずである。しかし今後数量が伸びるとしても、とても50万t、100万tになるはずがない。また仮に数量が伸びれば、売り値はどんどん下がるはずである。
この話で根本的におかしいのは、中国の例は最終の消費者への販売価格に対して、日本の例が生産者価格と思われることである。数年前、筆者は農家の農協への引渡し価格が米17,000円、麦8,000円と聞いたことがある。また銘柄米を農協を通さず、業者に直接売る、いわゆる庭先取引の場合には24,000円から25,000円くらいと聞いている。
麻生外相は、一俵(60kg)16,000円を生産者価格なのか末端の販売価格なのかはっきり言っていないようだ。しかし16,000円の米をよくスーバーで売られている5kgの袋売りに換算すると1,333円になる。しかしまぜものがあるどんなに安い米でもここまでは安くはない(普通の米は2,000円から2,500円、銘柄米なら3,000円以上)。おそらく麻生氏は中国の例では末端の消費者価格、日本の例は生産者価格を用いたのであろう。しかしこのような比較は全く意味がない。誰がアルツハイマーなのか。また数量が極わずかで流通コストがかかる場合には、末端の価格が相当高くなければペイしないはずだ。日本の生産農家から中国が78,000円で買ってくれると言う話では全くない。
麻生外相の講演は富山で行われたので、会場には農業関係者もいたはずである。農業関係者なら、麻生氏の言っていることのデタラメさにすぐ気がついたと思う。麻生氏は経済通と言われているが実にあやしい。自民党内ではこのような「ヨタ話」が蔓延しているようだ。筆者も小泉前首相が選挙の応援演説で、「中国で日本のりんごが一個2,000円で売られている」という話を聞いたことがある。
このようなバカ話を自民党の政治家が自慢げにいたる所でやっているので、農業関係者の自民党離れが加速するのである。北海道の長イモが台湾ですごい人気になって、かなり輸出され、生産農家がたいへん儲かったという話を何年か前に聞いたことがある。しかし最近、長イモが街でものすごく安く大量に売られているのをよく見かける。北海道の長イモの例を出し、日本の農業は輸出に活路を見出せと言っていた自民党の政治家も、最近長イモの話を全くしなくなった」
http://adpweb.com/eco/eco491.html
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